in her SHOES ~ おばばは何を考えて? #8
~ 16年振りの帰郷。どさりと送られてきたおばばの靴たち ~
もしもし。あーた。
あーたが観に行ったっていう、ニューヨークの94歳の方の映画!
あたくし、観てきたわよ!
面白かったわよ!!
美人にはゼンゼン興味がない とか。
仕事も子供もって
あれもこれも欲張り過ぎちゃいけない とか。
特にルールはないの。あっても破るだけ とか。
センスなんかなくていい。幸せならそれでいい とか。
あれっくらいのシンネンがないと
あんなふうな突き抜けたおしゃれにはたどりつかないわ。
ちょっとぉ。聞いてんの?あーた!
えーと。聞いてます。聞いてます。
おばばが言ってるのは映画「アイリス・アプフェル」のことで
でもおばばは、
「アイリスさん!アイリスさん!」ってラブコール送るわりに
「アプフェル」は「 æ–‡å—化㑠」になって、
ちゃんと言えないってことも、
むすめは ちゃ~んと わかってますからっ!
先日、実家に行ったとき。
おばばの今の気に入り靴を尋ねてみた。
「あ˝ら。言ったでしょ!
あたくしが、今いちばん気に入ってんのはロジェ・ヴィヴィエ!
ここのお靴が、足にぴったりで、デザインもばっちりで
いっちばんのお靴!!
今もちょっと気になってるのを
お店に取り寄せてもらってるんだけどぉ。。。
あ˝~~~。ど~しようかしら?あのお靴。。。。。
どのお洋服とだったら、あのお靴がいかされるかしら?
ちょっと!あーたっ!
あーたも真剣に考えてっ!!! 」
そんな。
あのお靴って遠い目をして言われたって。
あたしは「そのお靴」を見てもないのに。
真剣に考えて! って言われたって
そもそも真剣に考えよ~がないじゃないスか。。。
ときどき、ふっと思い出すことがある。
おばばは、
兄夫婦をある事件で亡くしている。
あれは、わたしが大学4年の時。
おじはあの頃、50代半ば。
おばとおばばは、、、
ちょうど今のわたしの年頃。。。
あんなことが起こるということを
大学4年のわたしは
1ミリたりとも想像することができなかった。
おじ夫婦は、、、
身内の身びいきを差し引いても、
そして25年以上経った今思い直してみても、、、
彼らはやはり、紛れもなく「善人」だ。
その「善人」が、あんな顛末で突然人生を終えることになろうとは
おそらく「あの日」まで
わたしに限らず身内の誰一人
微塵も思ってはいなかったはず。。。
あのときの 〇子姉さんは立派だった。。。
何十社もの報道関係者が
遺族の取材をさせて欲しいと、
カメラとマイクを持って押し寄せたとき
〇子姉さんは、
毅然と、
しかし、穏やかに頭を下げて
取材の依頼を一人で きっぱりと 断った。。。
あとになって親戚のおじから
あのときおばばが
どのように事態の収拾にあたったかを
わたしは訥々と聞かされた。
あの一件は。。。
とても大げさに言うのなら
戦前戦後の農地改革の余波。
封建的な格差が生んだ「所有」をめぐる
ひとのこころの複雑すぎる「ねじれ」。。。
こどものころ
おばばの郷里へ帰省をすると
決まってあのひとが出迎えに来た。
そして、なにくれとなくわたしたちの世話を焼いた。
おばばは毎回それを断っていたが
あのひとは「自分の気がおさまらない」と
毎回現れては去って行った。
こどもごころに
「これは一体なんなのだろう」と
思っていた。
落ち着かなかった。
おさまりが悪かった。
「お嬢さん。お嬢さん」と耳慣れない呼び方で丁重に扱われ、
こちらが望む手前手前で、すべての準備が整えられるさまが。
おじの口癖は「よかよか」だった。
後年、「あのひと」のよからぬ噂を耳にしても
実際、離れた土地の管理を任せた「あのひと」が
法的にも人道的にも逸脱した行為に手を染めているという噂が耳に入っても。
おじはいつも「よかよか」と笑っていた。
あれは、夏目漱石の「こころ」だったか。
「―――平生はみんな善人なんです。少なくともみんな普通の人間なんです。
それが、いざと言う間際に急に悪人に変るんだから恐ろしいのです。
だから油断ができないんです。」
まさに。
まさに。
わたしがこどもの頃には
善人すぎる善人に見えていた あのひとが
悪人すぎる悪人に変わるまでの
長くて深い やりきれないできごと。
あのとき
まさに
ひとのこころはおそろしいと
床から
地面から
素の足を通して
電流が走った。
平凡なわたしたち親族の
身の内に起きた
重くて深い できごと。。。。。
―――「ファミリーシークレットは、どこにでもある。
ただそれを、口に出さないだけで」。
30を前に、知り合いの精神科医に言われた言葉が耳に残る。
ち˝ょっと!
あ˝ーたっ!
ま~た、な~に、ぼんやりしてんのっ!!
ちょっと!
あーたはこの春、何を着るつもり??
あたくしは、ほら、去年のあのドリス・バン・ドッテン!
あのワンピースに、今年はこのジミー・チューを履こうと思ってんの!
これ、ヒールを2センチ切ってもらったわ。
そしたらほら、う~んと履きやすくなった!
あーたが 79歳のおばーさんがそんな細いヒールを履くな って
失礼千万なことを言ってさんざんにくさすケド。
ほ~らねっ。これでじゅうぶん履けるようになった。
これで当分、お出掛けが楽しめるわ!
ち゛ょっとぉ!
聞いてんの?
まったく、もー、あーたってひとはっ!!
ヒールを切られたジミー・チュー
……何度言っても
「ドリス・ヴァン・ノッテン」は「ドリスバンドッテン」に。
……何度言っても
ジミー・チューのピンヒールを諦めようとしないおばば は
今は79。今度の夏には、ウルトラマン・エイティ。
あーたには、去年
あたくしのお靴をた~くさんあげてるでしょっ!
あそこから考えなさいっ!
今年の春は何を着ようかな?
今年の夏は何を着ようかな?
50になる秋には
どんなふうでいられれば
あーたがあーたらしく
自分自身でいられるかな???って。
ち゛ょっと!
も゛ぉ~~~っ!!
聞゛いてんのぉ???
ったくもぉ゛~~~!!!
あ゛ーったってひとは~~~っ!!!
さて。
昨年の7月からお付き合いいただいた
〈やさぐれ中すday! 〉は今回でおしまいです。
自分の「くらし」を
自分の「サイズ」で整えることが
とどのつまり
自分の「こころ」を整えることだ
ということを
わたしは長年
毒舌おばばから
きりきりと刷り込まれ、
そしてそれを自分でも実感しながら、
40代の最後の今を過ごしている
ということが
最近になって
やっと
しぶしぶ
悔しまぎれに!
わかってきました。。。
さ~て。
ここから続く50代は
鬼が出るか蛇が出るか。。。 (笑)
他愛もない日々のぼやきに
広いこころで
お付き合いいただいた皆さまに
深く感謝を申し上げます。
皆さま
どうぞ良い春を♪
そしてどうぞ
佳い午後を♪
〈やさぐれ中すday! 〉
お読みいただき
ありがとうございました。
2016年 3月 29日
サヴァラン
mikity
あ~~いかん、なんだか涙がでてきちゃいました。
サバさま、さばさま。
もう「やさぐれ中すday」が読めないのはとてもとてもさみしいけれど、
大人になっても卒業は必要なのですね。きっと。
お弁当もお菓子の数々もオババ様のお靴も、みんな私とは縁のないものばかりでしたけど
大好きでした。
ある種、癒やされていた気もします(人にとっての癒やしは様々ですよね)。
長い間、楽しい記事を届けて頂いてありがとうございました!!深謝です。
また、お会いできると信じているので「さようなら」はいいませんよーだ。
okosama
サヴァランさま
これはこれは、予期せぬ最終回!
太郎くんの本格的思春期に対抗すべく充電なさるのでしょうか。
シリアスなお話でも、クスリと笑ってしまうやさぐれ度が好きでした。またやさぐれが貯まりましたら、単発記事などでお出まし下さい。
50の装いはロジェヴィヴィエを譲り受けて完成するのよ!とおばば様に甘えてみる、とか?(笑)
カミュエラ
連載、お疲れ様でした!
いつもいつも感心させられたのは、お野菜いっぱいで美しいお弁当と、私が普段食べているおやつ(ジャンクフード?)とは別世界の品のいいお菓子たち!そしてやっぱり、お母さんのお手入れの行き届いた美しすぎるお靴たち!
お母さんの美意識の高さは、娘であるサヴァランさんにとっては時々窮屈なものなのかもしれませんが、見習いたいところもいっぱいですよね。私もいくつになってもヒールのある靴に挑戦し続けたいです。
そして太郎君!時々サヴァランさんの地雷を踏みながらも(笑)健やかに成長していっている様子がとてもほほえましかったです。一人でお弁当を作ったりお菓子を焼いたりも出来るなんて素晴らしいです。
うちにも15歳になる息子がいますが、何につけ不器用な子で心配し始めればきりがないので、とにかく自分の好きなものだけでも自分で作れるように教え込もうと、毎週料理の仕方を教えています。
写真を撮りレシピを手書きさせ、彼用のレシピ本を作らせています。きっと将来役に立つと信じて!(笑)
思春期の子供がいると親も大変ですが、彼ら自身も大変な時期を過ごしているんだなあと感じます。
サヴァランさん、お互い頑張りましょう!
いまねえ
おお??・・
サバランさん火曜日は最終回だったのですねっ。。
お弁当作りに際して
「とにかく、作って、持たせてしまえばよいんです」のフレーズ、
これが頭から離れません。作るのも、持っていくのも私自身なんですが。
そして鮮やかなお野菜やつやつやしたお肉の写真が輝いていました。
おばば様のキョーレツな存在感と豪華な靴靴靴靴・・・にびびりつつ
楽しませていただきました。ありがとうございました。
・・そうか、春は卒業の季節でもあるのね、と改めて思っております。
Naomi
サヴァランさんの50代への道、おばばさまのお靴のようにピカピカの一歩を踏み出せますように♥
私もこの夏に50歳になりますが、まだ自分のつま先がどこ向いてるのか分からん状態ですわ。(^-^; 頑張らねばネ。
毎回の楽しい話題をありがとうございました。
(*^-^*)またいつかどこかで、サヴァ節を是非!
サヴァラン
mikity さま
駄文にお付き合いいただき 本当にありがとうございました。
>「さようなら」はいいませんよーだ。
ああ、こういう感じ、大好きです。
「○○よーだ!」
心の中でこんなふうにつぶやいちゃうOVER40S
うん。とってもいい感じだと思います!
サヴァラン
カミュエラ さま
お母様と息子さん合作の手書き写真付きレシピ!!
それ、なんて素敵なんでしょう!!!
それ、将来役に立たないワケがない!!!
うちはむすこが自己防衛でお弁当作りやお菓子作りを始めたきらいがあります。
「こんな母にまともに付き合ってちゃ身がもたん」と言わんばかりに。(笑)
>思春期の子供がいると親も大変ですが、
彼ら自身も大変な時期を過ごしているんだなあと感じます。
まさに。まさに。そう思います。
人生の午前をいく彼らと
人生の午後をいく私(たち)
どっちも「面白がって」いければと思います!!
お付き合いいただいて、ありがとうございました。
サヴァラン
okosama さま
すびばぜんっ。順番を間違えました。
いつもあたたかいコメントをありがとうございました。
愚息と愚母バトル。
最近はど~も、むすこがわたしより一枚上手なってきたような。
身長もすっかり抜かされて、「上から目線」でものを言うので
今度からは家の中で、おばばのお古のハイヒールでも履いて
対抗しようかとおもっちょります。
ハイヒールでも間に合わなくなったら…
プールの監視用の椅子でも、どこからか調達しようかしら。。。
でもまあ、こうやって少しずつ「距離」を作っていくのだと思います。
わたしも、母となんとか「距離」をつくってきたように。
受験の頃にいただいたコメント
特に励まされました。
長々お付き合いいただき、
誠にありがとうございました。
サヴァラン
いまねえ さま
とにかく作って
持たせてしまえば
それでいいんです
わたしの場合。
わたしのお弁当はこれにつきます。
お弁当のきもち
これ以上でもこれ以下でもない感じです(笑)
あ。お弁当に限らないんだった。
掃除も、洗濯も、片付けも
「とにかく、やればいいんです♪わたしの、場合♪」
たぶん毎日つぶやいてます。
誰のためとか
なんのためとか
あんまり考え出すとややこしくっていけないので(笑)
「キョーレツ」
わ。この言葉の感じ、ありがとうございます。
そうだ!おばばはキョーレツなのだ!
そう思うと、とても気持ちが晴れ晴れとします!!
夏にお会いしたときの
いまねえさまの佇まいが素敵で。素敵で。。。
こういう「素敵な女性」にお目にかかることが
ひととひとの行き交う場所
「街」の悦びだな~と思っております。
お世話になりました。
ありがとうございました!!
サヴァラン
Naomi さま!
ぶらんにゅー50代仲間!
はぐっ!!!
つま先
ほんっと どこを向いてるんだか。。。
でも、40代突入のときより
なんだか肝が座ってるんです。
40代の入り口は
思いかえせば、めちゃめちゃ悲壮感漂ってました。。。
あれに比べて
今のこのどっかりした「太っ腹ぶり」は
いったいぜんたいなんなのだろうかと。。。
「オバ40」で
みなさんとワイワイおしゃべりできたことが
とてもとても大きかったなー
そう思っています。
Naomiさん、素敵なヘッダーありがとうございました!
たいへんお世話になりました。
この御礼は、「鯖節」でとったお味噌汁ででも~!
おふね?
サヴァラン?さま
ご無沙汰でござります
ワタクシめ 来年の還暦にむけての女装 ちゃうちゃう 助走ちゅうのか あがきちゅうのか
50代最後を楽しんでおります
壁打ちを続けていたのに
ある日 キャッチボールも いいのでは と 思い始め。。。
あれよ あれよ と 球数が増え。。。
あれっ まてよ どっち向いてんだ ドッチどっち
ドッチボールは 無理ムリ むりむりムリヤネン
で
ピッチングマシーン変身っ なら いけるんじゃね
相手が受取ろうが 打ち返そうが 見送ろうが
そんなのかんけーねぇ 。。。 よしおさんの筋肉の付き方好きっ
てな 日々を過ごしております
はい 4月1日の たわごとでした
サヴァラン
わ~。きゃ~。
おふね?さま!!!
ブログ
ときどき拝見しながら
「うん。うん。」と、念だけの送信で失礼してしまいました。
ここ3年くらいの間に
いろんな投球方法をお試しですよね。
>相手が受取ろうが 打ち返そうが 見送ろうが
>そんなのかんけーねぇ
>よしおさんの筋肉の付き方好きっ
ああ、今、喉がごくりとなりました。
吉谷桂子さんの〇○〇〇は苦手だけど
よしおさんの筋肉の付き方は好き。
ああ、たしかに、同感っす。
ちょっともう一度コピペしていいっすか?
>相手が受取ろうが 打ち返そうが 見送ろうが
>そんなのかんけーねぇ
そうだ!
ボールは投げたいひとが投げればいいんだ!
おお~ 雲が晴れる感じです!!!
おふね?さま
ありがとうございます。
ありがとうございます。
有難く存じます。
はぐっ。