ネズミの復讐
“ラジオで時代をつなぐ”を合言葉に、県内の70歳以上の方に電話インタビューしたラジオ企画から、今回も人生の大先輩の言葉をご紹介します。
昭和3年生まれの男性。現役時代は小学校教員でした。お話が印象的だったので、放送後にご自宅を訪ねました。もう10年以上も前のことです。当時とても若々しく、奥様と旅行を楽しんだり、畑仕事に精を出したりしておられました。仕事の後のビールは最高!ともおっしゃっていました。
・・・「旧制中学2年の時でしたね。当時は配給切符制度といって、物がない時代でしてね。衣料切符というのが1人百点くらいだったと思うんですが、それでは服は買えないわけです。私が持っていたのは学校の制服一着だけでした。」
「ある時、ネズミが罠にかかりましてね。それで道端の猫に、たまをとらせるわけです。猫って紐ひっぱったら、たまとるでしょ。ぱっと押さえたり、持ち上げたり。」
「ネズミを罠から出して。すると猫が走って行って、ネズミをぱっと押さえて。弱らすために、いっぺん噛みましたね。私もちょっかい出すんです。ネズミを持ち上げてポーンと放ったりしてね。ネズミが走って逃げれば、猫が追っかけていって、また私がポーンと投げちゃあねえ、すっごいおもしろいわけです。」
「猫が食べそうになれば、ネズミを離してやるわけです。10分くらい続けたらネズミはヘトヘトになって、死にそうで、動くのもどうかな…という状態だったんですが、とにかくそうやって家の近くまで遊んでいきました。」
「そうしているうちに、猫は油断したのか、知らん顔して横を向いて。その隙に、ネズミが家の中に逃げ込んでしまいました!まあ、あのまま死んでしまうだろうと思いましたけど。」
「当時、私は叔母の家に下宿して、旧制中学に通っておったんですが、一晩寝て朝起きてみると、私の制服がズタズタになっているんです!姉の服は、横に並んでかけているのに、ぜんぜんどうもないんです。匂いでわかったんでしょう。もう、ズタズタにされまして。ネズミの復讐です。」
「他に服はないんです。だから学校に行くこともできません。もう一着服があったらなあ~思うて、ほんと・・・。戦争に負けるということは考えていませんでした。早く戦争に勝って、そしてなんでも自由に買えるような時代になればいいがなあ、痛切に思いました。」・・・