女殺油地獄 : 生麩田楽
少し前に
「若い頃苦手だった食べ物が年齢と共に食べられるようになるのは大人の特権」
と書きました。
子供の頃はあんなに苦手だったものを、大人になって「美味しい、美味しい」と
食べている不思議。
それはきっと、未熟な味覚では気づけない、
つまり、味覚が成熟していくことで気づく美味しさがあるということなんですよね。
(もちろん、何を美味しいと感じるかは人それぞれ)
が、しかし!
どんなに大人になろうとも、どんなに色々な物を食べようとも、
どうしたって好きになれないものがそこにある!
<負けられない戦いがそこにある! みたいな>
こればかりはきっと、
「それを食べたらお前はお地蔵さんに変わってしまうよ」
ぐらいの強さで遺伝子の中に埋め込まれた神様からの指令。
(どんな指令だよ・笑)
ある友人が言いました。
「自分の苦手な食べ物の話をする人ってよくいるけど、
なぜ嫌いなのか・嫌いになったのか、その理由を説明してくれないと
ちっとも面白くないんだよね、そういう話」
でもね、遺伝子の中に埋め込まれちゃったのだから
理由なんてそうそう簡単に言えやしない。
よしんば言えたところで、
そのほとんどは無理にひねり出した後付けの理由になってしまう。
私にも、子供の頃から、そして大人になっても好きになれない食べのがあります。
まず、ラーメン。
はい、聞こえてますよ。
沢山の方の(沢山の方が読んでいればですが)「えっ?!」という声が。
「ラーメンが苦手です」というと十中八九「えっ?!」と言われます。
そして「どうして?なんで嫌いなの?!」と聞かれます。
テレビや雑誌でしょっちゅうラーメン特集が組まれるラーメン大国日本。
その中でアンチラーメン宣言をするのは、
阪神の応援団の真ん中で『闘魂こめて』を熱唱するくらい異端であることは
百も承知です。
でもね、なぜ苦手かと問われてもその理由はうまく言えない。
温かいつゆに浸かった麺類が苦手で、中でも特にラーメンが苦手な理由は
私にもわからないのです。
ラーメンだけではありません。
スープカレーが苦手なのも、シフォンケーキが嫌なのも、
具がなくなった途端に味噌汁を飲む気がしなくなるのも、
なぜなの皆目わかりません。
ただひとつ、”苦手の理由”をはっきりと言えるものがあります。
お餅です。
人生52年、あと2ヵ月少々で53年(涙)、ずっとお餅が好きになれません。
お餅を好きになれない理由は2つ。
1. いつ飲み込んだらいいのかがわからない
2. お餅自体に味がなく、味付けをしたとしてもしみ込まない
お団子、白玉といったもちもち系のものも、この2つの理由で苦手です。
なので、元旦のお雑煮も、私は毎年餅なしで食べています。
ただし、この2つの理由を吹き飛ばしてしまう唯一の調理法があります。
それは…油で揚げる。
コアなミカ料読者の方(いないか)はお気づきかもしれませんが、
以前、こんな一品をご紹介しました。
飲み込むタイミングがわからないようなやわやわもちもち食感も、
揚げることで回りがカリッとしっかり食感に変わりますし、
油の風味がお餅の中までしみ込んでまるで別物。
<ベッキーとくっきーのベッキーくらい似て非なるものね>
げに恐ろしきは油の力。
今日は、その手法を使って、もちもちなのに美味しく食べられる一品をご紹介します。
あ、「もちもちなのに美味しく」っていうのは私の感覚ね。
『生麩の田楽』です。
もっちりとした生麩の外側をしっかりと焼くことで、
外側がカリッとして、香ばしく仕上がります。
『生麩の田楽』
- 柚子味噌を作ります。
柚子は皮をすりおろします。
皮の内側の白い部分まですりおろさないよう気を付けて。(苦いよ)
降ろした後の柚子の汁を絞っておきましょう。 - 鍋に、味噌、砂糖、みりんを入れて火にかけます。
最初は弱めの中火、材料が混ざり合ったら弱火にして
焦げつかないように混ぜながら加熱します。
全体的に滑らかになったら火を止めておきます。
※柚子味噌のレシピを検索すると、多くが白みそを使っていますが、
私はいつもお味噌汁に使っているものを使っています。 - 生麩を食べやすい大きさに切ります。
- フライパンに油を引き、3の生麩を加えて焼きます。
揚げるというほどではないのですが、
少し油を多めにして両面をしっかりと焼いてください。
そうすると表面がかりっと仕上がります。揚げ焼きのイメージ。 - 生麩が焼き上がったら、2の味噌に再び火を入れましょう。
柚子のしぼり汁とすりおろした皮を加え、さっと加熱。
※加熱しすぎると柚子の香りが弱くなってしまうので、
鍋に加えるのは最後に、加熱は一瞬で! - 4の生麩に柚子味噌を乗せたら出来上がり。
味噌を乗せたものを更にオーブントースターで焼いても美味しいです。
ただし、くれぐれも加熱しすぎて柚子の香りが飛ばないように。
ひょっとしたら他の苦手な食べ物も油でガンガン揚げちまえば
食べられるのか?なんてとんでもない油まみれ生活を描いたその瞬間、
かかりつけ医の先生から
「さすがにそろそろ痩せなきゃねぇ。
油物ばかり食べてると取り返しのつかないことになっちゃうよ」
美味しいんだけどなぁ、油。
美味しさを取るか、健康を取るか。
あぁ、ある意味、女殺油地獄です。
ミカスでした。
koko
ミカスさま、
初めまして。毎回楽しく拝見しています。
今回の、大人になれば味覚が成熟して、好き嫌いがなくかるっていう説、私もそう思っていたのですが、実は別の説もあるのです。
大人になるにしたがって、味覚が鈍感になって、なんでも食べれる、というもの。
確かにセロリや椎茸の独特の香り、子供の頃は敏感に感知できていたのかな、とも感じます。確かに成熟ではなく、劣化かも?
何はともあれ、今なんでも美味しく食べれるのを謳歌しているので、どちらでも構わないですけれど。
これからも更新楽しみにしています。
毎回
はしーば
ミカスさん、こんにちは。
生麩を焼いて食べる発想はなかった!
私はミカスさんとは反対に無類のモチモチ好きですが、無類のカリカリ好きでもあり、これはモチカリ好きには堪らん一挙両得な料理です!
紹介していただき、感謝です〜。
女殺油地獄、近松のタイトルがまた、洒落オツですなぁ。
ミカス Post author
kokoさん
初めまして。
いつも読んでくださってありがとうございます。
ミカス感激でございます。
さて、味覚の劣化ゆえに食の好みが変わるとは、目からうろこ!
そうですよね、そういう考え方もありますよね!
となると、劣化は劣化でも、ちょっと素敵な劣化ですね。
劣化したことで楽しめるものが増えるなんて。
ああ、素敵な感覚を教えていただきました。
ありがとうございます。
愚痴だのバカ話に溢れた記事ばかりですが、これからもお付き合いいただければうれしいです。
ミカス Post author
はしーばさん
こんにちは。
生麩、外側に焼き色がつくくらいに焼くと美味しいですよ。
もちもちもカリカリもお好きなら必ずや気に入っていただけるはず! はず!
ぜひお試しください。
共に女殺油地獄へ堕ちましょう。