ゾロメ日記 NO.74 笑(ショウ)ほど素敵な将来はない
◆8月某日 浅草東洋館発
お笑いのネタ番組好きとしては、最近の楽しみは、BS朝日で土曜日の夜に放送されている「お笑い演芸館」を見ることだ。
浅草の東洋館という劇場から、漫才や漫談だけでなく、マジック、ものまね、そして昭和の大御所たちの新旧のネタまで、長い尺でじっくり見せてくれるのがいい。客席は中高齢者層が多く(なぜ、地上波のネタ番組の客席は若い女子ばかりなのだろう)、拍手や笑い声も盛っていないので、とても見やすい。この番組で初めて知った「知る人ぞ知る」芸人も多い。
知名度の高い常連出演者も、トータルテンボスや銀シャリ、テンダラー、タイムマシーン3号、U字工事、サイクロンZなどなど個人的に麗しいラインナップだ。あ、最後のひとり、さらっと書いたけれど、知ってる人は少ないのだろうか。でも、この番組的には毎回大人気(だと思う)なので入れてみた。
これからも続いて欲しい。ただし、たまに丸ごと再放送の日があるので要注意。それと知らずに見たとき、次から次へとデジャブなので、デジャブ量産DAYかと思った。なんだ、それ。
◆8月某日 フロスト警部発
R・D・ウィングフィールドの遺作でフロスト・シリーズ最終作『フロスト始末』を読んだ。
作者は、病が発覚し、かなり進行してからこの作品を書いたようだが、フロスト警部のお下劣さ、だらしなさ、不道徳過ぎるユーモア感覚は健在…どころか、ますますエスカレートしている。事件も、今回は今まで以上に悲惨で残忍で同時多発的で、警察内のとっちらかりっぷりもハンパじゃない。
それだけじゃなく、今回は、毎度おなじみ、役立たず小者のマレット署長に加え、マレット以上の不愉快上司が着任してくるから大変だ。そして、マレットと二人三脚でフロストの足を引っ張り、彼を失脚させようとする。
フロストはそのトラップにいちいち足をとられて転ぶ。律儀なくらい転ぶのだ。そして、「くそまみれになりかねない汚れ仕事」を全部引き受けさせられ、眠る時間どころかまともな食事時間もなく、お得意の愚痴や言い訳も「屁の突っ張りにもならない」。あらたまっての宣言は「おれの直感はおれを裏切らない…ごくたまにしか」だ。さらには、部下に、捜査状況の悪さや上司の怒りを指摘されると「そう言われると、ますます愉しみが増すってもんだよ」とうそぶく始末。
そんないつものフロストをやりつつ、今回の彼は、いつもにも増して、晩年関係が悪くなってしまった亡き妻のことを頻繁に思い出しては悔やんだりしている。これがものすごくせつない。
なんだかんだ言ってるが、フロストはかっこいい。ものすごくかっこ悪いけれど、同じくらいかっこいいのだ。彼のかっこよさの肝は「つい笑ってしまう」軽口やみっともなさにあるような気がする。今で言う、承認欲求のなさ。徹頭徹尾、ない。清々しい。
重篤な病を得てもフロスト魂を描ききり、読者にフロストの未来は今後も続くぞ、と思わせてくれた作者に敬意を表したい。彼、亡き後、遺族の許可を得た作家がフロストを復活させることになったそうだ。今後も、フロストに会えるらしい。…入り混じる期待と不安。
◆8月某日 夫発
今日は義父の月命日。亡くなってからちょうど半年だ。お盆は過ぎたが、思い立って夫とお墓参りに行ってきた。
お墓は埼玉県の、地図的にはちょうどど真ん中にあって、我が家からは高速道路を使って1時間半強かかる。が、今日は道がやたら順調で、助手席の身分としては、気がついたらお墓についていて、お参りをしてさっぱりした心持ちになり、気がついたら家に戻っていた。
夕方、夫に「本当に今日行ってきたのかなって感じ。もはや印象がない」と言うと、夫も「ほんとほんと!」だって。
えー!?運転した人は違うんじゃないのかなー。でもまあ、私が心配性な分、これからもずっとそのお気楽さを保ち続けてくれていいよ、オット。
◆8月某日 おかべりかさん発
おかべりかさんの『よい子への道』を読んでいる。まだ読み終わっていない。
先月、66歳で亡くなった著者のことは全く知らなかった。でも亡くなってから、勤務先の小学校の図書室にある「ムジナ探偵局」シリーズや、 「やまんば妖怪学校」シリーズの絵の人と知り、急速に近しい気持ちになった。どちらも、みっちり描き込まれた、躍動感があってなつかしくてユーモア溢れる絵柄が印象的だ。
その個性というかエキスが、希釈されず原液で楽しめるのがこの『よい子への道』だ。とにかく濃厚。そして丸ごと一冊、このタイトルに特化した図鑑みたいだ。
まずは【してはいけないこと】という切り口から、作者が思いつくあらゆる「いけない」こどもたちが描かれる。その世界は、とぼけていて緻密、ふざけていて至極真剣だ。先生のつくえのなかや、ピザのかいはつを「暴露」する【これが真相だ!】はわくわくニヤニヤが止まらない!先生が、ひそかににおい付き消しゴムを嗅ぐのを楽しみにしているかと思うと、なんて世界は可笑しみに満ち、光が射すんだろう。
この本は、「すべてのページをちゃんとめくって」ではなく、「好きなページを見つけて」と言っている気がする。だから読むのに時間がかかる。
図書館で借りたけれど買うことにしよう。好きなページを探し続けたい本だから。クスクス笑いながら。
by月亭つまみ
第1木曜日 まゆぽさんの【あの頃アーカイブ】
第2木曜日 つまみの【帰って来たゾロメ女の逆襲 月刊 切実本屋】
第3木曜日 はらぷさんの【なんかすごい。】
第4、5木曜日 つまみの【帰って来たゾロメ女の逆襲 ゾロメ日記】
まゆぽさんとの掛け合いブログです。→→「チチカカ湖でひと泳ぎ」