きんぷくのポテンシャル
6月に開いた結婚披露パーティに、島一番の美人が参列していました。
主賓席に座っていた、島在住のカレンちゃんは
目鼻立ちのくっきりした、女王然とした美女。
その華やかな美貌と物怖じしない性格から
会場でもひときわ目をひいておりました。
カレンちゃんとはパーティが初対面だったので
「写真を渡したいんだけど、どこで働いているの?」
とダンナはんのザビ男に聞くと
「ん? きんぷくにいるよ」
「き、きんぷく? なにそれ」
「勤労福祉会館」
勤労福祉会館
略して「きんぷく」
美女がいるには意外すぎる職場ですが、
その数日後のこと。
島はいまだに光回線が開通していないため、
インターネットはADSLに頼るしかありません。
数年前にサヨナラしたはずのADSLに
まさかここで再会するとは…と感慨深い気がしましたが
このところ天気が悪いのか、それでなくても遅いネットが
どうにもこうにもつながりません。
「これじゃ仕事にならないよ。
どこかWiFi飛んでる場所ないの?」
「ん?きんぷく飛んでるよ」
「え」
さらに数日後。
「ねえちょっと読みたい漫画あるんだけど
シマ島に漫喫ってあるの?」
「ん? きんぷくにあるよ」
「え」
さらに数日後。
「ねえ今度遊びに来る友達が
島でカラオケ歌えるのかと聞いてきたんだけど
カラオケボックスってないよね」
「ん? きんぷくにあるよ」
「え」
さらなる数日後。
「ねえシマ島にボーリングって、」
「ん? きんぷくにあるよ」
「え」
ヤダそこ竜宮城すぎて逆に行きづらい・・・(帰ってこれないかも)
そんなわけで、まだ見ぬきんぷくの可能性について思いをはせる今日このごろですが
「ねえねえ、外で働きたいんだけど」
「きん………」
さすがのきんぷくにも求人はないのだった。
京都の金福寺ではにゃんこさんが案内してくれるらしい。(こちらは「こんぷく」)
Text by じじょうくみこ
Illustrated by カピバラ舎
*「じじょうくみこのオバサマー」は毎週火・木・土更新です。