帰って来たゾロメ女の逆襲⑪~同級生が校長先生と知ってしばし呆然記念【同窓会小説】3連発の巻~
父親の転勤で幼稚園を中退し、小学校は3回変わり、その後の両親の離婚のせいで受験して合格した高校を入学式を待たずに転校するという、輝かしい転校履歴(?)を持つ私は、小学校や中学校時代の同級生の一部からはしばらく行方不明扱いになっていたようです。
長い時間を経て、現在は首都圏在住組数名とたま~に連絡を取り合っていますが、なぜか男子の方が表面的には(あくまでも表面的には)まっとうな社会人ぞろい。
最近知りましたが、優等生だったHクンなどはその後も道を外すことなく、現在は横浜の中学校の校長先生だそうです。
同級生が校長先生!?
ついにここまで来たか・・・くらっ(めまいの音)。
あの
「ずっと年上だと思っていた高校球児が同級生!?」
「なんと同級生が人の親に!」
「ついに同級生に管理職誕生!」
などでおなじみ(か?)の
【同級生(同い年)で感じる「もう自分はそんなトシだったのか」としばし呆然編】 も
校長先生という、存在感的にはリーサルウェポンの登場で新ゾーンに突入した感じがします。
それにしても同級生ってフシギ。
同じ教室で学んでいた当時、特に親しくもなく、卒業後何十年もの間、会うことはもちろん、思い出すことすら皆無だった人でも、一度近況を報告し合うと一気に旧知の仲の感覚になります。
「古い時代を知っている」という意味では確かに旧知の仲ですが、空白の期間もまるで水面下では連綿と何かが続いていたような、心の片隅では互いに案じ続けてきたような、そんな錯覚に陥りがちです。
幻想なんですけどね。
過去を自分に都合のいい方向にスライドさせるのは、大人が身につける処世術ってことなんでしょう。
そんな風に、想像力を喚起し、時に妄想力も膨張させる(かもしれない)同級生。
でも、だからこそ、同級生・・というか同窓会をモチーフにした小説がけっこうあるのかもしれません。
そんなわけで、今回は【同窓会小説】を取り上げます。
まず、『おじさんとおばさん』 (平安寿子/著)。
読みやすくて読みづらい同窓会小説です。
還暦間近の、世間的には恋愛のナショナルリーグを降りたかのように映る男女達が織り成す、あけすけで打算的で情けないすったもんだがあまりに赤裸々に描かれているので、正直、読んでいてツラいところもあります。
まあ、そこは平さんですから、最後はすとんとフシギな爽快感が残りますが、これって同窓会小説であると同時に反面教師小説というジャンルでもあるかも。
それに比べると『黒と茶の幻想』(恩田陸/著)は高尚。
いや、なにも『おじさんとおばさん』が下世話だと言ってるわけではなく(ちょっとは言ってる)、著者の芸風・・じゃなかった、作風の違いが大きいと思います。
かつての同級生4人が屋久島とおぼしき場所に旅します。
4人が4人、訳ありというか、謎めいていて、その真相を探る旅でもあるのですが、恩田さんの小説はいつもどこか清廉で、この小説も例外ではありません。
ドロドロしそうでしない。
いやらしくなりそうでならない。
それがある意味、いちばんいやらしい、という意見もあるかもしれませんが、思わせぶりなタッチがたまりません。
それと、個人的に私、この小説のように、章ごとに視点が変わり、ひとつの事象が語り手によっていろんな側面を見せるという手法、大好きなんですよねー。
そして、私にとっての同窓会小説のきわめつけといえばなんといっても『田村はまだか』(朝倉かすみ/著)です。
同窓会の3次会が舞台の連作短編集です。
集ったのは5人。
そして、物語の案内役は3次会の店「チャオ!」のマスター。
印象的なこの本の表紙の人物は田村ではなく、このマスター花輪氏なのです。
田村は、遅れてこの店にやってくるはずの人物。
小説では、彼を待つ5人+マスター、それぞれの過去や現在、わだかまりや執着・・そして田村についての思い、が語られていきます。
田村はなかなか来ない。
田村はまだか。
巧いです。
読みやすいです。
でも、実はするするっと読めるタイプの内容ではないと思います。
するするっと体内に入れてから、手強いことに気づく感じ、とでもいうか。
朝倉かすみさんの書く小説ですから、のどごしに騙されると消化不良になるかも。
でも、面白かった~。
この3つ以外にも同窓会をモチーフにした小説はたくさんありそう。
これぞ!というものがありましたら、ぜひ教えて下さい。
これからもっと大人になるにあたっての処世術のために!?
by月亭つまみ
こんなブログをしています。正体不明な女二人のブログ。 お昼休みなぞにのぞいてみてください♪→→「チチカカ湖でひと泳ぎ」
あきら
こんにちは。いつもたのしく拝読しておりますー。
下世話なのが年齢的にもフィットしている気がするのでそれにします(笑)!
いや、それが、ちょうど昨日。あけすけというか、同級生の男子とそういう
(ってどういう?)なはなしをしたところでした。
60前くらい?50代くらいから同窓会というものは勢いよく盛り上がっていく
ものらしいですが、やはりそこには不思議な関係のマジックが大きく作用し
ていそうですよねー。悪い意味ではなく、有効利用も有りかな。
つまみ Post author
あきらさま
コメント、ありがとうございます。
おっと!下世話1票!
同窓会で何かが生まれることを期待するような気持ち
実はほとんどないのですが
かつてのクラスメートが卒業後は全く違う道を歩み
とりたてて波乱万丈な人生ってわけでもない
でも、笑ったり怒ったり泣いたりうんざりしたりほっとしたり不安になったり、をしていて
それぞれの暮らしに右往左往してるんだなあと思うと
なんだか妙に元気づけられます。
『おじさんとおばさん』はホント
あけすけですよー。
「悦び」という字が似合うかどうかはわかりませんが(笑)。
爽子
わたしも、一冊目はおじさんとおばさんにしよう。
悦びも歓びも、わたしには、似合いませんが。
あけすけて、どんなん?
あ、読めばわかりますね。^ – ^
つまみ Post author
爽子さま
あけすけっていうか、昔よくお祖母ちゃんが言ってた
「恥も外聞もない」というか。
ところで、『おじさんとおばさん』の上の商品ランキング
確か昨日は60万位ぐらいだったのが
9万位になってる!
そもそも60万位って!?という感慨はさておき
爽子さんの感想、楽しみですので、ぜひぜひ!