ああ、ハンドメイド。知性と感性のあいだ。
たろう 学校の階段から転げ落ちて捻挫。いろいろ無理がきているのかも。でも、なんとかしのぐしかない。
保健室から外科に向かう車中で「ねー、たろう。自分で疲れてると思う?」と聞いてみる。
「ううん。ぜんぜん!夏におかあさんとバトルしてた頃の方が疲れてた。今はた~っぷり寝てるしね♪」
たしかに。たしかに。いつもお布団の中で気持ちよさそうに寝てるよね。
外科、そしてドラッグストア。数時間の間にお知り合いのママに何人も会う。それぞれお揃いのユニフォームを着てきびきび働いていらっしゃる。
ユニフォーム。きびきび。どちらもまぶしい。
ユニフォームといえば。ハラミさんが「これ、入るかしら?」で、向田邦子さんの「勝負服」を紹介されていた。
そうだ!そうだ!向田さんの勝負服!
原稿に向かわれるとき、向田さんは「勝負服」をお召しになったという。
立ち襟で肩ヨークがたっぷりとられ、大きなポケットがふたつある「勝負服」の写真は方々で見た記憶がある。『眠る盃』にはたしか「勝負服」というタイトルのエッセイも編まれていた。
落ち感のきれいないかにも着心地よさそうな「勝負服」は、ご友人の植田いつ子さんにお頼みになって、同じデザインの生地違いを何枚もお持ちだったようだ。
緊張感と開放感と。両方を兼ね備えた「勝負服」は、時にはペンの代わりに買い物かごを手に。お住いの近くの青山の魚屋さんやお気に入りの和菓子屋さんへお出掛けになったときのお写真など拝見するとなんとも言い難いよい風情だ。
先週のメルマガとわたしのこの駄文のあとで、読者のTさんがメールをくださった。楽しいおしゃれ談義のメールにはTさんがお作りになったというベストのお写真が貼付されていた。
思わずわ~っと声が出た。
たまたま向田さんのツイードのジャンパースカートのことを思い出していた。Tさんのお写真のベストは、わたしの記憶の中の向田さんのジャンパースカートに風合いが似ていた。
Tさんのベストはリバーシブル。表地も裏地ももともとはお姉様のお洋服だったとおっしゃる。ボタンや打ち合わせのないシンプルなデザインがきちんとした中にもくつろいだ雰囲気で、生地の良さと作り手のTさんのきめ細やかな優しさが伝わってくる。
PCの写真に顔をくっつけてしばし陶然とする。
「このベストにケーブルニットとデニムのボトムはどうかな?」
Tさんのメールの文字に、思わずうん!うん!と大きく縦に首を振る。
そういえば、ユキ・パリスさんも、叔母様譲りのツイードのジャケットを少しだけお直しされたり、ご自分の黒×白のチェックのスカートを黒×ブルーグレーに染め直され、同時に仕立て直した余り布をスカートとお揃いのストールにされているのがとてもとても素敵だったなぁ。。。
あ。先週のメルマガでメンバーのプリ子さんが、水洗いして縮ませてしまったミナペルホネンのスカートの一部を使って新しいワンピースをお仕立てしたっていうワクワクするようなおはなしも聞いたぞ。
ああ、なんだろう。この高揚感は。
そして、なんだろう。
ひとさまのハンドメイドや、ひとさまのおしゃれの工夫を見たり聞いたりするときのこのワクワクの源は。
疾走感、かも知れないな、と思う。
ハンドメイドそのものはとても静かなたたずまいだけれど、このアイディアを思いつかれたときの作り手のはやるようなワクワクした感じが、ハンドメイドとは縁のないわたしにも伝わってくる気がする。
一瞬の閃きとそれをかたちにするまでの静かな思いと。。。
ちょっと、たろう。「一瞬の閃きとそれをかたちにするまでの静かな思い」を実現する経験が、きみもこれからたくさんできるといいねぇ。
それよりたろう。お願いだからもう、階段から転げ落ちたり、車にぶつかったりというのはやめておいてね!
T
たろうくん、捻挫ですんで幸いでした。
どこのお家でも、風邪をひかないように、怪我をしないように、毎日気遣いつつ過ごされている事と存じますが、受験生を抱えるご家庭はなおさら。
でも、冬を越せば必ず春は来ますので(^^)
ハイセンスでスタイルのある向田邦子さん、ユキ パリスさんのお話と共にご紹介いただき、たいへん恐縮しております(汗)
メルマガでのプリ子さんのリフォームのお話で思い出し、ああそうそうとメールを差し上げました。
少しベストの話をさせて頂きますと、
表地も裏地も70年代の服からとりました。表地は、これもツイードというのでしょうか、凝った織りのネップ生地です。
製作は20年程前です。仲良しの幼稚園のママ友が、型紙作りから教えてくれました。
袋物やパッチワークなど作り、布と針と糸を持つ事が多い時期でしたので、実家の古着の中から、これは!と抜き出したと記憶しています。
今回取り上げて頂き、針仕事を楽しみとして復活させるのも良いかなと思いました。
フェイスブックではキャッチにも使って頂いたようで、本当にありがとうございました。
テレジア
タロウくん、捻挫 その後いかがでしょう?快方に向かわれているのでしょうね。
二番目の娘 骨格がおかしいらしく、足の膝が本当は曲がってはいけない方向へ曲がるので、時々くじいたようになり、学校までの送迎をおおせつかることがあります。
骨格のことなので(おそらく、家の宿六の遺伝子でそうなったと私は感じています)気をつけようもなく、
痛みが治まるまで2週間ほど 学校まで朝夕往復です。
ハンドメイド。私の母は洋服を縫えました。リフォームということはあまりしませんでしたが、技術はありました。夫の母も何でもできます。
その下の世代の私。とにかく裁縫が苦手です。出来る人の傍にいたにも関わらず、できません。
やる気にもならない。
人様の作品を見たり、そういうお話を伺ったりすると、すごい。とは思うのですけど、自分で展開できない。
わくわくの感性は忘れずにいたいのですけど。
サヴァラン Post author
Tさま
お返事が遅くて申し訳ありません。
メールとお写真
ほんとうにありがとうございました。
ネップという織物の名前
わたしは知りませんでしたので、少しググってみました。
ファッション用語に疎いのは
自分がファッションから縁遠くなったせいなのか
もともと「洋裁」に才がなく
そちらの方向からの知識が欠如しているからなのか
どちらなのかしらと思ったりします。
拝見させていただいたベスト
20年ほど前のものと伺って2重の驚きです。
繊細で丁寧なお仕事は
時間の経過をまったく感じさせません。
ベストとベストマッチのセーターは
もうお仕度が整いましたでしょうか?
それともこれからのお楽しみかな?
冬の時間の楽しみ方
針仕事はほんとうにいいな~と
わたしも今考え中です。
サヴァラン Post author
テレジアさん
コメントありがとうございます。
たろうの捻挫はおかげさまでたいしたことはありませんでした。
でも、あれからすっかり学校への送迎が定着してしまいました。
(大げんかした日は除きます)
普段なら洗濯機の前にいるような時間に
手短に簡単なお化粧などして
「朝の町」へ出ることは
これでなかなか気分のいいものだと思ったりもします。
テレジアさんは お嬢さんの送迎に
どんなことをお感じでしょうか?伺ってみたい気もします。
洋裁。お裁縫。
そうでした。そうでした。
テレジアさんのお母様方はお裁縫がお得意と伺ったのでした。
できるひとのそばにいると却ってやらないということ。
わたしもいろいろ思い当ります。
わたしもお裁縫がダメですし、お料理だって上手とはとても言えません^^
それでもわたしも
ささやかな「ワクワク」を手探りしたいことは
テレジアさんと同じです。
テレジア
娘の送迎にどんなことを感じるか?と書いてくださったので、少し書いてみます。
上の娘のときは、こちらが若かったこともあり、とても面倒でした。
今の送迎は、少し違います。こちらの寿命がだんだんと短くなってきていることもあり、
後何回できるかな などと考えます。
できる 喜び を感じているというのが一番近いでしょうね。
サヴァラン Post author
テレジアさん
ああ、そういうことも考えますね。
この年になって
おまけにこんな季節にもなってくると。
淋しいというより
喜びと思う方に
コインを裏返すようにしようと思います。