死んだ後に出る本。
高倉健が亡くなると、高倉健の最後のパートナーだった女性が本を出す。その出会いから愛の言葉、暮らしぶりや死に際のあれやこれやが、微に入り細に入り書かれている。本屋さんの店頭でパラパラとめくっただけなのだが、そんな感じの本だった。
そう言えば、女優の有馬稲子も亡くなった市川崑監督との不倫関係を自叙伝に事細かく書き綴ったことがあった。似たような本はたくさんある。向田邦子の妹が向田邦子の生前の秘めた恋について書いた本もあったなあ。
人間誰だって、人の秘密には興味があるし、目の間にあれば知りたい気持ちになってしまう。でも、それを見て知ったところで、それが本当かどうかなんてわからない。なにしろ、相手が死んじゃってるんだから。さすがにちゃんとした出版社が出す本の多くは、ただ恨み辛みを書き並べただけの本を出すのをためらう。でも、恋人や肉親が、相手にリスペクトを送りながら書いているとついつい本当のことだと思ってしまう。
そこには、生前、うかがい知れなかった何かがあるかもしれないし、知ったことで作品の見方が変わるものがあるかもしれない。でも、それでも、もういいじゃない、と思う。健さんがピロートークで自分の作品のなかで「あれが好き」と言っていたとしても、それで評価が分かるのは見る側が馬鹿だと言っているようなもんだ。向田邦子のあの作品のあの男は、実は不倫相手がモデルなのか、と想像することがいったいなんの役に立つというんだろう。
不器用な、男の中の男というイメージを生きた高倉健が、海外で知り合った女性ライターにまめに電話しているだけで、驚きはするけれど、それ以上に、それをバラしてしまうライターにうすら寒いものを感じてしまう。
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植松事務所
植松雅登(うえまつまさと): 1962年生。映画学校を卒業して映像業界で仕事をした後、なぜか広告業界へ。制作会社を経営しながら映画学校の講師などを経験。現在はフリーランスのコピーライター、クリエイティブディレクターとして、コピーライティング、ネーミングやブランディングの開発、映像制作などを行っています。
あまから
高倉健さんや向田邦子さんのそういった話は、あまり聞きたくないなぁというのが本音です。ついつい「もしかしなくてもお金に困ってる?幾ら貰ったのか、そっちを教えてくれ」と思ってしまいます苦笑。
ところで『生前、女優の有馬稲子…』とありますが、これは有馬さんが亡くなっている、という意味でしょうか?(違っていたらすいません🙇♀️)確か中高年向けの高級マンションにお住まいで(ずいぶん前ですが特集された雑誌を買ったので覚えてました)亡くなったとは聞かないので…市川崑さんの事だとしたら、私の読み方?が違ってるので問題ないです。長々と失礼しました!
uematsu Post author
あまからさん
すみません。亡くなっておられないことは知っていたのですが、亡くなった市川監督のことを先に書くかどうか逡巡しているうちに間違った記述をしていました。
申し訳ありません。
修正しておきました。
ご指摘ありがとうございました。
でも、やっぱりこういうのを見たり聞いたり読んだりすると、「秘すれば花」という言葉を思い浮かべてしまいますね。