ゾロメ日記 №61 年末はライトに「懐かしの洋楽ヒットソング」劇場
◆12月某日 愛がすべて
10年前ぐらい前、杉並区阿佐谷の「ジャズストリート」という街をあげてのジャズイベントに行った。正確に言うと、それ目的で阿佐谷に行ったわけではなかった。1980年代のはじめ、結婚の前後4年間ほど住んでいた阿佐谷は、離れて何年経とうがいまだに好きな街であり続けているので、中央線に乗ると、用事がなくても降りたくなってしまうのだ。このときもそうだった。
街は活気に溢れていた。駅前の広場で、アメリカの空軍の音楽隊が演奏をしているのを見て初めて、大掛かりなイベントをやっているのだとわかった。老若男女がノリノリで聴いていて、私も末席で楽しんだ。やっぱり阿佐谷はいいなあと思った。
その後、中杉通りを青梅街道に向かってぶらぶら歩いていたら、不意にどこかでトランペットが鳴り出した。澄んだ、空に駆け上って行きそうな伸びやかな音色だった。メロディはスタイリスティックスの「愛がすべて」。
イベント本番の演奏ではなく練習のようだったが、トランペットってこんなにキレイな音色なのかと感動して、なぜかちょっと泣きそうになった。以来、この曲を聴くと澄んだ気持ちになって空を見上げたくなるし、晴れ渡った空を見るとこの曲が自分の中を駆けめぐるのを感じる。今日のような、視界がクリアな冬の空は特に。
◆12月某日 ザッツ・ザ・ウェイ
ラジオからKC&ザ・サンシャインバンドの「ザッツ・ザ・ウェイ」が流れて、すとんと腑に落ちた。これだったのか、と。
ウルフルズの「ガッツだぜ!!」がヒットした時期、聴くたびにこのタイトルと曲の雰囲気は何かに似ている、と思った。「ザッツ・ザ・ウェイ」だ!まさに頭の中の豆電球が点灯した気分。
自分で似ていると思って、長い時間を経て自力で(?)解決したのに、念のためにウィキペディアを見たら載っていた。なんかつまらない。ちなみに「ガッツだぜ!!」は1996年年間チャート36位とのこと。20年経って豆電球が点灯したことは、喜ばしいことなのか鈍すぎるのか、自分でもよくわからない。
◆12月某日 雨
7才年上の長兄が1970年頃にしょっちゅう聴いていた曲に「雨」という曲がある。歌っているのはジリオラ・チンクェッティ。当時、この難解なイタリア名も、年端のいかない小学生はむしろ楽しい呪文みたいで、何度も口の中でコロがしているうちにつるんと覚えた。今でも、たま~にこの曲を聴く機会があると、条件反射のように「ジリオラ・チンクェッティ」と口にしまう。
もうひとり、兄経由で知った難解名にエンゲルベルト・フンパーディンクがいる。今、あらためて確認すると、フンパーディンクの顔は尾崎紀世彦に似てる。尾崎紀世彦は彼の曲をカバーしているはず。やっぱり、容貌が似ているというのはカバーの重要ポイントなのかな。ドリス・デイとペギー葉山とか。
カバーはしてないだろうけど、一時期、シンディ・ローパーと戸川純って似てると思った。あと、往年のロバート・レッドフォードと加藤剛。ジェームズ・コバーンと高橋悦史。…もはや歌手ですらない。それ以前に古過ぎるかも。
兄が亡くなったとき、遺された大量のCDの中に「懐かしの洋楽ヒット」的なオムニバスもいくつかあって私がもらった。なので、今でもそれらの曲を聴くことができる。おかげで、「2010年以降にヒットした洋楽といえば?」という設問にはなにも答えられないが、1960年代後半~1980年代前半限定ならちょっとイケる…はず。
流行歌、ヒット曲ってフシギだ。ピークを過ぎるといったん色褪せるのに、長い時間をかけて自分の中で不意に蘇ったりする。しかもすごく新鮮に聴こえたりする。
もしかしたら、ヒットすればするほど、その時期はその曲をきちんと聴いていないのかもしれない。流行は「流れて行く」と書くし、曲自身も流れに乗っかって上滑りというか、どこか浮かれてしまうのではないか。
でも、多くの人を魅了した曲にはやっぱり力があって、流行っているとき、本来の力や深い思いは流行のうずに巻き込まれないように、底で沈思黙考してるのかも。そして瑞々しさもそこにあり続け、枯渇しないで、聴き手それぞれの然るべきときを待っているのかもしれない。20年でも半世紀でも。
この方式、人間にも採用できないかな。中高年になっても瑞々しさや清潔感を醸し出せる人は、若いときにどこか沈思黙考していたのかもしれない…なんちって。
★★★★★
このサイトが年末年始休みに入ってから、ゲリラ的に「いどばた。」で【2016年のベスト本】を更新します。メンバー、寄稿者の方が選ぶこの一年の一冊をどどどん!と公開!!お正月休みと来年の読書の参考にしていただけたらうれしいです。お楽しみに。
by月亭つまみ
まゆぽさんとの掛け合いブログです。→→「チチカカ湖でひと泳ぎ」
guri
うわあ、ビックリしました^^;
懐かしい曲、聞き覚えのある曲がならんで(ジリオラ・チンクエッティ、初めて動画を観てご本人を確認!)、
歌詞の内容が、外国の歌といえども昭和風味だなあと妙に感心いたしました。時代の味だったんですね。
似たものカバーっていうと、アチチアチ~の郷ひろみ(元歌はリッキー・マーティン)を思い出していましたが、
まさかそこへジェームズ・コバーンと高橋悦史が出てくるとは!!
ジェームズはワタシの永遠のアイドルでございます。悦史も似ていると思っておりました。
が、まあ、ここに同じことを思っていた方がおられたとは!?
ジェームズが歌を出していたら、悦史もカバーしたのでしょうか・・・、いやないでしょう、なくて良かったです。
最近の歌も俳優も分からないのがちと悔しいこの頃です。
つまみ Post author
guriさん、おはようございます。
こちらこそ、うわあ、ビックリしました、でございます。
そして、ご賛同いただけてうれしいです!
この広い空の下、長年、同じことを思っていた人がいるとわかるだけで、なんて楽しいのでしょう。
そして心強いです!
悦史さん、亡くなってしまいましたが、ワイルドさと繊細が共存するところがとてもセクシーでしたよねえ。
今後共、よろしくお願いいたします。
よいお年を!