島のアラフィフ新妻、その後のこと。
シマ島のはずれに、ちょっと不思議な森がありました。
それは集落の奥から海へとつながる「カミンムリ」と呼ばれる場所。島では昔からこの森の一本道をたどって海から人魚の神様があがってくると信じられており、「ひとが立ち入ると天罰が下る」と島民は森に近づくことすらいたしません。
そんなカミンムリが、唯一開かれる日があります。それは、大晦日の夜。島へ嫁いできた花嫁が、その年の「さいごの夜」から新しい年の「はじめの朝」までの間、カミンムリの中で祈りを捧げると島に恵みがもたらされる…という伝説があるというのです。
困ったことに昨年島に嫁いできたのは、わたしひとり、でありました。
大晦日の夜。森の入口をふさいでいた重い鎖がじゃらじゃら音を立てて外され、ひとりで森に入ることになりました。ザザ、ザザと木立の震える音に背中を押され、暗い森を進むこと5分。道の終わりに、古びた小さな祠が現れました。「祠を見つけたら中へ入るように」と言われていた通り、扉を開けて真っ暗な祠の中へ入ったのです。
どれくらいの時間が経ったでしょうか。ザザザ、ザザ、と木立の音だけが暗闇の中に満ちていく中、どこからか奇妙な音がしてくるのがわかりました。
ピチャ、ピチャピチャ、ニチャ…
何かが地面を這いずるような、ぬめった音。不気味なその音はどんどん大きくなっていき、やがて祠の前でピタッとやみました。扉の隙間から差しこむ月の光がゆらゆらと蠢き、何かがこちらを覗き込んでいる気配がします。なんだろう、すごく嫌な感じがする。祠の中で恐る恐る目を開くと、そこには……
なんもないなっしー!!!
すいません、「離島といえば因習とかありそうよね、いや絶対あるよね」とよく言われるので、リクエストに応えてB級ホラーをパクってみました。あ、↑書いたことは全部ウソです。シマ島に人魚伝説なんかありゃしませんm(_ _)m
でもカミンムリと呼ばれている場所は本当にあります。
えーそんなわけで、大変ご無沙汰しておりました。「え、オバサマーって、まだ冬ですけど?」と思ったそこのあなた。大丈夫です、世界のどこかは今日も夏。南半球気分で毎度どうも、あなたのオージービーフくみこでございます。じゅうーじゅうー。
さて。はじめてこのコーナーをお読みくださる方もいらっしゃると思いますが、わたくし、じじょうくみこと申します。長年、東京で独身生活を送っておりましたが、離島在住の五十路男ズジョウ・ザビエル、通称ザビ男と縁あって昨年夫婦になりまして、48にして慣れない島生活にすったもんだしているでところでございます。
独身時代の悲喜こもごもはこちら↓
離島移住後のあれこれはこちら↓
この「オバサマー」ではアウェー感に悩まされ続けたシマ島での夏が終わり、地元スーパーでバイトの口を見つけたところまでお伝えしました。あれから3ヶ月。まあーいろいろありましたよ。狭い島での日常ですので、これまでのような「事件」は起こりませんが、あたたかい春が来るまでの間しばしおつきあいいただけますと幸いですm(_ _)m
今日も元気だ崖っぷちだー
そんなわけで、シマ島での生活も気づけば半年を過ぎたのであります。最初の3ヶ月は拷問かと思うほど長ーく感じられましたが、その後の3ヶ月はあっという間。というか、キリモミ状態で何がなんやらという感じで終わってしまいました。
この3ヶ月で、なにが変わったか。
その1.島民として認知され始めた、らしい。
外洋の離島であるシマ島まわりの海はなかなかの荒くれ者で、秋から冬の間にかけてこれでもか!というほどシケまくり。島と本土を結ぶ船も欠航が相次ぎ、シマ島は観光客はもちろん、ちょいちょい物資も途絶えて絶海の孤島と化すのでありました。
瀬戸内海ってあれ確か海じゃなくて鏡でしたよね
こんな季節にシマ島にいるのは、ほぼ島民のみ。ですので、それまで観光客にまぎれていたわたしの存在が、どうやら認知されるようになったらしく、しかもスーパーに行けばそこにいるもんで、まーー島民近づいてくるくる。
はじめの1週間は「あんたどこの人ね」とスーパー来る人来る人に聞かれましたが、次の週には「あんたザビんとこの嫁さんやてな」「うちはザビんとこのウンバアと同じ島の出身でよ」と来る人来る人に素性を語られ、さらに次の週は「あんたの旦那はあそこの飲み屋でよう飲んどったな」「ザビは昔から足が速くてよ」と来る人来る人にザビ男ヒストリーを聞くハメになりました。
「夏に軒につけていた緑色のひさし、しゃれとったな。あれつけると涼しいか?」とか、「あの自転車どこで買ったんか?」とか、よく知らない人が我が家のことをまるっとお見通しなのにもだいぶ慣れました。逆にそのおかげであるとき雨の中を傘さして歩いていたら、車に乗った島民に「濡れるから乗って行きなー」と声をかけられ、家の前で降ろしてもらえたこともありました。
え。我が家がどこにあるのか言ってないんですけど?
てか、あなた誰?(爆)
その2.労働力として期待されている、らしい。
そもそもスーパーのバイト自体、島での初めての飲み会で「実は仕事を探していて」とぽろっとこぼしたところ、翌朝には早速スカウトが来て、あっちゅうまに決まったわけであります。それをきっかけに、どうも「ザビ家のとこの若い(!)嫁さんが働く気らしい」という噂が広まっていたようで、「うちの店も店員募集している」「あそこのスーパーも欲しがっている」と次々に求人の話が舞いこむようになりました。
あんなに仕事を探していたときは、どこにも働き口がなかったのに! キイイ! と若干腹立たしい気持ちにもなりますが、先日初めてバイトで一緒になった熟女に
「老人ホームの人たちが、あなたのことをスタッフに引き抜けないかと狙っていたらしいんだけど、腰が悪いし無理だと思うよーと断っておいたよ」
と言われたときは仰天しました。
本人に事後報告……((((;゚Д゚)))))))
知らない間に知らない人たちの間でわたしの進路が話し合われていることも驚きですが、わたしが腰痛持ちということまで知っているとは、島民の情報網おそるべし…。まあ、それぐらい島には労働の担い手がいないってことでしょうが、いやはやこの環境、20代だったらきつかったろうなあ。
その3.そうはいっても、友だちはいない。
そんな感じで島の生活にはだいぶ慣れてきはしましたが、顔見知りが増えるとかえって仲良くなるのが難しくなるもんなんですねえ。会話を交わせば交わすほど、やれこの人とあの人が仲悪いとか、あの人は誰々の派閥でとか、そういう情報ばかり入ってきます。この人なら話しやすそうと思っても、どこでどうつながっているかわからない、油断ならない村社会。あー田舎生活ど真ん中。
・・・。
・・・・・。
・・・・・・・。
いやあー
なんとなく田舎のせいにしてみましたが、ぶっちゃけ
「友だちできた?」
って質問されるのが一番つらいいいいーーー!・゜・(ノД`)・゜・。
わたしってこんなに人づきあいヘタクソだったっけか、とがっくりするくらい、いっこうに交友関係が広がっていきません。とりあえずザビ男との生活は楽しくやっているので、焦らずやっていくしかないと思ってはいるのですが、とりあえず我が家にニコニコ顔でやってくるのが
集金のオバちゃんとエ○バの証人だけ
なんてことは、東京の友だちには言えずにおります…。
都会にいようが島にいようが結局悩みの種って人間よね、というわけで次回はわたしを最も悩ませている「カマド一族」についてお話ししたいと思います。それではみなさま、また来週〜。
Text by じじょうくみこ
Illustrated by カピバラ舎
*「じじょうくみこのオバサマー」は毎週土曜日更新です(2〜4月)。
ひろぴー
お久しぶりです 連載楽しみにしています
じじょうくみこ Post author
>>ひろぴーさま
こんにちは!コメントありがとうございますー( ´ ▽ ` )ノ
しばらくの間おつきあいくださいませ!
okosama
は!出遅れた!
じじょくみさん、こんばんは
お仕事ももう三か月ですか。
はあ〜月日の流れるのは早いです〜。
かまどいちぞく?
それとも、かまどーぞく?
悩まされていらっしゃるようですが、楽しみです(^o^)
じじょうくみこ Post author
>>okosamaさま
こんにちはー!しばらくぶりでございます(^∇^)
帰ってまいりましたー!
カマドオ族に悩まされているかどうかは
来週のお楽しみということで(笑)
きゃらめる
お久しぶりです♡
しばらく連載つづくんですね♪
嬉しい!
楽しみが戻ってきて、日々の暮らしがキラキラしそうです( ´艸`)
じじょうくみこ Post author
>>きゃらめるさま
こんにちは!お久しぶりですコメント嬉しいです(^∇^)
キャラメルさまの日常をキラキラさせる自信はないですが(^_^;)汗
春先くらいまで、どうぞおつきあいくださいませm(_ _)m
匿名
おかえりなさーい。
わーい、また土曜日のお楽しみを糧に、仕事地獄&通勤地獄を乗り越えてゆけますわ〜♪
カマドー族、気になりますねぇ。
じじょうくみこ Post author
>>匿名さま
ただいまですー!コメントありがとうございます( ´ ▽ ` )ノ
なんだか地獄がいっぱいのようですが(^_^;)
お互い楽しいことが探してきばりまっしょいねー!
はしーば
あら、ついうっかり、「匿名」とは。
↑は、はしーばでございました。
じじょうくみこ Post author
>>はしーばさま
お名前わかってよかったです(笑)
お久しぶりでーす( ´ ▽ ` )ノ
島民予備軍
こんにちは、初めてコメントいたします。
私も近い将来、結構な離島に嫁ぐ可能性があり、
何となく「離島 嫁ぐ」などで検索していて
こちらのブログにたどり着きました。
色々あるんだろうとは思いますが、楽しく読ませて頂いたおかげで
あれこれ考えすぎていた不安が和らぎ、勝手に感謝しています^^
これからも更新楽しみにしています。
じじょうくみこ Post author
>>島民予備軍さま
こんにちは。コメントありがとうございます!
なんと、離島に嫁がれるのですか!
いらっしゃいませ(笑)
大変な決心をされたと思います。
「結構な離島」の結構度が気になるところですが、
不安が少しでも和らいだなら、書いたかいがあったというもの( ´ ▽ ` )ノ
嬉しいですー。今後ともぜひお互い励ましあっていきましょう〜!