安倍さんが亡くなった。
元首相が銃撃されて心肺停止。そんな速報が流れてきて、しばらくの間、ぼんやりしていた。なんとなく「安倍」という文字も「銃」という文字も認識しているのだけれど、どこか外国のニュースを見ているような感覚で、「えっ!!」とか「わあ!」とかにはつながらず、手に持っていたチョコブラウニーをひとつ口に運んだくらいだ。
しばらくして、「ああ、これはなかなかの衝撃だなあ」という気持ちになってきて、いつまでも心肺停止のままの速報に「ダメなのかもなあ」と妙に冷静にテレビ画面を眺めていた。それから、昼ごはんを食べ、仕事で取材をオンラインでこなした午後3時過ぎになってから、なんだかドキドキしてきた。ひとつは、この国の膿んだような不平不満が元首相を銃撃するところまで来ているのか、ということ。もうひとつは、安倍さんも暴漢に襲われるのか、という因縁めいたもの。この二つを感じて、ドキドキとしてきたのだった。
しかし、夜になるにつれて、別のドキドキも出てきた。それは、結局、安倍さんが亡くなった後のニュースのコメンテーターたちの発言だった。いろんな発言があって、わりと呆れながら見ていたのだが、どちらにしても、これは自民党の追い風になってしまうんだろうな、ということだった。まあ、それは仕方がない。気持ちとしてはそうなるだろう。しかし、あるコメンテーターが、「安倍さんは身をもって民主主義の大切さを私たちに伝えてくれている気がします」と発言していたのには驚いた。
ただ、暴漢に襲われ、本人もそんなつもりもなく亡くなっているのに、「安倍さんは身をもって…」というのは虚言に近い暴論であり、なんなら本人を冒涜するくらいのコメントだと思うのだがいかがだろう。しかも、スタジオを司会者をはじめ出演者たちが陰鬱な表情でうなずいている様子を見た時に、僕は「もしかしたら、僕らが思っている以上に、この国はダメなんじゃないのか」と感じてしまったのだ。
いや、もうそれは、安倍さんが亡くなったことや、コメンテーターたちのバカさ加減に、こちらの気持ちが揺さぶられすぎて脳震盪を起こしているのかもしれない。でも、もしかしたら、と考えると、息が止まりそうになる。
植松さんのウェブサイトはこちらです。
植松眞人事務所
こちらは映像作品です。
植松さんへのご依頼はこちらからどうぞ→植松眞人事務所
植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。現在はコピーライターと大阪ビジュアルアーツ専門学校の講師をしています。東京と大阪を行ったり来たりする生活を楽しんでいます。
Jane
亡くなった人のことは悪く言わない、というのは美徳であり常識でしょうが、生前は支持・不支持など様々な思いを持たれた公人への世間の評価が、今は一色….というのは普通の状態なんでしょうかねえ。
uematsu Post author
なんとなくわからなくもないですが、
うーん、やっぱりおかしいですよね。
客観的な意見を排除するようなムードが、
かなり怖いですね。
りかさん
植松さん!
怖いよね!だよね!
と思わず叫んでしまうくらい
私の周りではそういう声を聞かなくて、
どちらかと言うとそっちの方が怖いくらいな気持ちでいます。
そーゆー話すると日本じゃ変人カテに入れられちゃうのが悲しいです……
そこに上手くつけ込まれてる感じがして。
これくらいにします笑。
この話題をスルーせず
記事を書いて下さって
ありがとうございました。
uematsu Post author
りかさん
安倍さんの功績もあると思うんですが、やっぱり失敗した政策もある。で、なによりも反対意見を抑え込んじゃうと言う風土を作り出した罪は、やっぱり大きいかなあ、と。だとしたら、そのあたり公平に批評していかないと気持ち悪いことになっちゃいますからね。
みんなが正直に話せないと民主主義なんて成立しませんよね