ゾロメ日記㉑ 人生は、能町みね子と浜田省吾・・ではない・・けど。
◆9月某日 能町みね子
能町みね子著『ひとりごはんの背中』を読む。最近、やたら能町さん贔屓で自分でもどうかと思うが、その存在を知ったのが最近なので、畳み掛けるように、軌跡を遡っているのであった。
「市井のひとりぐらしの方々のおうちに上がりこみ、料理をいただいてお話を聞く」というざっくりした趣旨のルポ。週刊漫画誌『モーニング』での連載とのこと。
今回の書籍化で登場するのは総勢37人で、「よくぞここまで!?」と思うほどバラエティに富んだメンツ・暮らし・メニューだ。圧倒されたり、呆れ返ったり、感心したり、心配したりと、読中感が定まらないことこの上なし。定まっているのは「人んちを覗くのはなんておもしろいんだ」という部分のみ!?
人選は明らかにテキトーで、市井じゃない著名人(私は誰ひとり知らなかったが)もちょいちょい入っているが、こぞって変人臭がする。いくら能町さんのフィルターを通した文章と漫画でプレゼンされているという独自性を加味しても、人選はこの臭覚かと思うほど。ちなみに、人選に能町さんは全く絡んでいないとのこと。
「一見まっとうそうでも人はみな変わり者である。人間だもの」とつぶやきたくなり、その事実には意外と励まされることに気づく。
◆9月某日 浜田省吾
今週末、9/12(土)のNHK「SONGS」は浜田省吾だそうだ。
1980年代、浜田省吾とRCサクセションのライブによく行った。浜田省吾は、知人が彼の事務所に勤めていたので、チケットをとってもらったりもした。あの頃は、自分も若かったが、ハマショーも若く、躍動感に溢れていた。声も好みだった。
ハマショーの世界は、したり顔の難解さはなくストレートだった。ロックンロールであれバラードであれ、自分でも歯止めが効かない疾走感に酔っているような戸惑っているような感じで、私にはそこが魅力だった。でもその魅力に気づいたのは、実は生のステージを観てからだった気がする。時に陳腐に聴こえる歌詞も(あ、ごめんなさい)、ライブだと腑に落ちてグッときた。
1985年の読売ランドEASTのライブは特によかった。開演と同時に、それまで降っていた雨が上がり、演者も観客も特別な何かに祝福されているような気持ちになり、それはエンディングまで続いた。1983年の渋公のRCサクセション、1991年のNHKホールのブルーハーツと共に、【20世紀に自分が行った3大よかったライブ】(←ネーミングがひどすぎる)だ。
その頃、浜田省吾氏と言葉を交わしかけたことがある。上述の知人の結婚式の二次会で。会場は、今はなきハーゲンダッツ青山店の近くのカフェバー(!)だった。自分の事務所のスタッフ同士の結婚だったこともあってか、浜田氏は結婚式と二次会両方に出席した。
二次会での彼は、ときどきトレードマークのサングラスを外したりしながら(見ましたよ、素顔)、フランクかつ控えめに二人を祝っていた。あいさつとか乾杯の音頭はもちろん、自分のイスから一度も立ち上がることすらなかった気がする。その佇まいは「今日の主役は自分じゃないのだからと遠慮している」というより、根っからそういう方が心地よいと思っている人っぽかった。誰かの話に、うつむいてひとりクスッと笑う横顔を見たときそう感じた。
宴が終わり、わりと先にお店の外に出た私がドア付近で知人達を待っていると、浜田氏が出てきた。彼はそこで知り合いと二言三言会話すると、立ち去るべく私の前に差し掛かった。なんだか、今日の「浜田省吾さん」になら気安く話しかけられそうな気が私はした。
でもなんて言ったらいいのか、言いたいのか、わからなかった。「ファンです」「頑張ってください」「応援してます」の類ではないことだけは確かだった。
で、自分の口から咄嗟に出たのは、妙に元気な「さようなら!」だった。
彼は立ち止まって、きちんと私の顔を見て(サングラス越しだけど)明るく「さようなら」と返してくれた。瞬時に「芸能人モード」に切り替えて対応されるかと思ったが、不意打ちだったからか、はたまた私の思い込みとその後の記憶の無意識な改竄が発生しているのか、それは全くなかった。フラットだった。でも、こちらのトーンが悪目立ちしない程度には明るい、とても心地よい「さようなら」だった。
「SONGS」を見たら、自分は今の浜田省吾に何を感じるのだろう。それが楽しみなような、ちょっと怖いような気がする。
※「帰って来たゾロメ女の逆襲(ゾロメ日記)」は、今月から第3木曜日はお休みをいただきます。次回は9月24日の予定です。
by月亭つまみ
友人との掛け合いブログです。第135回は「ちまちましたこと。」です。→→「チチカカ湖でひと泳ぎ」
はしーば
文面から、つまみさんのハートのキュンキュンと鳴る音が聞こえてきそうです。
つまみさんが垣間見た彼の素顔は、リアルな彼自身だったんでしょうね。
彼が全盛のころヨーロピアン・ハードロック少女だった私は、サングラスのビジュアルくらいしか知りませんでしたが、今日のお話を伺って、すっごくあったかい気持ちになりました。
つまみ Post author
はしーばさん、おはようございます。
なんてうれしいコメントなんだろうと思いました!
長い年月が経って、いろいろ美化したり、自分に都合よく解釈したりしていたりするところもあるのでしょうが、胸がときめいたいい思い出なので、そう言っていただけて報われました。
ん?報われるってなんかヘンですね(^_^;)
私も、はしーばさんの言葉ですっごくあったかい気持ちになりました。
アメちゃん
おはようございます!
浜田省吾さん。
姉がダビング(!)して聴いていた浜田省吾さんのカセットテープ(!!)を
なぜか私が持っていて、時々聴いてましたよ。
インディアンサマーでしたっけ?
好きでした。
つまみさんのお話の浜田省吾さんのお人柄、なんかうなづけます。
余談ですが。。。
はしーばさんの「ヨーロピアンハードロック少女だった・・・」、気になります。
私もアイアンメイデンとか好きなので。
えてして、ハードな曲を演奏する人って
もの静かだったり、柔らかい人が多いような気がしますね。
uematsu
ハマショーは「Down by the Mainstreet」が大好きでした。
まるっきり日本語のイントネーションで、
♩だうんば〜い、だうんばいざ、めいんすとり〜と〜
と歌うハマショーがなぜか大好きでした。
つまみ Post author
アメちゃんさん、こんにちは。
インディアンサマー!渋いところをお出しになりますね。
「MIND SCREEN」という、わりと初期のアルバムに入っていた曲ですねえ。
私も「ラジカセ」で聴いていました。
はしーばさんのおっしゃる「ヨーロピアンハードロック」とアイアン・メイデン、結びつきませんでしたが、そうですねえ。
ヨーロピアンという言葉に幻惑され、ハードの部分を読み落としていた感じです。
ハードな曲を演奏する人って・・のところ、うなづける気がします。
つまみ Post author
おおっ!uematsuさん!
私も、ハマショーの1枚といえば「DOWN BY THE MAINSTREET」です。
ちょうどこのアルバムの頃、よくライブに行っていた、というのもありますが。
確かに、ひらがな表記が似合う英語でしたねー。
「ベッドでどんぺりによ~ん♪」とか「ダンス!きーぷんおん、だんし~んぐ♪」とか。
そういえば、「寂れた映画館とバーが5、6軒」を「寂れた映画館とバーガーコロッケ」と聴きまつがいをしていたのも、このアルバムの「MONEY」でした(^_^;)
あ、DOWN BY THE MAINSTREET、聴こうっと!
はしーば
ヨーロピアンハードロックを話題にしていただいたので、再登場してみました(笑
私が青春を捧げたのは、マイケル・シェンカー(北ドイツ、ハノーファー出身)でした。
フライングVというV字型のギターをオマタに挟み、プラチナブロンドを揺らし苦悶の表情でギターを掻き鳴らす姿に夢中になりました。
つまみさん、ハマショーさんとは全く関係なくて申し訳ありません。
当時、周りに理解者がほとんどいなかったので、今回図らずもマイケル(ジャクソン じゃない)のことを思い出すきっかけを作っていただいたようで、嬉しかったです。
ありがとうございました。
つまみ Post author
はしーばさん、またいらして下さり、ありがとうございます。
マイケル・シェンカー、思わず検索しました。
スコーピオンズ、は聞いたことがあります!
長兄が口にしていたような気がします。
はしーばさんは早くから、音楽で世界を駆け巡っていたのだなあ。
自分の書いたことがきっかけで、読んだ人が、それぞれの引き出しにしまってあったかけがえのないものとか気持ちを思い出すとしたら、こんなにうれしいことはありません。
そういう、「読んだ人の数だけ、書いた側からは予想もできない気持ちが発生しているかもしれない」と思えることって、励みであり醍醐味です。
なあんて、すごく真面目くさった書き方になってしまいましたが、本当にありがとうございます。
アメちゃん
おはようございます。
はしーばさん、ありがとうございます!!
(私も再登場でゴメンナサイm(__)m。)
マイケルシェンカー!
私はファンではないですけど、中学時代に友人がマイケルシェンカーのファンで
部屋にあそびにいったら、彼の大きなポスターが貼られていました!
フライングVですね〜。なつかしいです。
私は仕事中、iTUNESで音楽を聴いてるんですが
マイケルシェンカーグループの「Anytime」が好きです。
スコーピオンズも好きな曲がいっぱいあります!
(「Send me an angle 」「Wind of change 」「Believe in Love」とか大好き)
つまみさんの記事を読んでから、なつかしくて
インディアンサマーをなんども聴いています。
なんだか切ない曲で、涙が出ますが
uematsuさんが指摘するように
「インデアンサーマー」とカタカナ英語なので、ちょっと笑いました。
つまみ Post author
わーい!
アメちゃんさんも再登場ありがとうございます!
こういう風に、自分の書いた記事がきっかけで、読んでくださった方同士の話が弾むって、私の理想なのです。
うれしいうれしい♥
私も「インディアンサマー」聴きましたよ~。
ちょっと雅夢の「愛はかげろう」っぽい世界ですね。
バラードといえばこういう曲調、という時代だったのかも。
インディアンじゃなく、インデアンとゆってますね(^O^)