ああ、専業主婦。朝ごはんと夕ごはんのあいだ。
土曜日、朝ごはんにテレビがついていた。寝癖の子どもがえらそうなことを言った。「この研究は、これからどう応用できるかが問題だと思う」。「それもまあそうだけど」とシュジンは言い、「お父さんはまずこの細胞ができるしくみの方が気になる」と言った。わたしは新しい卵焼き器をコンロにのせながら「ここの広報は…火加減は大丈夫かしら」。
10:30。息子とお弁当を塾へ送る。この時間はちょうど、塾の向かいの外郎屋さんの奥様がお店のガラスを拭いていらっしゃるのが見える。長身でショートカットの都会的な雰囲気の奥様だ。この日はお姿が見えず残念。
「今日こそはフライパン」。デパート1階の食品売り場にチョコレートの特設売り場がある。チョコレートよりフライパン。目当てのコーナーへ急ぐ。これと決めた品物がそこにある。お値段を確かめていてフロアにひとの多いことに気が付いた。先週までお歳暮の解体セールをしていた会場に、お着物姿のご婦人の姿がちらほらあって、花展が開かれていた。
花展なんて久しぶりだ。会場のあちこちでお顔見知りどうしのご挨拶が交わされている。お邪魔にならないように背中をでこぼこさせながらひととおり作品を見せていただく。お花もひとも、花展のこの雰囲気は何年経っても変わらないものだと思う。竹や椿の葉がつやつやと光っていたのは何かを塗ってあるのかしらん。
着物というのはお辞儀に似合う衣装だなと思いながら目当てのフライパンをむんずとつかんでレジへと向かう。日曜の黒田官兵衛の藤村さんのナレーションはすてきだと思う。
11:30。これで帰ってさっさとお昼にするのが一番いいのはわかっているのに、ついつい本屋さんへ立ち寄る。理由のひとつは息子に頼まれた本があったこと。いまひとつはお昼ごはんを食べるのにお伴が欲しいと思ったこと。
気を抜くとお腹がなるので用心しながら書棚を見てまわる。芥川賞の作品コーナーでちょっと立ち読みして、このお腹の減り具合では全く文字が拾えないことを確かめる。にもかかわらずついつい欲張ってあれこれ手に取る。持っていたバッグがとても邪魔。平置きの本の上に置こうかなと何度か思ったけれどがまんする。
がまんしているのか本の物色をしているのかわからなくなる。だんだん浮遊感が出てきて時間の感覚がなくなる。子どもに頼まれた本を1冊手にしたまましつこくひととおり見て回る。どこかのコーナーで、小さい女の子が「おかあさん もう帰ろうよ 帰ろうよ」とずっと言っていた。
女の子の気持ちも、おかあさんの気持ちも よくわかるなぁと思いながらバッグを持ち直したところで「沢村貞子の献立日記」が平置きになっているのを見つける。おばさんはこれで帰るよ、お先に。
帰りの車は頭の中が平面構成になっている。これはあれだ。きっと血糖値が底をついているのだ。家について手を洗ってやかんを火にかける。誰もいないのに「もーお腹空いた。もーお腹空いた」と誰かのせいのように大げさに口にする。
朝持たせたお弁当の残りを食べる。冬場のお弁当はどうしても冷たい。流行りの保温ジャーでシチューでも持たせたいけれど、ジャーが意外と高い。無印で「値下げしました」にならないかと行くと毎回チェックする。
冷えたお弁当を一口口に入れたあと、「そうだったそうだった」とさっき買い求めた「沢村貞子の献立日記」を広げる。
ひとさまのノートを見るのが好きだ。あんまり見る機会がないから余計に。自分のノートを見るのはきらいだ。どうしてだかはわからない。
スーパーでメモを片手にお買い物をされている方を見るのが好きだ。どんな紙にどんな字で書かれているのかなとついつい気になる。自分のメモを会計でかごの中に入れっぱなしにして、レジの方に手渡しされるのはかなり恥ずかしい。レジの方はたいてい優しくて、ちょっと微笑んでくれるのは恥ずかしいけれど嬉しい。
お料理のレシピ本にはあまり興味がない。それよりこの「献立日記」のような俎板の音のする本に惹かれる。
夜は豚バラ肉の塊を煮た。むかしよくデパ地下で長崎の卓袱料理の豚バラを買った。大差はない、と自分では思う。
「お弁当、おいしかった」と息子は言い、「昼は八宝菜を食べた」とシュジンは言った。「おかあさんはお昼に何を食べたの?」と聞かれたことはない。おかあさんは時間を食べていると、ノートには書いておこう。
青緑
サヴァランさん、こんにちは。
タイムリー!私も沢村貞子の「わたしの台所」を毎晩つまみ読みしてます。「ほんとに丁寧なのね~」と感心するばかりで翌朝には忘れてしまっています。(だから毎晩読めるんですね)息子の弁当は、あの流行りのスープジャーにご飯を詰め、おかず箱は常温箱。ランチ時間にご飯がほんわり温かいのが「いいんだよね~」と去年の冬に言われたのが忘れられません。うちは何種類かサイズも揃えていますよ。
Comet
塾のお向かいが外郎屋さん!(←そこ?)
山口の外郎は柔らかくて繊細ですね。たまにしか口にできませんが、非常に好ましく思ってます(^ ^)
私は名古屋のういろうは苦手ですが(ごめんなさい)、伊勢の虎屋ういろは大好物です(^ ^)
爽子
わたしも、外郎に反応してしまいました。
友人が二度山口に行った際にそれぞれ外郎を送ってくれたのです。
外郎って、こんなにおいしかったのか!というのが感想。
二度目のはどこの店だったんでしょう。(て、言われてもしりませんよね、ゴメンナサイ
豆子郎?個包装のがちょうどよい大きさで、貪り食いました。
すみません、食い気満腹太夫です。
お近くでしたら、お昼ごいっしょしましたものを・・・
おかあさんは時間を食べている・・・なんか鼻の奥がつんときました。ぐすん
サヴァラン Post author
青緑さん こんにちは。
「つまみ読み」にびびびっと反応。
沢村貞子さんの「わたしの台所」
はじめに読んだときは意外だったんです。
わたしの中ではちゃきちゃき江戸っ子の
「お燗、つけとくれ!」なイメージだったので。
ご結婚のいきさつも子どものわたしには意外でした。
再読の今は、出入りのお魚やさんへのお支払いのメモなんかをガン見です。
「豊かさってこういうことよねー」と。←そこ?
青緑さんのサイズ違いのスープジャーも豊か♡
台所の音や湯気のたつ食べものって、やっぱり豊かですよね~♪
(スープジャー、そういう使い方もあるんですね!見に行ってきます!)
サヴァラン Post author
Comet さん
ソコに反応してくださってありがとうございます^^!
ほんと、外郎は誰に聞いても山口>名古屋です。
名古屋人の友人も山口>名古屋だと認めます。
(ガンバレ青柳。ガンバレ大須)
うちの祖母(非名古屋人)は、初めて名古屋のういろうを食べたとき
「名古屋のひとは、こんな舌切すずめののりみたいなのが美味しいんだねぇ」と言ったそうです。
名古屋外郎の主原料は米粉。
山口外郎の主原料はわらび粉なんだそうで
お味や食感の違いはそこからなんでしょうね。。。
虎屋ういろって、デパ地下なんかで虎柄の赤べこ(?)を飾ってるお店ですよね。
あそこは伊勢なんだー。知らなかった。
今度名古屋に帰省したら、虎屋ういろ食べてみま~す!
サヴァラン Post author
爽子さまも
外郎への反応ありがとうございます!^^
やっぱり山口ういろうは人気なんですねー。
山口市内、いたるところに外郎屋さんがあります。
小学生は 外郎工場の社会科見学に行ったり外郎づくり体験をしたり。
外郎教育もさかん(?)です。
召し上がったのはやはり「豆子郎」で間違いないかと^^
他には「御堀堂」というお店も有名です。
因みに息子の塾の前のお店はこちら。→http://kaikoan.com/
お昼、ごいっしょ
してくださいますか?
お昼はいつも「やさぐれ度」マックスなので
そうおっしゃっていただけるだけでう~れすぃ~~~です(^O^)/
青緑
外郎は、山口>虎屋>名古屋だと私も思います。山口のはお上品ですよね~。名古屋のは腹持ちがよろしい。虎屋は「1本食い」いけそうなときがあるほど種類が豊富で魅力ですね。久しぶりに食べたいよ~。私も「お昼」ご一緒したいわ~!
サヴァラン Post author
青緑さま
ふえ~ん。うれしいよ~~~。
山口ういろうと
虎屋ういろうを
かついで行きま~~~す。
Comet
青緑さん!!! 私も虎屋なら「恵方巻き食い」できそうですよ〜。賞味期限が翌日までと短いので、買うときは迷いに迷って2本に厳選するんですが、たいていあとになって「2日で3本いけたな」と(笑)
サヴァランさん、虎屋はわらび粉でも米粉でもなく、小麦粉です。だからサックリしてるの〜。ぜひぜひお試しくださいませ。
爽子
Cometさま。
おおー、外郎一本食いいけまっか?
虎屋ですね、是非近いうちに、やってみます。笑
サヴァランさま。
御堀堂が多分一回目に送ってきてもらった外郎だと思いますです。
子どもたちの社会科見学になるほどの地域密着産業だったのですね。
完全な食わず嫌いで、山口の外郎を食べてからというもの、名古屋のも食べてます。
大須に行ったときは、自分で一口サイズの詰め合わせ買いました。
あー、でっかい外郎の丸かぶり一気食いの目標もできたことだし、生きる希望が持てました。…ん???
サヴァラン Post author
Comet さま
じぇじぇ。虎屋は小麦粉なんですかー。
だからお店に並んだういろうたちの断面が
素朴な中に自立した感じを醸し出してたんだー。
ぬぬぬ。ういろうなのにさっくりですとー。
あーぐやじい。あーぐやじい。
わたしは名古屋に30年以上棲息しながら
どーして虎屋に食指を伸ばさなかったのかー。
サヴァラン Post author
爽子さま
名古屋ういろうは、大須ういろうと青柳ういろうが有名ですが
(むかし、青柳ういろうのCMで
しろくろ抹茶あずきコーヒーゆずさくら。七つの味で残らずぽい。
ぽぽぽいのぽいぽいぽい~♪というのがありました)
わたしのおすすめは養老軒というお店のういろうです。
他のお店のういろうと比べて日持ちがしないのが難点ですが。
…と書いて、もしかしたら…と検索したら、なんと閉店。残念。
ういろうって、あのむっちりした食感が魅力的ですよね。
むっちり感にライト~ヘビーがあって、その違いもまた楽し。
生きましょうぞ。生きましょうぞ。
全国のおいしいものがまだまだわたしたちを待っております~~~!!
Comet
うっそおおん、養老軒なくなっちゃったの〜? と検索したら、JRセントラルタワーズの13階にあるお店は残ってました(^ ^) よかったー。ダンナの実家(名古屋で乗り換えて中央線)に帰省するとき、途中下車して養老軒の「ういろう」と美濃忠の「初かつを」を買っていくのです。そして帰りはまた途中下車して髙島屋地下で虎屋ういろを買っていくのです。余裕があれば赤福をイートインで食べるのです。夏は赤福氷。至福。
あずみ
なぬ! 外郎は山口ですって! 地元長崎では山口は中学校の修学旅行の定番で、私も行ったはずなのに外郎の記憶なし。うーん。くやしい。
サヴァラン Post author
Comet さん
すっごぉい。養老軒ごぞんじとは。おまけになにそれ。Cometさんの名古屋甘味通。美濃忠の「初かつを」は今から5月までのお楽しみですよねん。えーってことは、ダンナさまの帰省のときは「養老軒」「美濃忠」「虎屋」のういろう三昧?おまけに夏は赤福氷つき?いいなーその甘味道中は。あ。高島屋の赤福コーナーは、近くに味噌煮込みうどんの「山本屋総本家」がありますよね♪
サヴァラン Post author
あずみさま
ねえ!わたしの友人が、地元名古屋から萩津和野へ修学旅行に行ったときも、「ういろう」は目にとまらなかったと言ってます。山口外郎、ういろう界の新興勢力なのかも。でもって、こんなに人気があるなんて。山口のういろう業界のみなさ~ん、がんばっておいしいういろうを作ってくださ~い。あずみさん。台湾にも、ういろうみたいなむっちり系お菓子がありますか?
おつ
ういろうって、名古屋だけかと思ってました。(無知)
そう言えば以前祖母が「ういろうって家で作るおやつだった」と言ってたなぁ。
山口のういろうの話題で大盛り上がりですね。
お取り寄せして食べてみた~い。
北陸には「おだまき」という、お餅のような外郎のようなだんごのような・・・
不思議な和菓子があります。
棹になっていなくて、一個づつ包装されてます。
御縁があったらど~ぞ。
あずみ
むっちり系のお菓子、ありますよ! 旧正月中にもいただく「年糕(にぇんがぉ)」と呼ばれる餅のような物体、甘いです。そのまま食べてもいいんですが、なぜか天ぷらの衣みたいなのをまとわせて揚げて食べたりします(そしてこの方が私は好き)。
そして、むっちり系の主食のようで主食でない、かと言っておかずでもない、そしてかといっておやつでもないような、甘くない物もあります。代表的なところでいうと、「大根餅」かな。でも必ずどれも火を通しまーす。
サヴァラン Post author
おつさま。
「ういろう」に参戦いただきありがとうございます^^
わたしも出身の名古屋から当地山口へ来るまでは知りませんでした。
外郎って、歌舞伎の「外郎売」なんかにもあるように、もともとはお菓子ではなく中国伝来の薬だったらしいですね。
当地山口の小学校では、外郎工場に見学に行ったり、学校によっては外郎づくりの実習をしたりするそうです。作ったことのあるおうちの方に聞くと「思ってるよりカンタン♪」らしいです。
「おだまき」、知りませんでした~。検索してみたら、いろんなお味があるんですね。見た目もネーミングどおり糸巻みたいでかわいいーーー。食べてみたいーーー。
そういえば「ういろう」もよくよく考えると、お餅のようなおだんごのような求肥のような…。材料だって米粉あり、わらび粉あり、小麦粉あり…。
ううう、ういろう系お菓子全踏破の夢がむくむくと~!
サヴァラン Post author
あずみさま
むっちり系お菓子レポート、ありがとうございます!
「年糕」、いろいろ検索してみました!
おおお、これは「むっちり度」満点の魅力的な食べ物ですね~。惹かれます!!
「チャイニーズニューイヤープディング」とも呼ばれてるんですね。
日本でもどこかに売られてないかな。探してみます!
むか~し、鹿児島の親戚が 上新粉で作ったお餅を揚げてくれるおやつが大好きでした。
「大根餅」、飲茶で食べたことあります。好物です。
毎日の食事作りに飽きると、大根餅とかれんこん餅とか作ります。
あくまで我流の「なんちゃって」なんですけど♪