症状いろいろ、辛苦(シンクー)いろいろ
これまではこうしたらいいっていうような偉そうなことを書いていたのですが、今日はゴンゴンの脳の老化の変化をお話ししたいと思います。話があっち飛びこっち飛びですみません。
「辛苦(シンクー)」とは、中国語で苦労とか、大変とかそういう意味です。
さて。
私が結婚したとき、ゴンゴンはすでに80歳を超えたご老人だったわけですが、見た目からは80とは思えないパワー&目力を感じさせる殿方でした。
結婚後、私たちはしばらく同居していたのですが、私はまあやっぱり、そういう同居とかってやっぱり無理なわけで、私たち夫婦は実家から歩いて5分のところに住んでおりました。歩いて5分なのに全く近寄らない嫁&息子(ゴンゴンの息子)。まあ、台湾的には親不孝ですよ。
しかしそれから数年後、私は同居を決意します。今から5,6年ほど前だったと思います。
ある日、ゴンゴンとポーポー(姑)の間で大げんかが勃発したらしく、当時80代後半だったゴンゴンは一人暮らしという状態になったのです。私は洗濯の担当だったので、1週間に1、2回、ゴンゴン宅を訪問しました。ほかのことは旦那の姉妹がいろいろ面倒を見てくれていました。
しかし、ある日。ゴンゴン、火を付けっ放しにしてたんですね。片手鍋でちょっとお湯を沸かそうとしてたみたいなんです。ところが、忘れて空焚き状態。鍋とかやかんを見ると、どうもこれが初めてではなさそうでした。
痛風持ちのゴンゴンは、痛くなったと思ったら、朝一で病院にGO!誰にも言わずにです。「家にいない!」と私もお義姉さんたちも大慌てです。帰って来たゴンゴンは、室内用のスリッパのまま病院に行ってました…。
大慌てはしますが、「ああ、そうだよね」という想定内の「老い」でした。テレビで見たり、実際に自分の祖父母や自分のうっかりを考えれば、想像ができました。
しかし、ある事件の後、私たち夫婦は同居を決意したのです。
ゴンゴン、健康にはとても気遣う人でしたから、自分で栄養のあるスープ(煮込み料理ともいう)を作っていました。ところが、ある日家に入ると、どうも変な匂いがする。嗅覚抜群の私は、犬並みにクンクンしながら匂いの元を辿りました。その匂いは、ゴンゴン特製の料理からでした…。
ゴンゴン、嗅覚と味覚がおかしくなってしまっていたみたいです。
これは意外でした。
傷んでしまったスープなのに、その匂いに気づかない。お義姉さんや私が何度言っても、捨てようとしない。さらに、味覚が鈍感になっていますから、塩を大量に投入している。
高血圧になっても困るので、「減塩」のお塩に入れ替えることにしました。速攻で買いに行きましたよ。でもね、そのスーパーのおばさんに忠告されました。
「減塩にしてもね、 結局、味が濃くなるまで入れちゃうんだよ。意味ないよ」
って。
ああああああ。そうなのか。
でも何もしないよりいいかもしれないと思いってやってみたものの…。
おばちゃんはさすがですよ。
その通り。
まったく効果なし。
そういうわけで、体調管理のためにも、火事を出さないためにも、同居することに決めました。
同居後は、よく見聞きする認知症の症状が現れました。
昼夜逆転、
お薬の飲み間違い、
突然のお出かけ、
泥棒騒ぎ…
実は、この段階では認知症のための通院はしていなかったんです。
ですが。
私がお義姉ちゃんたちに「病院に連れていこう」と懇願した原因になった事件が発生しました。
誤食です。
昼夜逆転したゴンゴンは、夜中にお腹が空きます。
私は、ゴンゴンが夜中でも食べられるように、リビングのテーブルにおせんべいの袋を置いていたんです。
朝起きて、私は血の気が引きました。
ゴンゴン、おせんべいを全部食べたのまではよかった。そこまではよかった。
でも、リビングの床に落ちてたのは、乾燥剤の袋。
破れてる。
しかも、その破れたところには、口をつけた後がありました。
ただ、全部食べてなかった。
しかも、透明の「シリカゲル」というようなやつじゃない。「石灰」でもない。
冷静に分析しながらも、私は大急ぎでお義姉ちゃんに電話して、状況を説明しました。ゴンゴンはその後何事もなく過ごしていたので、ことなきを得たのですが…。
そして、家族会議の結果、病院に連れて行こうと決めました。
介護って、常に目が離せない。
赤ちゃんや子供と違って、「すべてが何もわからない」という状況ではないので、
どこかに出かけることもできるし、良かれと思って何かをする。何かを疑う。お薬だって、「飲まなきゃ」とわかっているから、飲む。でも、時間を把握できていないし、飲んだかどうかも覚えてないから、もしかすると、「飲んでないと思うから、念のため」と飲んでるのかも。
知恵があるから大変なこと、いや、もっとストレートに書くと、やっかいなことが多いのではないかと思うのです。そして、行動以外で、困ったことは体が大きいことです。どんなに小柄な人であっても、大人を支えたり抱えたりするのは大変です。
そして、遠慮。
「遠慮」っていい感じの言葉ですけど、介護ではよくない結果が生まれます。相手を思いやって遠慮して体の不調を訴えない、恥ずかしいからサポートしてと頼むのを遠慮する。
結果、お掃除にしても病気にしても、大変なことが待っている。
あの、誤解を招くといけないので、書いておきますが、私はどっちのほうが大変といいたいのではないですよ。どの立場にもそれぞれの辛苦(シンクー)があるというと言いたいのです。
さて。偉そうにここからアドバイスしますよ。覚悟してください。
台湾の病院で感心したことがあります。
いい先生に巡り会えたんだと思いますが、先生は、家族に対して丁寧に説明をしてくださいました。
家族全員、先生と会って、どのように対応したらいいか、アドバイスを受けました。脳の状況から考えて、次に起こるであろう症状を教えていただいたり、お薬についても、家族と相談の上で決めてくださいました。行動が不自由だけど、感情の起伏を抑えられるお薬とか、感情のコントロールはできないけど、歩くこととかの伝達がよくなるお薬とか、そういう説明を受けました。
何度も書いちゃいますけどね、
偉い先生でも看護師でも行政でも何でも使えってことですよ。
あ、違う。
何でも相談するのがいい。
細かいかなとか、うざいかもなんて遠慮はしないで、相談したほうがいい。心も晴れます。何か解決策が見えてきます。
そして、忘れずに毒を吐く。定期的に吐こう。
気の置けない友達と、遠慮せずに外で会って、毒を吐き出し、喫茶店かレストランのトイレの水に流してしまうのを忘れずに。
【プロフィール】
azumi 。長崎県出身、台北在住。アラフィフ真っ只中。職業:日本語教師として奮闘中。主婦の仕事は洗濯くらい?猫3匹+猫天使、夫。義母とはもちろん別居。現地化を超え、なぜか韓国人に間違われること多し(太ったときによく起こる現象)。座右の銘は「叩けよ、さらば開かれん」