帰って来たゾロメ女の逆襲㉓ ~【濡れ衣】ジャンルはじめました。「ジャッキーがんばれ」の巻~
どんなに寒くても着用したくない衣、それは濡れ衣です。
濡れ衣というか、あらぬ疑いを扱った世界に弱いです。
がしっと「冤罪!」と言ってしまうと今ひとつアレなのですが(どれ?)、その系統の小説や映画へ感情移入しやすく、身に覚えのない罪に一緒に身悶えして、気がつくとぐったり疲労困憊していることもしばしばです。
・・文字どおり弱い。
でも「好き」という意味での弱い、でもあるのです。
そんなわけで【濡れ衣)】というジャンルをたった今立ち上げました。
以後、よろしくお願い致します(笑)。
まず浮かんだのはメジャーどころ、伊坂幸太郎の『ゴールデンスランバー』です。
濡れ衣のスケールのデカさ、こっちの身悶え度、はピカイチですし、伏線も人物の交錯っぷりも多重構造で本当に面白かったです。
ポイントポイントに理解者がいて、彼らが放つ珠玉の「わかってる」言葉や行動に溜飲下がりまくりというか、カタルシス感じまくりというか、とにかく堪能しました。
村上春樹のあの『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』も濡れ衣小説と言えると思います。
村上春樹の小説って、川島なお美の体内ワイン比率と同じくらい(古いネタ)、パラレルワールドと濡れ衣で出来ているんじゃないでしょうか。
濡れ衣のせいで孤独感にからめとられたパラレルワールドの「僕」がとっかえひっかえ出てくるような気が・・。
いえ、決して悪口ではありません。
山本周五郎の短編『四日のあやめ』もぜひこのジャンルに入れたいです。
五大主税介という武士のもとにある日喧嘩の助太刀の依頼が来るのですが、「私闘は武士道に外れたことと」と思った妻が、夫に知らせず使者を追い返してしまいます。
そのために主税介は臆病者、裏切り者の烙印を押され、非難と嘲笑を浴びることになり、さらに、私闘を演じた双方が和解をしたため、ますます窮地に追いやられます。
そのような状況で、主税介そして妻はどう思い、どうするのか。
・・シビれました。
次は【濡れ衣】映画部門ですが、今浮かぶだけでも『逃亡者』や『ショーシャンクの空に』や『グリーンマイル』、『シザーハンズ』に『ダーティハリー』『シベールの日曜日』などなど数多くあり、まだいくらでも出てきそう。
ある意味、【濡れ衣】ものは映画の本流ではないかと思うほどです。
その中から今回プッシュするのはジャッキー・チェンの『ポリス・ストーリー/香港国際警察』です。
この映画でのジャッキーの悲壮感ったらありません。
そして、個人的にちょっとした思い出が。
☆彡☆彡☆彡
私の夫は長いこと空手をやっていたのですが、1990年代前半、よく道場の後輩の大学生が我が家に遊びに来ていました。
呼んでもいないのに押しかけて来ては月亭家の食料を根こそぎ食い尽くし、泊まって行くこともよくあって、私は時折
「アタシは相撲部屋のおかみさんかっ!」
と思ったものでした。
ある年の正月など、大晦日から居座った彼らに家の食べ物をあらかた放出し、元日の朝にはなけなしの餅でお雑煮も作ったのに、その直後、全員で初詣がてら外に出、まずはお茶でも飲もうとファミレスに入ったところ、あろうことか彼らは「ホットケーキ!」「自分はハンバーグ!」と主食(?)を注文したのです。
あぜん。
「さっき食べた雑煮を返せ!」
という思いで憮然としていたら、
「先輩の奥さん!眉間にシワが寄ってますよ」
「腹が減ってるんじゃないすか?」
「コーヒーだけでいいんすか?」
「ホットケーキ少し食べますか?」
「オレのハンバーグもいいっすよ」
「・・・・要らないよっ!!」
あ、話が逸れました。
彼らはとにかくブルース・リーとジャッキー・チェンが好きで、我が家でその映画鑑賞会になることもしょっちゅうでした。
その日も夫と私を含め、確か総勢5人で、この『ポリス・ストーリー』を見ていました。
話は佳境に入り、いよいよ濡れ衣を着せられたジャッキーの逆襲が始まりました。
身体を張りまくった危険なアクション、汗にぎるシーンの連続。
と、いちばん画面に近い場所で見ていたハセガワくん(福岡県出身。当時21才)がこうつぶやいたのです。
「ジャッキーがんばれ」
4人は顔を見合わせました。
「聞いた?」「聞いたよね」と目配せし合う4人。
ハセガワくん、完全に完璧に入ってる。
ふと手を見れば、こぶしをがっつり握ってるハセガワ。
爆笑する4人。
ハッとするハセガワ。
自分が今いる場所、つぶやいたせりふに気づき、真っ赤になったのでした。
ちなみに、そのときハセガワくんを含め我々がこの映画を見た回数は個別鑑賞も入れて、それぞれ10回は下らなかったと思います。
ハセガワくん、今でもあんなに純粋な気持ちで『ポリス・ストーリー』を見てるだろうか。
見ててくれるといいなあ。
by月亭つまみ
こんなブログもやってます♪→→「チチカカ湖でひと泳ぎ」
ハラミ
こんにちは!
濡れ衣ジャンル、濡れ衣を晴らす系(どんな系だ)好きです。『ショーシャンクの空に』。コツコツやって日の目を見るというのがたまりません!(そう言う意味では「フランダースの犬」は悲しすぎます…)
濡れ衣とは関係ないのですが、夫が学生時代「少年サンデー」を教室で回し読みしていて、友人A君が「こりゃ〜、達也野球やるで…」とつぶやいたそうで…。(『タッチ』が人気だった頃ですね)今でも話すほど衝撃(笑撃)だったようです。その場の皆目を合わせたものの笑いはこらえたようですが…。皆が当然と思っていることをつい口に出しちゃう人、純粋でとてもいい人ですよね。たぶん(^^)
つまみ Post author
ハラミさん、こんにちは(^O^)
そうそう。濡れ衣モノも、ちゃんと晴らす系じゃないと、もやもやの行き場がなくて困ります。
『ショーシャンクの空に』はよかったですよねえ。
>「こりゃ〜、達也野球やるで…」
ウケました!A君、きっと素敵な大人になってますね。
そういえば、昔友達が映画『スーパーマン』を見に行ったとき、終盤、近くに座っていた見ず知らずの人が「そうか。クラーク・ケントがスーパーマンだったのか」とつぶやくのを聞いたそうです。
冗談なのか本気なのか判断ができない口調だった、と言ってたことを思い出しました。
私は当時「それはあざとい!」と思いましたが、意外と本気で言っていたのかなあ。
だとしたら申し訳ない、と今思いました(^_^;)