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思い残すことばかりです

 

藤沢周平の「蝉しぐれ」を原作とする、宝塚歌劇の作品「若き日の唄は忘れじ」(脚本:大関弘政)から。

 

「蝉しぐれ」は映画やドラマにもなったので、ご存じの方も多いかと思います。主人公は下級武士である牧文四朗。幼馴染のふくと淡く思い合っているけれども、ふくが藩主のお手つきとなって、手の届かない存在に。それぞれの人生を歩んでいく中で、政争に巻き込まれたふくとその子供(藩主の子供でもある)を命がけで助ける(しかし思いを口に出すことはない)場面がクライマックス。

 

離れ離れになってから20数年後、藩主が死んで出家するふくが、最後に一目だけ会いたいと呼び出すラストで、

「ありがとう、文四朗様。これで思い残すことは、」

「思い残すことばかりです!」…文四朗が背中を向けて、さえぎるように強く言います。

 

現代とは違って、職業も、結婚相手も自由に選べない江戸時代の武士階級。しかも、われわれよりもずっと寿命が短いのです。思い残したことは、二度とやり直すことはできません。(ちなみに二人とも40歳前後の設定ですが、現代よりはもっと「年上」の感覚でしょう。)

 

でも、現代だってそういうことが無いわけじゃない。あのとき、もし○○だったら…、そんな些細な後悔は誰しもあると思います。ましてや、災害や事故で取り返しのつかないことが誰にでも、広範囲に起きうるということを、3.11で痛感しました。

 

さらに、宝塚のスターはきわめて短いタカラジェンヌ人生を送ります。活躍できるのはどんなに長くても15年ぐらい。たとえトップスターになれても、「あの役もやりたかった(やってほしかった)」「あの作品に出たかった(出てほしかった)」という思いはいつでもついてまわります。

 

それでも、どんな役でも全力で頑張って、卒業する日には「悔いはありません」と笑顔であいさつする。

 

先ほどのセリフに続く「しかし、あなたへの思いに青春の時を過ごせた私は、幸せものです」「はい、ふくもです」は、まさにそうした思いを体現したものでしょう。

 

タカラジェンヌのそうした健気さがこのセリフに重ね合わされ、そこに自分の(タカラジェンヌほどは健気ではないけれども)些細な後悔を含んだ人生をも投影し、私は客席で泣くのでした。

 

 

(ちなみに原作では、ふくが「思い残すことはありません」と言って別れるんです。いや~、大関先生(宝塚は女学校だから脚本家は「先生」)、いい脚色してるな~。と原作との差異を見つけて身悶えするのも、ディープなヅカファンの楽しみだったりします^^;)

 

 

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コメント、ありがとー!

  • hanihani

    ほんとこの作品、良いです。
    初演のシメさんのときとか、まだカセットテープの時代だったのですが
    観劇しながらちゃっかり録音して、うちで毎日聞いてました。
    ああ、一人住まいのあの頃がなつかしい。

    いまならきっとスカイステージに入ってしまっただろうなぁ

    で、壮さんにはぴったりだったなぁと。

    壮さんが父親の亡骸を引き取り自宅に帰るときに周囲の冷たい視線を
    演じてる下級生が上手で
    道場の稽古からずっと一緒の亜聖樹くんと和城るなちゃんの芝居のうまさは
    毎回見逃せませんでしたよ。
    柏餅をおやぶんの分も取って差し出すところとか
    この場面での意地悪言いながら足蹴にするとこととか
    稽古で壮ちゃんが「あんたたちの意地悪さがマジなんで、本当に悔しいよ」
    と言ってたそうです。

    うん、DVD買ってもいいな

  • プリ子 Post author

    hanihaniさん、はるばるおいでいただき、ありがとうございます!
    シメさんの初演は映像でしか見たことないんですよ~
    いいセリフばかりだから、音声だけでも観劇時の感動が再現できそうですね。
    そうそう、あの亡骸を引き取るシーンはすごく印象に残ってます。
    下級生たちの頑張りが密度をあげてたんですねえ。

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