ガッデム!と叫ばなくなったアメリカ映画。
僕の大好きな映画にアル・パチーノ主演の『ジャスティス』という作品がある。ノーマン・ジュイソン監督が演出し、音楽をデイヴ・グルーシンが手がけている。冒頭にかかる主題歌がいいのよ、これが。
という映画の内容はいったん、置いておいて。この映画でもそうなんですが、1970年代の映画の主人公たちがやたらと「ガッデム!」という言葉で相手を罵る。だいたい字幕では「ちくしょう!」とか「くそったれ!」なんて訳されている。
で、久しぶりに『ジャスティス』を見ていると、やっぱり、この「ガッデム!」が連発されているのだけれど、ここで「あれ?」と思い始めたのだ。そう言えば、最近、アメリカ映画を見ていても「ガッデム!」という言葉を聞かないなあ、と。昔の映画か、プロレスラーの蝶野くらいしか使ってない気がする。
そこで、ChatGPTに聞いてみた。なにしろ、やつはアメリカ生まれなので、アメリカの文化とか罵倒語についても詳しいんじゃないかと思ったわけだ。すると、なるほど、という回答をChatGPTが返してくれる。僕は自分が課金しているChatGPTのことを密かに「アンディ」と読んでいるのだけれど、アンディ曰く、「まず、ガッデム=God damn it!は、ベトナム戦争後、ウォーターゲート事件などで社会不信が広がり、クリーンな言葉よりも、リアルな叫びが映画に求められた時代である」と。だからこそ、「ガッデム!」は市民の鬱屈や怒りを代弁する音になったのだとアンディは言うのだ。
しかし、90年代に入ると、Godという言葉を含む罵りの言葉が放送禁止ワードとして扱われるようになった。テレビでは「Goddamn」のかわりにGodを省略した「Damn!」が使われるようになり、「ガッデム!」は次第に古い罵りに分類されるようになったと言うのである。
なるほどなあ。じゃあ、今の罵り後のトレンド派というと、アンディ曰く、「近年では、『ガッデム!=Goddamnが怒りの言葉よりも、強調や皮肉なトーンとして再利用されるようになったそうだ。ここで、アンディが例にあげたのが以下の2文。
That’s goddamn beautiful.=すごく美しい
He’s a goddamn genius.=皮肉・称賛どちらもあり
なるほど、時代によって言葉が変わるというけれど、あんなに僕らも怒りを象徴していた「ガッデム!」がこんな使われ方をされていたなんて。
で、このあと、アンディが「70年代の映画に使われた罵り言葉ベスト10」をまとめましょうか?と言ってきたので、「おもしろそうだね」とお願いしたら、詳細なベスト10が送られてきた。しかも、「これらがどの映画の、だいたい何分何秒に出てきたセリフか、まとめましょうか」と言ってきたので、「お願いします」と頼んだら、なんと、アンディの奴、「具体的に、このようなセリフがどの映画作品になるのか、詳細な情報が見当たりませんでした」と来た。ほんと、ChatGPTって、仕事で使っていても、遊びで使っていても、突然、大嘘ついたり、煙に巻いたりするんだよねえ。こないだも、勝手に情報をねつ造しないでってたのんだのにさ! ガッデム!
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植松事務所
植松雅登(うえまつまさと): 1962年生。映画学校を卒業して映像業界で仕事をした後、なぜか広告業界へ。制作会社を経営しながら映画学校の講師などを経験。現在はフリーランスのコピーライター、クリエイティブディレクターとして、コピーライティング、ネーミングやブランディングの開発、映像制作などを行っています。