祝宴狂想曲(7)今はもう秋、誰もいないウミベ。
前回のつづきです。
婚礼衣装を着てプロカメラマンに写真を撮ってもらう「フォトウエディング」の存在は知っていました。ただ、なにしろわたしが若いころにはなかったサービスですから、正直なところどんなカットをどれくらい撮るのか、詳細はよく知りませんでした。ただ「新郎新婦の貸衣装+小物・靴+ヘアメイク+記念アルバム&CDデータプレゼントで5万円ぽっきり」と聞いたので、てっきりキメ写真を数点撮るぐらいだろうと高をくくっていたのであります。
甘かったです。
もともとこんなにサービスのいいお店なのかは不明ですが、貸衣装屋の社長とセンセイ、カメラマン・ウミベさんという謎の三角関係がこんがらがって、ザビ男とわたしのロケ撮影は30分を超えても終わるどころか、妙な熱気に包まれて進行していたのでありました。
このとき、すでに20カット以上が撮影済み。ロケ地は地元で一、二を争うド観光スポットだけに、時間がたてばたつほど人出は増えていきます。ああ、1分1秒でも早くこの場から立ち去りたい。ドレスの裾をまくし上げて撤収ポーズを見せつつ「もう撮影はいいんじゃないですかね」とウミベさんにストップをかけるのですが、ウミベさんはそれが遠慮に聞こえたのか、一向にカメラを降ろしません。
「じゃあおふたり、もうちょっと近づいてみましょうか」
「え、もうじゅうぶん近いんですけど…」 (パシャ、パシャ)
「うん、うん。ちょっと腕を組んでみましょうか」
「は、はあ……」(パシャ、パシャ)
「うん、うん、そのまま前に歩いてみよう!」
「はっ?」(パシャ、パシャ)
「うん、うん、いいですよーいいですよー、ハイそこで両手をつないで!」
「はっっっ!?」(パシャ、パシャ)
「うん、うん、じゃあそのまま見つめあってみようか!」
「いやいやいやいや」
「そこでダンナさん! 後ろから腰に手を回してみよう! もっとこう! はい、そう! それ! いま! うんそうそう!!」
「ムリムリムリムリムリムリ」(パシャ、パシャ)
※写真はイメージです。実物は恥ずかしすぎてお見せできません…
オッさんオバちゃん被写体でどんなシャッターチャンスがあるんだ! と疑問を呈したいところですが、ウミベさんがしゃがんだりねそべったりダイナミックに撮影するものだから、様子を見ていた親族までニヤニヤしながら「いいぞーやれやれー」「チューしなよー」とヤジを飛ばす始末。それを聞いて、何事かと足を止める観光客もわらわらやって来て「なになにウェディング? え、オバちゃん…??」と二度見する感じでこちらを見ていてもう死にたい。
それでも母上と姉きくえが楽しそうにこちらを見つめているのがわかると
うううううーーーーやめられないーーーーー( ; ; )
そのときザビ男が自らわたしの手を取り、率先して見つめ合うポーズをとり始めました。この手の行為は誰よりも嫌がる男が、どうしたザビ!? と不審に思っていたら、ひとこと。
「始めれば、終わる。」
悟り…?
顔は笑っていましたが目は死んでました。
くっついたり寄り添ったり芝生にねそべったり、いったい何十カット撮ったことでしょう。安く衣装借りられてよかったねーなんつって無邪気に喜んでいましたが、まさかこんな恥辱プレイをすることになるとは。親孝行って、親孝行って、試練なのね…。
その後、ウミベさんは「次の撮影まで時間があるので、おつきあいできますよ」と、なんと食事会までみっちり撮影してくれるという大サービス。めっちゃいい人だった。めっちゃ腕もよかった。でもいかんせん腕がよすぎて恥辱度倍増した。後日わが家に100カットにおよぶ写真データが届きましたが、ツーショットでの顔のひきつりが尋常じゃなくて
「ウミベさん、ごめんよ…」
と言いながら、CDーROMをそっと押入れの一番奥に封印したのでありました…。
(つづく…ってしつこいですよね、次が最後です)
これまでのいきさつをおさらいしたい」という方はこちらをどうぞ。
↓
祝宴狂想曲(6)ケンカをやめて、カメラを止めて、男はみんな外に出て!
Text by じじょうくみこ
Illustrated by カピバラ舎
*「じじょうくみこのオバサマー」は毎週火・木・土曜日更新です。
あずみ
ああ、わかる。
台湾では結婚式に向け写真撮影するのが普通ですし、観光地でも山奥でも海辺でも、はたまた交通量の多い道の真ん中でも、撮影されております。
かくいう私も経験いたしました。
ある瞬間に、わけもなく笑える自分が誕生しておりましたよ。
うちもその写真は、どこにあるのかわかりません。見事なアルバムと、見事な額縁におさまったポスター大の写真、CD… かあさん、どこへ行ったんでしょうね。
撮影、お疲れさまでございました(涙)
はしーば
くみこさん、恥辱プレイに良く耐えられましたね。
ザビさんの悟りプレイは深すぎです。
次回最終回・・
秋の訪れとともにオバ・サマーともお別れですか。
いっそ、オバ・オータム、オバ・ウィンターと続けていただければ、と我儘な読者は期待せずにはおれません。
okosama
じじょくみさん、こんばんは
芝生にねそべったり…。…。
100カット。「ウェディング」で出てくる写真素材的な?
いや、でも、腕の良い方なら、お食事会のお写真は、お母様はじめ皆さん喜ばれたことでしょう?
アメちゃん
おはようございます、じじょくみさん。
エっ!
しゃがんだりねそべったりしたのは、ウミベさんだけじゃなくて
被写体のおふたりも!?(と、さかのぼって読み直す)
恥辱プレイに対して、お二人の大人の対応。
マジリスペクト。
これって、デジタルカメラのいわゆる弊害でしょうかね〜。
もし昔のフィルムだったら
ウミベさん、こんなに枚数つかって撮影しなかったかも・・とか思ったりします。
それにしても
ウミベさんにアラーキー降臨ですか^^?
じじょうくみこ Post author
>>フォルモサあずみさま
わー!コメントありがとうござりますっ( ´ ▽ ` )ノ
そうそう、台湾とか中国韓国あたりでは、街中でよく見かけますよね。
ウエディングじゃなくても写真大好きなお国柄のようで(^ ^)
そういえば、仲良しの美容師さんが結婚式を挙げるかわりに
台湾でフォトウエディングをしたと聞いて写真を見せてもらったんですが
どこのビッグアーティストのジャケ写よ!?というような
衣装、ロケ地、雰囲気、尋常じゃないバリエでした。
照明からヘアメイクから、まーー凝る凝る。つまりは大笑いでした(笑)
じじょうくみこ Post author
>>はしーばさま
こんにちは!コメントありがとうございますー*\(^o^)/*
いやもうね、舌噛もうかと思ったですよ(泣)
ザビ男が悟りを開かなければ、ぐずぐず嫌がっていたかもしれません。。。
そして名残惜しんでいただいて恐縮ですが、
終わるのは祝宴狂想曲シリーズで、来週も更新します、すいません(爆)
じじょうくみこ Post author
>>okosamaさま
こんにちは!コメントいつもありがとうございます〜♪
そうなんですよ、いかようにも活用できるように、
ウミベさんはセピアバージョンとか小物やドレスのディテールアップなど
本当にいろんなカットを撮ってくださっていたのです。
ありがたい限りですが、活用する機会がないのが申し訳なく(ー ー;)
じじょうくみこ Post author
>>アメちゃんさま
こんにちはーコメントありがとうございます♪( ´θ`)ノ
恥辱プレイの詳細については・・・
くわしくはそっとしておいてください・・・あうう(恥)
フォトウエディング自体がデジカメありきのサービスかもしれませんね。
素人相手ですから、いろいろ試したり加工できたりできて便利でしょうし。
ウミベさんにはぜひ若くて素敵なカップルの門出に
その腕を発揮していただきたいと心よりお祈りしております。。。
いやでも、本当いい人でした。
参列者にもよくしてくれて、おかげでいい表情が撮れておりました。
プロってカメラの腕だけじゃないなーと実感( ´ ▽ ` )ノ
okosama
じじょくみさん、ふたたび
セピアバージョンに小物やドレスのディテールアップまで?お蔵入りはもったいない。
お母様のお手元にデジタルフォトフレームでスライドショーとか?