ああ、洗濯室。脱衣室と洗面室のあいだ
なんだかんだ言って狭い。
なんだかんだ言って配慮に欠ける。
わたしの了見とか思慮分別のことなら、すっかり棚に上げてある。
ここ数日考え続けているのは日本の一般家庭の「洗面脱衣室」のことである。
特に梅雨時、「洗濯まわり」の作業の煩わしさを、実家の母にたまに愚痴ると母の返事は決まってこうである。
「あーた。お洗濯ひとつとってみたって運動よ。一階でお洗濯して二階に干しに行って、取り込んでたたんでそれぞれの場所に収める。コレすなわち家庭内エクササイズです!」
「ならば実験」と、洗濯回数を2倍や3倍に増やしてみた時期があった。幽霊会員と化していたスポーツジムを解約し、代わりに「洗濯ジム」としゃれ込んだ。
半年はゆうに続けたけれど、ヘルスメーターの表示に手ごたえは現れず、水道メーターに喜ばしくない変化が見られた。
最近はとんと見なくなってしまったが、「建もの探訪」という番組が好物だった。感じのいい住まいに感じのいい家主と建築家、そこへ渡部篤郎さんという感じのいい訪問者。「感じのいい」番組は、「家屋」というものへの「夢」を存分に膨らませてくれた。
夢見る頃を過ぎて、最近少しだけ「終の棲家」というものを考える機会があった。物件と呼ばれるものをあれこれと見始めると、立地、環境、広さと間取り、その他もろもろの条件の着地の難しさにしまいに頭がくらくらとしてくる。
くらくらした挙句に、「まあ急ぎのことでもないし」「なんだかんだ言って、あと数年で息子が独立すればそれでまた住まいの選択はちがってくるし」と、転勤族借家住まいに慣れた頭は、「所詮この世は仮の宿り」なんぞと、あたかも悟ったふうの台詞まで借用しようとする。
それにしても狭いのだ。洗濯周りのスペースが。
「物件情報」をひとまず「洗濯」や「衣生活」目線で注視してみる。試しにわが家ではとうてい手の届くはずのないセレブ物件なども見てみる。洗面ボールがダブルだったり、家族用の洗面脱衣室とゲスト用のお化粧室が別だったり、そこはやはり専有面積の広さに比例したゆとりのある間取りが設計されているにはいる。
だがしかし。洗濯をして干す。干したものを取り込む。たたんで収納する。収納した衣類を着用する。そこまでの動線に、行き届いた配慮の感じられる物件は、わたしが見た限りでは本当に希少物件だ。
なぜだ。なぜなのだ。
季節の寝具を洗いにかける。子どもの泥汚れを本気で落とす。白物だけ分け洗いをする。オシャレ着を少し手間をかけて丁寧に洗おうとする。こうした作業の障害になるのは、何も洗い手の気力と熱意の多寡ばかりではない気がする。
どこに置いとけっちゅうの???
洗面室は洗面室として、脱衣室は脱衣室として、さらに言えば、リビングをリビングとして、常に快適に機能させようと思えば、この「衣」周辺の動線を家の中で重視することも昨今の「キッチン中心型間取り」と同じくらいに大事じゃないか!というのが、梅雨時ニッポンのぐうたらかあちゃんの壮年の主張である。
「むかしはね、井戸で水を汲んで、洗濯板を使ったんですよ」。実家の母はこんなことも言う。けれどもわたしにお説教をする母の洗濯事情は、台所脇に洗濯機があることと言い、その横に土もの洗い用のユーティリティーがあることと言い、その後の庭干しへの動線がすこぶるいいことと言い、なんだかんだ言ってかなりの「好条件」を手にしていたりする。
家事労働が今よりうんと荷重だった時代の女性たちにはほんとうにほんとうに頭が下がる。しかしながら、敬服するということと「むかし」に戻るということとはいささか意味合いが違う。
今の借家の周囲は、ここ数年建築ラッシュが続いている。数年前の田んぼは真新しい戸建ての住宅や、ファミリー向け、あるいは学生向けのアパートへと様相を変えて行く。わたしは下世話な性分なので、あのおうち、あのアパートの「洗濯動線」はどうなっているのかな、と想像することが多い。
「終の棲家をどうするか」。購入することを視野に入れて、庶民レベルの建売物件もあれこれあれこれ見てきたけれど、こと「洗濯周り」に限って、「よっしゃ!コレ買う!」と思える物件は皆無に近い。
「建もの探訪」や、これまた好きでよく見ている「 」内の「リノベーション・スタイル」や「東京の台所」。はたまた、別サイトの「東京R不動産」。これらはさすがに、わたしのような通りすがりにも「家事の快感」を感じさせるような気の利いた間取りが多い。
「思い切って、一部屋を洗濯室兼衣類収納ルームにしました」という物件など、今のわたしには喉から手が出るほど「欲しいもの」だ。
そうした「家事への工夫」の見られる住宅は、総じて感じがいい。
この感じのよさななんだろう。。。と考えると、「家事」の必要性を「家族」が共有している。という結論に達する。この感覚、実は今後の共働き家庭や「労働」「経済」の流れをも左右すると、わたしは密かに思っている。
住宅会社各位の方。
「家事」すなわち「家族の家居」を心地よくする間取りの再検討。
わたしは切にお願いしたい。
takeume
わかります!!
洗濯室欲しい!!! 洗う・干す・アイロン・片づけるをそこで仕上げてしまえるところ。
大きいものも干せる、雨でも干せる、晴れた日はお日様の力も借りられる。
うっかり猫がベランダに・・・なんて心配なく、干せる場所。
急なゲリラ豪雨も怖くない、夜遅く帰っても夜露にあたってない洗濯物。
あぁ、欲しい、欲しい、洗濯室・物干し
と、私も常々思っています。
いまねえ
おお。。
まさしく私の内なるもやもやを明快に言葉にして表して下さいました!
・・我が家も二十数年前に設計士と相談しながら建てたのですが
この洗濯に関する動線、間取りについては全く頓着なしでした。。
室内干し用の洗剤のCMも、主夫が洗濯するCMも
既に一般的に目にするもの、特に不思議もないのですが
では洗濯という家事動線に注意が払われているかというと
・・我が家の建築時と大して変わりないように思われます。
台所や居間に比較して関心の払われ方は小さいように感じますが
高齢になっての自活生活、あるいは家族の介護という生活になったとき
ストレスなく立ち回れることの重要性は図り知れません。。
家事のバリアフリーの第1にこの洗濯に関する動線問題が挙げられるべきですね。。
サヴァラン Post author
takeume さま
うわ~、ほっとしました。
書きながら「これってわたしのぐうたら度の暴露?」って思っていたので。
なんだかいつも声なき声が聞こえてしまうんです。
「すべては知恵の使い方です」と。
わたしは知恵の前に「洗濯室」がまず欲しいです(笑)
サヴァラン Post author
いまねえさまも。
ありがとうございます。
ほんと、ある時期からあんまり変わっていないと思うのです。
正直なはなし。日本の家事情。
そうだ。そうだ。洗剤も洗濯機もどんどん進化を遂げるのに
なんで家事動線の見直しだけがこんなにスルーなんでしょう?
高齢になっての自活生活。
話題を高次へ引き上げてくださって、ありがとうございます。
ランドリー革命
「バリアフリー」目線で考えること、
これ、と~っても重要ですね。
saki
はじめまして。
私も洗濯&内干し&収納を全部できる部屋が欲しいです!
先日、NHKのあさイチで、洗濯後の片付けを簡単にするやり方をやってましたよ。
1人につき1つの専用ネットを決めて、服を脱いだら、各自自分のネットに入れてもらう。
洗濯後、人別に干す。洗濯ハンガーをわけたり、場所を分けるとか。
とりこむ時も、人別のカゴにとりこむ。それぞれ本人に、引き出しに片付けてもらう(しまいやすいように引き出しの分類も簡単に)。
ウチは、子供も小さいですし、パパだけ引き出しにしまうのを頼んでも、長続きしなさそうです。
引き出しにしまわず、自分のカゴから出して服を着るようになるのが目に見えるようです…うむむ。
サヴァラン Post author
saki さま
はじめまして。コメントありがとうございます!
あさイチ。
ご覧になったその回も「友の会」の方がご出演だったでしょうか。
「婦人の友」のみなさま
すばらしいアイディアに毎回唸ります。
洗濯ものの事業仕分。
胸がすくようなすばらしいアイディアですね。
家族が粛々と自分のお洗濯ものを引き出しにしまうの図。
なんて美しい光景なんでしょう~。(妄想中)
ああ、でもわたしも今見えてしまいました。
シュジンと息子が「引き出しへしまう」のワンアクションを
あっさりショートカットするの図。。。
梅雨の湿り気のせいか
いろんな妄想がアタマを去来します。
saki さんのお宅の小さいお子さんは
おうちの中をパタパタと行き来してらっしゃるでしょうか。
家事の「あ~でもないこ~でもない」。
いっしょにおしゃべりできると嬉しいです♪
くるりん
こんにちは。梅雨どき、洗濯に関する悩みは尽きませんね…。
横からごめんなさい、
>とりこむ時も、人別のカゴにとりこむ。それぞれ本人に、引き出しに片付けてもらう
>「引き出しへしまう」のワンアクションをあっさりショートカット
↑ココ、人別のカゴがそのまま引き出しになってたらいいのかなと思いました(笑)。
その状態で畳まずよれよれしわしわになっていてもおそらく気にしない=今までのこちらの労力や愛情は浪費または度外視されている現実を受け止める…書いてて若干切なくなりましたが(汗)。
引き出しの中身を畳むも放置も本人責任で。
皆さまそんなよれよれしわしわなご家族(の衣類)に耐えられなくなって、元の木阿弥コースかしら???
掛けておける衣類は極力そのまま(笑)、伸びちゃう衣類のみ個別の引き出し(長めのカゴ)へ。
アイロンも24時間使用O.K.な部屋なら”ご自由にどうぞ”ですね。
便利で家族のみの”コインランドリー”兼”ウォークインクローゼット”のイメージで。
…私も欲しくなってきました☆(^-^)ゞ
サヴァラン Post author
くるりんさま こんばんは。
おしゃべりに加わってくださってありがとうございます!
>その状態で畳まずよれよれしわしわになっていてもおそらく気にしない
↑この図
見えます。見えます。
かくなる上は「懐柔作戦」を目論みます。
1.まずは何を差し置いても「ランドリールーム兼クロゼットルーム」を作る!!!
2.その特設ルームで歌い踊りながら衣類まわりの家事をする。
3.あんまり楽しそうなので家族がつられて家事に加わる。
4.よしんば誰もつられなくても、音響など充実させて一人で大いに楽しむ。
ドリームオブランドリールーム
妄想はますます膨らみます(笑)