ビットコインを1万円。
ビットコインを買ったのだ。えっと、確か4年ほど前に。どうだ、すごいだろ。仮想通貨だぜ、と言いたいところだけれど、買ったのはたった1万円である。だって、最初から10万円とか20万円とか怖くて買えない。というか、当時はすでにビットコインで億万長者になった人がいて、そのあとに大幅に価値が下落して「もう、仮想通貨の時代は終わった」とか言われ始めていたころだったのだ。
だから、1万円だけ買ってみたのである。株も投資もしたことのない僕が、ビットコインを1万円だけ買って、自分がこういうことに向いているのかどうかを試してみようと考えたのである。
で、僕はスマホにアプリを入れて1万円でビットコインを購入したのだ。そして、半年経った頃には、僕の1万円は5000円になっていた。「ええ〜!半額じゃん」と思ったけれど、なんせ元金が1万円なので、それほど悔しくはない。逆に「なるほど、これがもし100万円投資してたら目も当てられないぜ」とニヤニヤしながら、日々の変動を眺めていたのである。
5000円になった僕のビットコインは、それからも上がったり下がったりしていたのだけれど、大きな変化が現れたのだ。アメリカで、トランプが2度目の大統領になった途端に、僕のビットコインが再び1万円を超えたのである。「おお、元金を超えたぜ」と喜んでいると、今度はイーロン・マスクがアメリカ政府の要職についた。すると、僕のビットコインは2万円になった。そして、次に、トランプが世界中にアホみたいな関税をかけるぜ、と脅し始めると、僕のビットコインは3万円を超えたのだ。
いやあ、恐ろしい。なにしろ、トランプが大嫌いで、トランプのやることなすこと「なんだそれ!」と思っているのに、そんな大嫌いなトランプが暴れれば暴れるだけ、僕のビットコインの価値が上がっていくのだ。一瞬、「トランプ頑張れ」と応援しそうになった僕は、もしかしたら、人の道を踏み外しそうになっていたのかもしれない。危ない危ない。しかも、同時に僕は「3万円になったんだから、もうちょっとビットコインを買おうかな」と思ってしまったのだからタチが悪い。上がったときに買おうとして、下がったときに手放そうとするーー自分が最も投資に向いてない人間だということが、よくわかった。
ということで、今日も僕の1万円はビットコインとして、上がったり下がったりしながら、僕を楽しませてくれているのである。
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植松事務所
植松雅登(うえまつまさと): 1962年生。映画学校を卒業して映像業界で仕事をした後、なぜか広告業界へ。制作会社を経営しながら映画学校の講師などを経験。現在はフリーランスのコピーライター、クリエイティブディレクターとして、コピーライティング、ネーミングやブランディングの開発、映像制作などを行っています。