アップルおばさんがいるよ: 水茄子の酢醤油和え
私は心霊現象というものを信じていません。
心霊写真も、金縛りも、
タクシーに乗り込んでは座席をびしょびしょにして姿を消す髪の長い女も、
なんらかの勘違いや、偶然のようなものが巻き起こしたものだと考えています。
以前もお話ししましたが、私は以前カナダのビクトリアという街で
一軒家の地下室を借りて暮らしていたことがあります。
ある日、私は体調を崩して寝室で寝ていました。
熱のせいか、眠りと覚醒の間を行ったり来たりするような、なんともふわふわとした状態で
ベッドの中にいました。
その時、玄関のドアがすっと開いて、女の人が入ってくるのが見えました。
ぼんやりした意識の中で、顔や、容姿のディテールをはっきりと認識することはできません。
でも、女性だったのは確か。
その人は、リビングを抜けてまっすぐ寝室へ向かってきました。
寝室のドアを抜けて、部屋の中へ入ってくる気配がします。
カーペットが敷きこまれた床の上を人が歩く気配が確実に伝わってきました。
物体に押されて空気が動く感覚。絶対に何かがそこにいる。
そして、その気配はベッドのすぐ脇で止まり、
次の瞬間、私の頭に優しく手が置かれました。
今まで味わったことのないような安心感。
回復してからも、あの手の感触はしっかりと覚えていましたが、
熱に浮かされて見た、妙にリアルな夢だったのだろうと思いました。
だって、私は心霊現象というものを信じていませんでしたから。
それから数カ月経って、部屋の大家さんであるニーナと話をしていた時の事。
「そうだ、ミカスには言ってなかったわね。
あの部屋にはね、アップルパイレディがいるのよ」
は?
「買った後にリフォームをしたから今はこういう間取りだけど、
リフォーム前は、もっと古臭い家だったの。
だいぶ歴史があるみたいでね、売り主から聞いた話では、昔々には
とても美味しいアップルパイを作る女性が住んでいたんですって。
キッチンでパイを焼くのが大好きだった彼女は、亡くなってからも自分のキッチンに
住まい続けているって。
そのキッチンがね、今あなたが住んでいる地下室にあったのよ」
それを聞いた時、私は思いました。
「事故物件かよ?!」
だって、私は心霊現象というものを信じていませんからね。
その時期、私の部屋には日本から遊びに来ていた友人とその妹が泊まっていました。
ニーナとの話を終えて自分の部屋へ戻った私は、
妹ちゃんにアップルパイレディの話をしました。
「アップルパイレディって、ねぇ(笑)」
すると妹ちゃんが言いました。
「だから、ミカスちゃんの部屋っていい匂いがするんだね。
初めてこの部屋に入った時から、バターが焼ける匂いがしてるもん。
ミカスちゃん感じないの?」
へ?
いや、だってほら、私は心霊現象というものを信じていない・・・
ええーっ?!
<ずっと焼き続けているのだろうか>
あの日、私の部屋に入って来て、熱にうなされる私を気遣ってくれたのは
アップパイレディだったのでしょうか。
いまだに私は心霊現象というものを信じてはいないけれど、
あの日、頭に置かれた手の感触は確かなものだったと思うのです。
怪談=夏、なんていうのは、もう昭和の考え方でしょうか。
子供のころは「あなたの知らない世界」なんて番組にキャーキャー言うのが
夏休みの常でしたが。
アップルパイレディの話では涼しくなれなかったでしょうけれど、
体を冷やす働きがあると言われている茄子でひんやり効果を狙ってみては
どうでしょうか。
今日のレシピは、超簡単な『水茄子の酢醤油和え』。
『水茄子の酢醤油和え』
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心霊云々というと、どうしても怖いと思い込んでしまいがちですが、
ひょっとしたら、心優しく守ってくれる不思議な存在というものも
あるのかもしれませんね。
とはいえ、私は心霊現象というものを信じていませんけどね。
ミカスでした。
ゆうちゃ
ミカスさん、こんにちは。
バターの焼ける甘い香りが漂う部屋で、アップルパイレディに会って優しく心配されたい…って、どんだけ淋しいねん!?オバケやで!!(笑)
異国の地下室で体調を崩されて心細かったミカスさんの前に、レディは確かに現れたのだと思います。
関係ない話ですが、今どきの子供も肝試しをするのでしょうか?子供時代の夏を懐かしく思い出します。
ミカス Post author
ゆうちゃさん
ぜひ、ゆうちゃさんもアップルパイレディーの優しさに癒されて欲しいものです。
肝だめしか…。
中学の夏休みキャンプでやりました。
確かに、今の子供たちはやるのかしら?
もしかしたら、肝だめしという言葉すらもしらないかも。