Posted on 2020年1月21日 by SHOJI

第28回　映像研には手を出すな！

『映像研には手を出すな！』は、ただいまNHKで絶賛放映中。FOD（フジテレビ系）で独占配信。湯浅政明、監督。原作は大童澄瞳（おおわらすみと）の同名漫画。アニメーション制作はSCIENCE SARUです。

第1話だけでも完結しているかのような、この楽しさ！ 気の利いた笑えるセリフやダンジョンのような学校はどうなってるの？と、早速原作を一気読み。アニメは第3回まで放映されたところですが、はっきり言おう。これは間違いなく、面白い原作がアニメになってもっと面白くなっているやつだ！

設定画をたくさん描いていてアニメを作りたいけれど一人で始められない性格の浅草みどりと、お金儲け活動が大好きな金森さやかは、入学まもない芝浜高校で、財閥令嬢でカリスマ読者モデルの水崎ツバメと出会い、彼女がアニメーター志望であることを知ります。

浅草と水崎はお互いの絵を見て実力を認め合い、金森は二人が組んでアニメを作ることを提案します。だが、水崎はアニメーターになること、アニメ研究部に入ることを親から反対されているという。浅草もそれを聞いてさらに弱気になります。そこで金森がこんなことを言うのです。

「入部がだめなら部を作ればよいのです。」「我々はモラトリアムに守られているんですよ。失う物なんてないノーリスク。」「諸々のサポートはします。」

金森、かっこいー！ モラトリアムうらやましいー。

かくして彼女らは新たに映像研究同好会を作り、電撃三人娘のアニメ制作が始まるのです！

ゆりかもめがモデルと思しきモノレールの駅。作中上映の実在アニメ。古い手描きアニメ用機材の数々。妄想のメカが間一髪でビルをすり抜ける様子。回る風車を描く手法。刀を振り動きを確認するアニメーターなどなど。漫画ではあいまいに描かれていたり省略されていたりするコマに、アニメ好きにはたまらない、存在感やわくわく感を増す物や動きが加筆されています。原作を膨らますとはこういうことか。

三人で作業や相談をしているうちに、いつの間にか、浅草の妄想の世界で冒険が始まります。妄想は水彩のラフ画で表されており、ガシャンガシャンと浅草の声が効果音に混じる（笑）。アニメ鑑賞ポイントに言及するセリフにあわせて、そのポイントをちゃんと押さえたアニメーション。文句を言いながらも妄想の中で協力する金森のアクションが、意外にカッコ良い。水彩のイメージ画が動くだけで、なんでこんなに楽しいの？！

ちまたでは策士の金森が人気があるようですが、私のお気に入りは浅草。一人称が「ワシ」で語尾が「～じゃ」という、セリフも性格もどう読めばいいのか分からないキャラに、声と表情の演技がピタリとはまった、納得の浅草です。カリスマ読モ水崎のアニメーション愛もいずれ前面に出てくることでしょう。

オープニング曲『Easy Breezy』が頭の中でぐるぐるまわる、どこから見始めてもテンポの良い、クセになる作品です。

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監督の力だけで作品ができているわけではないのは重々承知していますが、本作は湯浅政明監督の名を出してPRしているようなので、言いますね。

湯浅監督の手（目）を通すと、原作は軽やかになります。

例えば、森見登美彦原作の『四畳半神話大系』。（比喩としての）モラトリアムの極北・腐れ大学生の慕情と日常が、小気味よいカット切り替えと音楽と独特の色使いで、ポップ＆スタイリッシュに思えてきます。原作とはまた違った面白さ。ｄアニメストアにて視聴できます。

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さて、史上最後のセンター試験が終わり、お正月気分もどこへやら。

Too much気味の『OIRAKUのアニメ』ですが、皆さま、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

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＊アイキャッチ画像と動画は、当該作品の公式HPおよび配信予告より