島ウンバアの5ミニッツ。
はああんたさんはどこの人かね、ハアハア、ザビんとこの、ああ嫁さん、アア、アアこないだ挨拶に来てくれた、アア、アアおめでとうさん本当によかったよね、母ちゃんに見せたら喜んだろうに、うちはここんちのウンバアと親戚でよ、隣の島の出なんよ、ここんちの母ちゃんもよう知っとるでよ、母ちゃんに見せたかったなあ、ザビのことふんとにかわいがっとったがよ、
なになにこれが、アア、披露宴の、写真かよ、誰やこのばあちゃん、ハア、こりゃあのフミコかよ、あんなにかわいかったのにすっかりウンバアになっちまってよ、ほうかいほうかいフミコこんななっちまったかい、あとは誰やちいともわからんな、うちもみんなもこーーんな年寄りだでよ、
まあよかったさ、うちは95でよ、100が近づいてきちゅうがピーンピンしとるわ、うちの家系はの、長生きすっても腰曲があたり目見えんちゅうがはあるけどよ、頭のほうだけはぼやぼやせんのよ、うちの家系はだーれも頭やられたやつおらんのよ、おいぼれてもおかしゅうはなっとらん、それだけは大丈夫と思うがよ、頭やられたらの、あれだけはいけん、迷惑かけるばっかでの、頭だけはしゃんしゃんとしときたいもんやが、
頭っちゅうたらこないだあったやろ、⚪︎×△のインジイが死んだ話、警察が見つけたときや首にあとがついとったっちゅう話やが、そうそう、息子がしめたっちゅうことやが、首しめると目ん玉とびでるっちゅうんやが、インジイはそこまでやなかったっちゅうて半分目が出とったっちゅうで、ハアえらいこっちゃ、
警察いうたらこないだ道で財布ひろたんやけどの、ヒロコさんに見せたらばあちゃん警察に持っていったほうがええよって言われたんで持ってったんやが、どこでひろたーなんぼはいっとったー何時におちとったーいうて取り調べされてわしゃハーーもうかなわんなんもさわっとらん、こんなおそろしい思いするなら財布なんかひろわんかったらよかった警察なんか来るんじゃなかったアンタの出したお茶なんか飲みとうない言うて帰ったんやけど、ハアあんなおそろしい思いすると思わんかったわ、いらんいらんわしゃなんもいらん、なんも話さん言うて出てったわ、スーパーで豆腐買って帰るの、じゃあまたの。
以上、ある95歳島女子、5分間の弾丸トークでした。
(方言が激しいため、超訳失礼)
Text by じじょうくみこ
Illustrated by カピバラ舎
*「じじょうくみこのオバサマー」は毎週火・木・土更新です。
okosama
じじょくみさん、こんばんは
よう見たら最後に句点がひとつあるだけでホンマは読点もないほどやったんちゃうかなあと終戦のときにはすでに四半世紀生きてはった95歳島女子の生きる力に畏敬の念を抱く8月6日です。
じじょうくみこ Post author
>>okosamaさま
こんばんは、コメントお気遣いありがとうございますーm(_ _)m
終戦時に四半世紀と考えると感慨深いものがありますがハイハイそうなんですもうどこからどこまでがセンテンスなのかわからない感じの勢いでしたでもこういうおばあちゃんの話聞くの大好きですが相槌入れる隙もないので消耗する8月6日です。
サヴァラン
ああ、わたしもこういうおはなし聞くのが大好きですが、相槌のタイミングもどうかすると瞬きのタイミングも奪われてしまいそうな怒涛トークのウンバアのO脚ぎみの足とかよく動く少し関節の曲がった手先とか全体に「O」の字に形成されたお姿とか楊柳生地の夏衣とか、いずれにしろokosamaさんと同じく、あのときもこの方は既に立派な「大人」でいらしたのだなあと思うと、「生きる力」や「適応する力」のなんと奥深く原初的で美しいものであることかと、自分にとってのまぶたのウンバアの面影を重ね合わせて、ずじょうくみこさんの今夏の「生きごたえ」に思いを馳せる8月7日でございます。
じじょうくみこ Post author
サヴァランさま嗚呼サヴァランさま、サヴァランフィルターを通したウンバアの姿に何やら脳裏に突き刺さるような鮮烈なイメージを浮かべていまなんだか目眩がしそうでございますが「生きごたえ」、生きごたえってなんといい言葉でしょうかとひとり噛み締めております噛み締めすぎてアゴが痛くなりそうな8月7日の夜でございます。