漫画を読み飛ばせ!
浦沢直樹が進行を担当しているNHKの『漫勉』(現在は『漫勉neo』という番組が好きで、毎回録画して見ている。自分が読んだことのない漫画家の回も新しい発見があって面白いし、自分が好きな漫画家の回だとなおさら面白い。どんなふうに漫画を企画して、どんなふうに漫画を描き進めていくのか。それが目の前でどんどん展開されていくのだから、面白いに決まっている。面白いんだけど、たまに辛くなる。だって、あんなに時間をかけて1枚の画を描き込んでいるのに、それがみんな読み飛ばすようにページをめくっていく。丸一日かけたり、下手すると1コマに数日かけたりすることもあるのに、僕らはそれを読み飛ばしているんだと思うと、ちょっと辛くなったりする。
でも、何回かそんなことを思った後に、ふと思い当たったことがある。それは、「ああ、映画も一緒だなあ」ということ。渾身の1カットを撮るために、何日も準備をして、撮影したものをボツにして再撮影したりしながら完成させていく。そんなふうに撮った1カットも、偶然撮れた1カットもスクリーンに流れるのは数秒から数十秒。漫画が読み飛ばされていくときの感覚と似ているのかもしれない。
というか、読み飛ばされることを考えながら、漫画家は描き込んでいるんだなあと思う。読み飛ばす速さでも、この画のクオリティなら主人公の気持ちがダイレクトに伝わるだろう、なんて思いながら描いているのかもしれない。そうか。だったらどんどん読み飛ばそう。読み飛ばすことで漫画家の魂が受け取れるような気がしてきた。
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植松眞人事務所
植松眞人(うえまつまさと): 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。現在はコピーライターと大阪ビジュアルアーツ専門学校の講師をしています。東京と大阪を行ったり来たりする生活を楽しんでいます。