「人生いろいろ」By徳江~映画「あん」より
突然ですが、皆さんは「あん」という映画をご存じでしょうか?一昨年公開された河瀨直美監督の作品です。ストーリーはこんな感じ。
ある日の散歩の途中で徳江は悲しい目をした一人の男を見かける。彼はどら焼き屋「どら春」の雇われ店長の千太郎だった。その日から店の前を通るたびに気に留めていた徳江の目に求人の張り紙が飛び込んでくる。おずおずと声をかけアルバイトをしたいと申し出る。徳江には50年以上もあんを作ってきたという経験があったのだ。そのあんが評判となり、「どら春」には連日行列ができるようになる。が、その行列も長くは続かなかった。徳江が暮らす場所や病のことが噂として広まってしまったためだった。…
このコーナーでも度々書かせていただいているシネマ・チュプキ・タバタで、今月この「あん」が上映されています。
「徳江さんは、ハンセン病という病を経験した人として描かれ自由を奪われた時間を長く過ごしてきたけれど心は自由を失ってはいなかった。逆に外に生きているはずの人々の方が、中学生たちでさえも何かに縛られて生きている。そういう対比が描かれた作品だったと思う。」
これは徳江役を演じられた樹木希林さんから昨日伺ったお話のひとつです。こんなお話を至近距離で伺うという幸運。僅か20席足らずの小さなシアターに樹木さんがいらしてくださったのです!30分弱の短い時間でしたが、お人柄の現れる素敵なトークに、会場は笑いに包まれたり、うなづきあったり…。
撮影があまりにもさりげなく始まるので千太郎役の永瀬正敏さんと「始まってるんですか?」「始まってるみたいよ」と確認しあったほどとか、あるシーンを取り終えたとき河瀬監督が「この後のシーンはカット」と突然決断されたことなど、撮影の裏話も聞かせていただいた一方、「私だけでもゴミのようなものでしょ。だから家にいろいろとたまらないように終わった台本は捨てちゃう。衣装やトロフィーなんかも差し上げちゃうの」となんとも潔いお話も聞かせていただきました。
そのトークがあっという間に終盤を迎えるころ、私に花束贈呈という大役が回ってきました。一番前の席に座っていた私は数歩進むともう樹木さんの目の前。花束をお渡しすると、さっと手を差し伸べて力強い握手をしてくださいました。こんな機会をいただけるなんて夢のような不思議な素敵すぎるひと時でした。
みなさんにも素敵をおすそ分けしたくて今月の話題として書かせていただきました。機会があったら「あん」もご覧になってみてください。涙と笑い、そしてきっと、どら焼きがたまらなく食べたくなること間違いなしですよ。
おつ
偶然、今日(1月31日)NHKのBSプレミアム(かな?)でこの映画を見ました。
今日より、日が経ってからの方が心の中での波紋が広がっていく映画だと思う。
映像が素敵だった。美しすぎる全生園の森、季節の移ろいを表現した桜、あずきの艶やかな色、どれもいい。
KEIKO
おつ様
「あん」をご覧になったのですね。本当にこの作品はいつまでも心に残る作品の一つです。私は4回も観てしまいましたが、その度にいろいろな思いが胸に迫って涙を流しました。
いろいろと素敵なシーンはありますが、ラストの暗転した中で聞こえてくる「どら焼きください。10個ください」という子どもの声が最初に好きになったところでした。