【月刊★切実本屋】VOL.49 雑食です!
ずっと読書低迷期である。世の中も、自分自身も、明るさとは縁遠くしょぼい状況だから…かも。まったく読んでいないこともないが、読書の醍醐味である「あれ?いつの間にかこんな時間?!」的な集中力を発動した記憶が最近ない。だからといって、どうということもなく、ふつうに日常は続いているのだが、唯一困るのは、この【月刊★切実本屋】のネタだ。まだ何も決めていないまま、ここまで190字。
ちなみに、自分の不調のひとつに(いくつもある)数か月前からの右肩&腕の痛みがある。これが噂に聞く五十肩ってやつか、ちょっと遅れて登場!大御所か!?と自分にツッコみつつ、そのうち落ち着くだろうと放置してきたのだが、落ち着かないので、本日(9/8)近所の整形外科に行ってきた。
今の住まいに移り住んでまもなく2年だが、引っ越してから整形外科に行くのは初めて。散歩中に見かけた駅前の整形外科専門クリニックに行くことにした。リハビリ施設も併設されているところ。
いざ出陣。
待合室はかなり混んでいてちょっとたじろいだが、外にも椅子があったので、今週からめっきり秋になってくれたことに心底感謝しつつ、どうせしばらく呼ばれないだろうとそこで寛いでいたら、意外と早く呼ばれた。
40代ぐらいに見える男性医師はいかにも有能な感じで、ムダなく感じよく私の訴えを聞き、「まずレントゲンを撮りましょう。肩だけじゃなく首も確認した方がいいですね」と言った後、ついでのように(実際は整形外科的には基本的な質問なのかもしれない)「お仕事は何を」と聞いてきたので、「学校の図書室で働いています」と答えたところ、これがとんだ波紋を。
医師はスイッチが入ったように「司書さん?憧れなんですよ。いやあ、わたしも本が好きでしてね。でも、買い過ぎるもんで、最近はキンドル、知ってます?ああ、知ってますよね。あればっかりなんです。ええ、ええ。確かに便利ですよ。でもなんか物足りなくないですか。ああ、やっぱりそう思います?でもねえ、床が抜けてもアレなんで、しょうがないですよねえ」と一気にまくし立てたのであった。
慣れているのかいないのか、診察室内のナースふたりはこぞって「センセー、もうその辺で。患者さんが立ち上がりかけてるじゃないですか。外の待合室、人が溢れてるんですよ」の表情で医師を見、わたしにまで無言のプレッシャーをかけてくる感じだったので、彼女らには「わたし、なんか悪いことしました?」と目で訴え、医者には「はあはあ。そうですね。はいはい」と流して、診察室を出たのだった。
なんとなく、この医師のスイッチは「司書」だけじゃないんだろうなと思った。きっとナースは「また始まった」ぐらいに思ったんじゃないかと。いや、でももしかしたら、このキャラクターが功を奏して、このクリニックが人気なのかもしれないし(帰宅後、クチコミをチェックしたら、おおむねこの医師は好感を持たれていた)…などと思いつつ、レントゲン終了後、また診察室に呼ばれる憧れの司書。
再度診察室で、画像とその後の超音波でわかったわたしの肩の状況を説明する医師は、さきほどのスイッチ点灯がウソのように有能さを取り戻し(?)、「まだ軽症だと思いますので、注射や薬ではなく、電気とリハビリで様子をみましょう」と力強く言い、呼ばれてきた難読漢字の苗字のPTさん(若くて妙にかっこよかった)にレントゲンと超音波画像を見せながら、てきぱきと現況を説明し、最初は「今の時間帯でのリハビリの空きはなし」のはずだったのに、なぜかいつの間にか、そのままリハビリに行けることになっていた。ありがたや。
しかし、話はまだ終わらなかった。「話」が。
診察室を出ようと、文字どおり、ドアに手をかけたわたしに向かって医師はこう言ったのだった。「おすすめの本、ありますか」
今、聞くかそれ。しかも、わたしはあなたのことを何も知らんのだよ。その質問は仕事中にもよくされるけれど、質問者を知っていて、その本の嗜好もある程度知らないと、答えようがない質問。「質問するなら金をくれ」とでも言ったろか。
もちろん言わなかったが、ナースふたりに加え、今度はPTさんの視線も痛かった。しかも私の左手はすでにドア。もう気持ちの半分は診察室から出ている憧れの司書は腰を引かせながらこう言う。「先生の情報がないので何を挙げたらいいか」。
しかし敵(敵なのか?)は食い下がる。「どういうジャンルの本が好きなんですか」
ああ、しつこい!わたしは通常の自分の他者への態度ではあまりないくらいにきっぱりと「雑食です!」と断言すると、なるほど~というにこやかな声に見送られながら、「ありがとうございました」と言いつつ診察室を出たのだった。
その後、若くてかっこいい難読苗字のPTさんに施術を受けたわけだが、ただただ感じがよい人で(もちろん仕事はちゃんとしてくれた)ほっとした。これで、男性医師のようにクセが強かったら、わたしの「一日あたりのクセの強い人キャパ」オーバーになるところだった。くわばらくわばら。
書くことを決めてなかったのに、気がついたら長くなっていた。これってわりと、あるあるだ。本のことを書いていないのでとってつけたように書くと、15分ぐらいで読めて(時間単価が高すぎるとも言う)とても豊かな気分になった本を紹介。児童書。スウィート・メモリーズ(ナタリー・キンシー=ワーノック/著 金原瑞人/訳 ささめやゆき/絵)※ご興味のある方は、タイトルをクリックしてください。
by月亭つまみ
凜
つまみさんこんにちは。
体の痛みって辛いですよね。私も右股関節が痛くて痛くていつものストレッチもまったくできないようになってしまったけど、医者にはかからずに整形外科医の本読んで負荷をかけたスクワットとできる範囲での筋トレを地道にしてたらましにはなってきました。つまみさんのお医者さんは、無邪気で育ちのいい方なんでしょうね。つまみさんは困ったみたいですけど、私は面白くて笑ってしまいました。
つまみさんの「雑食です!」で思い出したけど、有川浩の「植物図鑑」が最近読んで面白かったです。いやいやこんな設定ってないから~とツッコミいれつつ、純愛って素敵と思っちゃう。そしてこの植物ってそんなに美味しいんだ~へ~という単純な好奇心を刺激されます。いたってシンプルなお話ですけど、さすが有川浩、読ませます。ちなみに連れ合いは大島真寿美「渦」に夢中で寝る間を惜しんで読んます。
Jane
つまみさん。なんとなく最近That’s Dance!でのお声に、以前よりも元気がなくなっているような気がしていて心配していました。
私も一昨日、初めてかかる医者に行ってきて、小一時間ほどの問診と検査の後、落ち込みました。そのまま仕事に向かう予定だったので、駐車場の車の中でおにぎりを食べながらThat’s Dance!を聴いて、心を落ち着けました。
ミカスさんの今週の記事にもあったけど、私も人と話す機会(特に日本語)がほとんどないんですが、That’s Dance!は有難いですよ~聴いてるだけでも。
アメちゃん
つまみさん。
初対面で「オススメ」聞かれても・・ですよねぇ。
よく知った仲でも、本に限らず音楽や映画のオススメは
意外と的を外したりして、ムズカしいです。
昔勤めてた会社の社長から、「これ、あげる」って
樹木希林のムック本を(新品で)もらったことがあって
樹木希林、、あまり好きじゃないんだけどなぁ・・と
その後の扱いに困ったことがあります。
社長は、私が好きだと思ったんでしょうねぇ。
ここ1〜2年のお気に入りは
NHKラジオの「朗読の時間」です。
この番組を聴くと、色々な作家の小説に触れられて
改めて本を手にして読み返したりしてます。
ちなみに今日までは武者小路実篤の「友情」。面白かったです。
つまみ Post author
凛さん、こんにちは。
おおっ!自力で治されたのですね。すごい!
昨日、リハビリに行ってきたのですが、担当の理学療法士さんとの雑談のついでに、「診察のとき、先生の質問がすごくて驚きました」と言ったところ、「先生はスイッチが入っちゃっと話が止まりませんからねえ」と笑っていました。
まあ、愛想のない、ドクターハラスメント一歩手前みたいな威圧感のある医師より百倍マシですね(^^;
有川浩さん、何冊か読んでますが、『植物図鑑』は未読です。
読みます読みます。
大島真寿美さんのその本も存じ上げませんでした。
寝る間を惜しんで、っていい言葉ですよねえ。
つまみ Post author
Janeさん、いつもありがとうございます。
声に元気がない、とお思いになられましたか。
ご心配をおかけして申し訳ありません。
最新の30回は特に、マイクの調子が悪く、いつもにも増して元気なく聴こえるかと思いますが、なんとか日々営業しております。
そうですか、Janeさん、医者で落ち込みましたか。
なんだか、病院関係のネガティブ情報は逃げ場がないというか、数日、数時間後に気持ちを切り替えることができるにしても、それまでの時間の寄る辺なさは本当に落ち込みますよね。
多くの人が、大なり小なりそういう思いを繰り返して毎日暮らしているのだと思います。
That’s Dance!が、そういう人にとって、ささやかでもちょっとした気分転換になればうれしいです。
つまみ Post author
アメちゃんさん、こんにちは。
オススメ、するのもされるのも難しいですよねえ。
かなり前ですが、あまり懇意でない人から突然、「いしいしんじが好きでしょう」と言われました。
一冊だけ読んだことがあったのですが、それがあまり好みじゃなかったので、妙に憮然とした記憶があります。
その憮然さは「見損なうなよ!」的で、それはそれでいしいしんじさんに失礼なんですけどね(^^;
朗読、いいですよね。
前に、新美南吉の『花のき村と盗人たち』を聴いたのがとても印象的です。
思いもかけない作家の作品に触れられて、そこから自分の興味が広がっていくって、楽しいですね。
つまみ Post author
アメちゃんさん
すみません!
わたしが書いたのは、「朗読の時間です」ではなく、「ラジオ文芸館」でした。
区別がつきませんでした。もしかしたら今も、そして今後も!?
アメちゃん
つまみさん、こんにちわー。
「ラジオ文芸館」も、たしかつまみさんとお話ししましたね。
あのあとすぐ?放送時間が変わってしまって
最近は聴いていません。
あの番組もいいですよね。
私はあれで「五十鈴川の鴨」を買って読みましたよ。
「朗読の時間」は平日の朝の15分だけなんですけど
「友情」は、話が進むにつれてどんどん展開が面白くなって
(「や、大宮やろ?」「君じゃなく大宮」ってツッコミながら聴いてた)
先週の金曜日
「この続きはまた来週のこの時間に・・」って終わったあと
思わず本屋で続きを読んでしまいました(笑)。
朗読する役者の力がすごいなぁって感心します。
つまみ Post author
アメちゃんさん、朗読力って、すごいですよね。
同じ文章でも、読む人によって、伝わり方が歴然と違うことに、感動したり、怖れをなしたりします。
「友情」、アメちゃんさんが描写する聞き手のリアクション(?)で妙にそそられます。
職場にあったら読んでみようっと(ケチ?)。