ゾロメ日記㉞ 人生はちょっとした疑問符だ
◆1月21日 単純過ぎ?
小学校の1年生2クラスに『としょかんライオン』を読む。2時間目と6時間目。
読み聞かせに関しては、個人的にはいろいろな気持ちがあるが、「業務の一環」というスタンスでやっている。何を読むか(何を読まないか)に、自分の気持ちは漏れ出るだろうが、私の場合、教条主義的だったり、大人ウケする絵本より、ナンセンス系を選ぶことが多い気がする。
そういう意味では、『としょかんライオン』は選ばないタイプかもしれない。ただただ、としょかんにライオンがいたらいいなあ、寄りかかって本を読みたいなあ、と思って読むことにした。
いつも選ぶ読み聞かせの本より長めだったので、1クラスだけにしようかと思っていたのだが、2時間目のクラスがあまりにも真剣に聞いてくれたので、調子に乗って6時間目も読んだ。6時間目のクラスは自由人が多く、図書室では常にざわざわしているのだが、読んでいる途中、どんどん静かになった。
6時間目が終わったら、朝よりこの絵本が好きになっていた。・・単純過ぎ?
◆1月24日 どんどん臆病になってない?なんで?
我が家に計7人の来客。ここ10年ぐらいの最高記録かも。内訳は、私の友人2名、親戚5名。いちばん楽しそうだったのは夫。友人は、夫のお気に入りの2人なのだ。
一方、猫はパニック。夜まで落ち着かず、びくびくしながら家中を偵察し、夜中も騒いで鳴いた。そんなに怖かったのか。っていうか、うちのねこ、どんどん臆病になってない?なんで?
◆1月25日 どこを見て歩いていたんだろ?
秋葉原の漢方薬局へ行く。
秋葉原に行くときに利用するのは岩本町という駅。岩本町から秋葉原方面へは、昭和通り(上を首都高が走っている)に沿ってしばらく歩くのだが、昭和通り(国道4号線)という標識を発見し、ハッとする。
そうか。この道は、福島に、最終的には青森まで続いているのだ。子どもの頃、福島市に住んでいたので、国道4号線にはなじみがあって、言葉の響き自体がなつかしい。そして、新幹線や高速道路とは違って、国道だと直に繋がっている感覚が強い。4号線を辿っていくと、子どもの頃の自分(の住む世界)に行けるような気さえする。
それにしても、何十回、下手すりゃ百回以上、通っている秋葉原の昭和通りなのに、標識に全く気づかなかった。今まで、どこを見て歩いていたんだろ?
◆最近、読んだ本
『つかこうへい正伝 1968-1982』 長谷川康夫 著
1980年、友人に誘われて紀伊國屋ホールで初めて「熱海殺人事件」を見た。衝撃だった。世の中に、こんな世界が、そしてそれを創り出す人たちが、存在することに、嫉妬に近い羨望を感じ、1982年の劇団解散まで夢中で見続けた。同じ演目を日を開けずに何度も見たりした。当日券を求め、始発で新宿に行ったこともあった。熱に浮かされていたのかもしれない。
中でも、「蒲田行進曲」の初演は忘れられない。幕が上がったら、舞台に見慣れない顔があった。柄本明だった。彼の演じるヤスは、その後の平田満より、粘っこくて性悪でゲスかった。
そうか、ヤスは、この本の著者である長谷川康夫のヤスだったのか。そして彼が、つかエッセイでいつもぼろかす、くそみそに書かれていたことに、驚愕の理由があったことを知る。
紀伊國屋ホールのにおいが忘れられない。正確に言うと、つかこうへいの舞台のときの紀伊國屋ホールのにおい、だ。その後、他の劇団の公演なども見に行ったが、つかこうへいのときよりにおいがしない気がして、何度も鼻をくんくんさせてしまった。
今、思う。間に合ってよかった。「劇団つかこうへい事務所」が活動中に東京に出てくることができてよかった。あの、終わってもしばらく立ち上がれない、顔が紅潮しているのに手足がやけに冷たいような、言いたいことが山のようにあるのになにひとつ言葉が出てこない、心身が漏れなく相反するような特異な感覚を、ハタチの頃に何度も味わうことができてよかった。
この本は、ものすごく熱くて、同時に肝が冷えるほどクールな力作だ。野心作、だとすら思う。つかこうへいが亡くなったと知ったときにはさほど感じなかった濃い感情に、今やられている。それは、胸が締め付けられるような、圧倒的なせつなさを伴った郷愁と、霊気めいた磁力みたいなもの。そのせいで自分は、もう読み終わって何日も経っているのに、まだあの頃から完全に戻って来られないままだ。
by 月亭つまみ
まゆぽさんとの掛け合いブログです。→→「チチカカ湖でひと泳ぎ」
uematsu
大阪の小劇場の聖地と言われたオレンジルームという小さな小屋で、「熱海殺人事件」を見ました。名もない劇団のわりと下手な「熱海殺人事件」でした。それでも、作者、つかこうへいがすごい人だということはわかりました。
あれは、80年代の最初のころだったと思う。映画化される前の話。だから、下手劇団でも、つかこうへいの演目をやると聞くと出かけていった覚えがあります。
いや、懐かしい。
つまみ Post author
uematsuさん、こんばんは。
そうでしたか。
私は幸か不幸か、最初にお金を払って見た演劇がつかこうへいで、他の劇団のつかこうへいモノは見たことがありません。
吉田日出子さんが好きだったので自由劇場には通いましたが、当時は、他の劇団はあまり見ていません。
演劇が好きとうより、つかこうへい劇団が好き、だったような気がします。
三浦洋一の「熱海殺人事件」には間に合いませんでしたが、風間杜夫のエキセントリックな木村伝兵衛にKOされ、偶然、紀伊國屋ホールのエレベーターで風間杜夫さんと一緒になり、舞台の上との落差に、更にKOされたものでした。
いや、本当に懐かしいです。
アメちゃん
つまみさん、おはようございます。
イノダコーヒーって、東京にもあるんですね!
京都だけかとおもっていました。
私は三条店に何度か行ったことがあるんですけど
お店の奥に、大きなドーナツ状のカウンターがあって
そのドーナツの内側で、真っ白な上着を着た男の人達が
静かにキビキビと、コーヒーを淹れたりサンドイッチを作ったりしてるんです。
(東京もそんな感じですか?)
その端整な雰囲気が、いかにも敷居の高い京都らしいなぁと思いました。
風間杜夫さん、すてきですよね〜。
つまみさんがKOされるのわかります。私もぜったいKOですよ。
私は舞台は観てないのですが
松本清張原作のドラマに出てくる風間杜夫さんが好きです。
気弱な男の役とかとっても似合うので、ついハラハラしてしまいます。
つまみ Post author
アメちゃんさん、おはようございます。
イノダコーヒー、大丸東京店の8Fにあります。
そのような由緒ある有名店とは知らず、入りました。
このサイトのメンバーにもイノダコーヒーのファンが多く、おおっ!そんな存在であったのか、と驚きましたが、アメちゃんさんにも印象的なお店だったのですね。
東京のお店も、厨房がわりとよく見える造りです。
そして、渋い暖簾がかかっています。
中は、やはりきびきびと男の人たちが動き回ってしました。
プライドと矜持を感じるお店でした(後付けの印象?)
とにかく当時の風間杜夫は色っぽかったです。
こう言ってはナンですが、他の劇団員に比べて顔が整っていて、数段華がありました。
平田満の、あの一般人的容貌容姿が舞台の上で憑依し豹変するのも、ものすごく魅力的でしたけれど。
その後の風間杜夫、スチュワーデス物語には反応できませんでしたが、ここ数年、またいいなあと思うようになりました(^_^;)
気弱な役、いいですよねえ。
みゆ
私の住む町にも国道4号線通っています。どこへ行くにも4号線ははずせない!
繋がっている。つまみさんとも!な~んか楽しくなってきた。
いつも使っている当たり前の道なのにね*
つまみ Post author
みゆさん!
それをお聞きし、私もな~んか楽しくなってきました。
空想でも妄想でも、当たり前のことの視点を変えるって、ルーティンを暮らしていくコツですよねえ。
VIVA!ルート4チーム!?
カリーナ
つまみさん
コメントを拝見しても、この記事に対する反応ポイントが違っていて面白いですねえ。
そして植松さん!オレンジルーム!!阪急ファイブ(いまのHEP)の上ですね!そうでした。80年代の大阪の小劇場の中心地でした。そういえば、劇団新感線も最初は「つかこうへい」の戯曲を主に上演していたと思います。ほんと当時は猫も杓子も熱海殺人事件で、そして不思議なことに、それなりにカタチになったのです。戯曲のチカラがすごかったんですね。そして、みんな「ちゃんと理解していた」んだと思います。
しかしなんですとーーー??
>風間杜夫のエキセントリックな木村伝兵衛にKOされ、偶然、紀伊國屋ホールのエレベーターで風間杜夫さんと一緒になり、舞台の上との落差に、更にKOされたものでした。
うらやましすぎる。ああ。伝兵衛すごかっただろうなあ。
そして、わたしもギャップ萌えしたい。
つまみ Post author
おー!カリーナさん!!
そうなんです。
いろんなところに反応していただいて、うれしいです。
みんなが同じ方向を向いていないっていいですね。
脈絡のない日記ならでは、でしょうか(^_^;)
オレンジルーム、東京でいえば、渋谷のジァンジァンみたいな感じなのかなあ。
それとも、本多劇場?
そういえば、本多劇場のこけら落としで唐十郎を初めて見ました。
確認はしてないんですが、つかこうへい劇団が解散する頃で、清水紘治とか緑魔子が出てました。
岩崎宏美の「すみれ色の涙」がとても印象的に使われていて、でもなんだかすっごく怖かったんですよね。
日暮里の坂とか、トイレのセットとかも含めて。
なので、私の中では、怖い声が入っていると話題になった「万華鏡」より、岩崎宏美の曲では、こっちの方がゾッとしてしまいます、今でも。
熱海殺人事件は、つかさんの中では話がシンプルだし、登場人物が少ないので、とっつきやすかったのかもしれませんね。
劇中劇という意味で、一人何役もありますけど。
「つかこうへい正伝」の中で、いちばんよくできた芝居は「いつも心に太陽を」だと思う、と書かれていて、ちょっと意外でした。
私は、好きなのは蒲田ですが、「初級革命講座 飛龍伝」がいちばん傑作だと思っていました。
熱海の風間杜夫、私にはすごく良かったのですが、周囲が「やっぱり伝兵衛は三浦洋一だよねえ」とか言っていて、ちょっと悔しかった記憶があります。
つかさんだけではないですが、舞台を見に行くと、演劇関係者だけでなく、とにかく芸能人をよく見かけました。
ギャップ・ナンバーワン 風間杜夫
ギャップなし・ナンバーワン 筧利夫(parco劇場で前の席だったけれど、あのままだった)
美しかった・ナンバーワン 余貴美子(隣の席に座った。信じられないほどキレイだった)
まっ白・ナンバーワン 永作博美(parco劇場のトイレの列で私の前に並んでいた。2つのトイレが同時に空いて、「どっち行きます?」みたいなアイコンタクトをし合った)
幸せそうだった・ナンバーワン 熊谷真実(つかさんとの新婚時代、紀伊國屋ホールで当日券の人の座布団を配っていた)
あ、すみません!
コメントが異常に長くなってしまいました。