Posted on 2026年3月4日 by uematsu
マクドナルドで叫ぶ女子中学生。
あまり好きではないのに、僕はときどきマクドへ行く。マクドと言うのはマクドナルドのことだ。僕の地元の兵庫県伊丹市のマクドだ。阪急電車の伊丹駅がある駅ビル『リータ』の中にあるマクド。ここにしかいかない。
なぜ、ここにしか行かないのかというと、このマクド、座席のある空間がだだっ広い。まるで、体育館の中に適当にテーブルを並べたかのような具合で、座席と座席の間が広く、良い具合に雑然としている。その落ち着かない雰囲気のなかに身を置きたくなる時がたまにあるのだ。
で、今日がそんな気分の日なのであった。
適度にだだっ広く、適度に雑然とした座席は、適度に客が入っていた。そんな中に適度ではない2人組の客がいた。おそらく中学生らしい女子の2人組。こやつらが、スマホを見ながらキャーキャー叫んでいる。もう、ボリュームが壊れたのかと疑いたくなるほどの大声である。
隣の席の中学生が、話が弾んで声が大きくなりすぎているくらいなら、「ちょっと声が」と注意する人も出てくる気がするが、さすがに声が大きすぎて、「こいつらはちょっと狂っている」という雰囲気なので、みんな、チラチラ見てはいるが、決して注意したりはしない。僕もいつものようにノイズキャンセリングのヘッドフォンをして、やつらには背を向けている。
ところが、おそらく八十代とおぼしき紳士が立ち上がり、この女子中学生2人組に近づいたのだ。そして、とても穏やかな声で「他にもたくさんの人がいるから、もう少し静かにしてくれますか」と頼んだ。女子中学生たちは、不意を突かれて一瞬黙った。
しかし、そんな注意を聞くようなタマではなかった。去って行く老紳士に、「うるせえよ」と悪態を吐いたのである。老紳士は、言うだけ言うと、相手が何を言おうが無視した。無視したまま、テーブルに残した奥さんと一緒に店を去ろうとしたのだ。
このまま、この一件は終わると思われたその瞬間、事態は一変する。第三の登場人物が現れたのだ。三十代くらいの男が、女子中学生に「なんじゃお前ら。静かにせえ言うとんじゃ!」と叫んだのである。
しかし、この時の「言うとんじゃ!」はちょっとおかしい。「静かに」と言ったのは男ではない。明らかに、老紳士の行動に乗じた発言である。男は老紳士の行動に賛同し、そして、老紳士が悪態を吐かれたことに怒っているのだった。
そこで、僕は老紳士をもう一度見た。すると、老紳士はとても嫌そうな顔をしていた。女子中学生に向けてではなく、叫んだ男に対して「お前は関係ない」というような表情を向けていたのだ。
おそらく、老紳士はことを大きくしたくなかったのだと思う。自分が静かに注意して、それで納まればいいな、と思った。そして、それで受け入れられなければ、もうそれで仕方がない、と思っていたのだ。それなのに、見知らぬ男が、まるで自分の味方のように下品に叫んでいる。私は決して君のために立ち上がったのではない。私は私のために、私が納得できるように行動したのだ。老紳士はそう思っていたに違いない。いや、違うかもしれないけれど、なんだかそうに違いないように僕には思えた。
いやまあ、世の中不思議なもんだ。静かに注意されても、女子中学生は言うことを聞かない。怒鳴られると、アッと言う間に静かになる。静かになったけれど、老紳士は納得の心は乱されたままだ。尻馬に乗って怒鳴った男は、ほら見たことか、というような表情になっている。
そんな、地方都市のマクドの風景。
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植松事務所
植松眞人(うえまつまさと): 1962年生。映画学校を卒業して映像業界で仕事をした後、なぜか広告業界へ。制作会社を経営しながら映画学校の講師などを経験。現在はフリーランスのコピーライター、クリエイティブディレクターとして、コピーライティング、ネーミングやブランディングの開発、映像制作などを行っています。














































































