『兄を持ち運べるサイズに』した後に考えること。
みなさん、明けましておめでとうございます。
新年明けてからすでに3本ほど映画を見たのです。その中で、なんとなく新年っぽい作品はというと『兄を持ち運べるサイズに』かな。というわけで、2026年の初回は、この映画について少し書きたい。
中野量太監督は『湯を沸かすほどの熱い愛』や『長いお別れ』などで、手堅い作品を作ってきた監督。そんな中野監督の新作が『兄を持ち運べるサイズに』だ。エッセイなどを書いている作家の理子(柴咲コウ)のもとに「お兄さんが亡くなりました」という連絡が警察から入る。自分の家族を持ち、兄(オダギリジョー)とは疎遠だった理子だが、放っておくわけにはいかない。
兄の元妻(満島ひかり)との間には二人の子どもがいるのだけれど、高校生になる長女は元妻と暮らし、小学生の長男は亡くなった兄と暮らしていた。兄の遺体を見つけたのも長男だ。理子と元妻のミッションは、兄が住んでいた宮城県多賀城市に4日間滞在し、まず、兄を持ち運べるサイズにしてしまうこと。そして、長男を元妻が引き取れるように話し合うこと。
理子は子どもの頃から、母に偏愛されてきた兄に嫉妬している。「お兄ちゃんがいなくなればいいのに」と思ったこともある。しかし、自分の仕事を持ち、家族を持つことで、そんな呪縛から逃れてきたという過去がある。だから、理子としては、兄と向き合うことが、家族と向き合うことになってしまう。そこがつらい。緊張する。そして、そんな理子の気持ちを逆なでするように、兄のオダギリジョーが幻想として現れ、理子を翻弄する。
この映画、兄役のオダギリジョーが本当にいい。嘘つきでいい加減なんだけど、根っからの悪じゃないからタチが悪い。そんな兄を憎んで、理子は連絡を絶っていたのだし、元嫁も離婚を決意したのだ。それなのに、兄と息子の暮らしを知れば知るほどいい加減さは消えないのだけれど、可愛げが、増してくる。憎みきれない。しかも、作家で想像力豊かな理子には、兄があちらこちらに現れて、まるで鼻先で笑うように話しかけてくる。
映画としては、ファンタジー的な部分も含めて、本当によくできている。新しい発見に満ちているわけではないけれど、とてもよくできているし、観客をしらけさせたりはしない。
個人的に、この映画のいちばん面白い部分は、妹である柴咲コウと、元妻である満島ひかりでは、兄の見方が違うところだ。家族としての愛と、男女の愛はやっぱり違う。そのことをガツンと理子に伝えてくる満島ひかりが本当にいい。僕の映画の師匠は「いま、シングルマザーをやらせたら、満島ひかりの右に出るやつはいない」と豪語していたが、そうだと思う。色気と強気と暮らしの疲れを同時に出せる役者なんてそうはいない。そう、兄を持ち運べるサイズにした後、残されたものが考えなければならないことは、これからの暮らしなのだ。
ということで、正月早々、家族愛と、満島ひかりのシングルマザーっぷりを見るなら、この映画ですよ。というお勧めでした。本年もどうぞよろしくお願いします。
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植松事務所
植松眞人(うえまつまさと): 1962年生。映画学校を卒業して映像業界で仕事をした後、なぜか広告業界へ。制作会社を経営しながら映画学校の講師などを経験。現在はフリーランスのコピーライター、クリエイティブディレクターとして、コピーライティング、ネーミングやブランディングの開発、映像制作などを行っています。

















































































