命日で誕生日。
6月27日は父の命日で、母の誕生日である。前にも書いたけれど、父は春に末期の胃がんだということがわかり、あっと言う間に亡くなった。最後は緩和ケアの病院に入り、ペインコントロールをしていたのでぼんやりとしていることが多くなったが、自分がこの世とあの世の境目にいる今日この時が母の誕生日の前日だということはわかっていたに違いない。
割とやけくそになることが多い人だったので、きっと末期ガンだとわかった時から、諦めに似た気持ちがあったように思うのだが、それでも母の誕生日の前日に逝くのはまずい、と思ったはずだ。性格的に「まあ、死ぬのは仕方がないが、それならどうせみんなの記憶に残ってやろう」と頑張って母の誕生日まで粘ったのである。いやもう、これは間違いない。日付が変わって暫くしてから、父は逝った。
そして、父の思惑通り、毎年6月27日になると、家族は、特に母は父の命日に自分の誕生日を祝うという忙しい1日を送る。ここしばらくはコロナの影響もあり僕とヨメが実家にいることが多いので、誕生日には小さなケーキを買ってきて祝う。祝うときに何気なくスマホで動画を撮ったり写真を撮ったりするのだが、見比べてみると1年1年、少しずつ小さくなっていく母がいる。
いつのまには、父が亡くなった歳を越えた母がいる。僕はいままで親孝行らしいことはしたことがない。向田邦子のエッセイで覚えた「身体髪膚これを父母に受くあえて毀傷せざるは孝の始めなり」という言葉を唱えながら若い頃は「許してちょうだい」と思っていたけれど、十年ほどまえに大きめの手術をしてそれも守れなかったしな。まあ、孫を2人見せることができたのがせめてもの救いかもしれないな、とも思ったりする。
それもこれも、父の画策通り、命日と誕生日が同時に来るという日が出来たことの功績かもしれないと、梅雨時になると思うのである。
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在は、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師も務める。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。
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