11月21日はカレー記念日

カレー記念日

普段着と 仕事着 それしか ありません

11月21日はカレー記念日

月亭つまみ

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カレー記念日とは?

加齢を実感したら、それはカレー記念日。
抗ったり笑い飛ばしたりしながら、毎日華麗に加齢していきましょう。

あなたのカレー記念日も、教えてください。
五七五七七形式で、下の句は「○月○日はカレー記念日」なので
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なんかすごい。

偶然と天ぷら油

 先月、忙しさにかまけてひと月お休みしてしまいました。いつも読んでくださっている方がもしいらしたら、ふがいなく、申し訳ないことでした。

**************

 先日、じいさんの本を納品した帰り、喫茶店で休けいした。
納品先の本屋さんで、読みたいマンガを買えたので、電車に乗る前にもう読んじゃう。我ながらがまんがきかない大人だなと思う。
窓際のひとり席にうまく座れたので、さっそく読み始めたのだが、先客である、ななめ後ろのテーブルの、女性3人の話題がどうも気になる。

 年の頃は、50代〜70代。3人ともはつらつとしている。
話題は、美容や健康について。
ありきたりである。女3人集まって話すこととして、これほどありきたりな話題もないであろう。
ではなぜ、私は気になってしまうのか。それは、彼女らの会話に霜降り牛のサシのように挟み込まれる、不思議な運命論とでもいうべきコメントの数々である。

 例えば、彼女たちはイボを取る話をしていた。

「○○(聞きとれず)を使い続けてたらさ、顔のイボなんかもとれちゃうわけ」

「レーザーなんかでとるのは、よくないのよね。無理やりはダメ」

「そうそう、自然にぽろっと取れるんならいいけどさ、イボがあるのにもわけがあるわけだから」

「なんかあんのよ、イボができるってことはさ、発信、体からの」

「発信」

発信、体からの。
そのメッセージを伝え終えたとき、イボは使命をまっとうして、自ら落下しその命を終える…。
しかし、多くのイボが伝えてくるメッセージは、端的に言って「老化」である。

 3人の話は続く。

「なんかさ、痣とかいろいろあるじゃない、病気とかも。」

「でも、ぜんぶ意味があると思うわけ」

「そう、どうしてこの人のとこにきたかっていうね」

 ……でたな!「すべての事象には意味がある」説!

 このバリエーションとして、「ありのままがいちばん」説、「神は乗り越えられない試練はお与えにならない」説、「家族(もしくは世の中)に何らかのメッセージを伝えるべく生まれた(もしくは病気になった)」説、「ママを選んで生まれてきたよ」説、ぜんぶひっくるめて「のぶみ」説等がある。

 この匂いあらばこそ、彼女たちの会話は、私のマンガへの集中力を削ぎ、あまつさえマンガを読むふりをして立ち聞きせしめるのである。

 我ながら、ちょっとせいかくがわるいな…と思いながら、引き込まれてずっと聞いている。

 すべての事象には、ほんとうに意味があるんだろうか?

 そのまま話を聞いていたら、自然食や、漢方や、そういうことに興味があって、いろいろ活動もしている人達らしかった。はつらつとしているのはそれでかあ。

 たとえば、自然食や漢方を生活に取り入れていて、よく勉強もしていたら、きっと、たとえば食べたものがどんなにか自分の体に直接影響をおよぼすのか、また、漢方というものが、循環という、体の中だけでなく、森羅万象にかかわる考え方に基づいているのだ、ということが体感としてわかる。
その実感が、「すべての事象には意味が…」という理論(観念?)につながるという流れは、なんだかわかる気がする。みんなそうだということではもちろんなくて、思考の親和性みたいなものとして。
それは、因果応報というのと、ねっこは少し近いかもしれない。

 でもじっさいには、健康に人いちばい気を使っている人が、突然病気になってしまうし、体に悪いことばかりしているじいさんが、嫌われているのにものすごく長生きしたりする。いい人が報われることなんて実際にはほとんどなくて、悪いやつばかりが私腹をこやして、いばっている。
それが、生まれつきのものだったら?因果応報っていうなら、前世?前世なのか?

 その理不尽さが、たとえば自分や、自分の大事な人にふりかかってきたら、そのときは、もしかしたら自分だって、その現実を受け入れるために、「すべての事象には意味がある」論が必要になるのかなあ。

 どうしてこんな思いを、何も悪いことをしていないのに。そう思うのが自然の心だと思う。そして、だれもそれに答えてはくれない。そんなときに、必要な物語なのだろうか。私がまだ、そのような状況におかれたことがない、幸せノーテンキなにんげんだから、このようにシニカルなことを思うのだろうか。

 幼くして喪われた命、英霊にされた兵士。個人、国家、ありとあらゆるレベルで生産される、残された人々のための、ヒロイズムの物語。どうして、意味がなかったら、浮かばれないと思うのだろう。

 また、もしか世の中を理解しようと思ったら、私達はすぐさま、この世のありとあらゆるものは、複雑に(あるいは直接に)かかわり合って存在しているということを、知ることになる。

 風がふけば桶屋が儲かる、ということわざを引き合いに出すまでもなく、一歩外に出れば、知らずにアリを踏みつぶしたり、草の種を靴底に付けて、遠くに運んだりしている。アメリカと日本、どっちかの夜は昼間なんである。
すべての学問は、単体で確立しているものなど一つもない。

 そのことを知るということと、「すべての事象には意味がある」論は、一見似ているような気がする。でも、一番違うのは、この世は複雑にからみあっているけれど、意味があるとは限らない、ということだ。

 誰かが酩酊してやみくもに投げたダーツに、ジョークで猛毒が塗ってあったりするようなものである。目に見えない大小の矢が降り注いでいるのに、見えないのをいいことに、平気で歩いている。ときどき矢が刺さって、恋に落ちたり、大金持ちになったり、死んだりする。ひどい。もう少し責任を持ってやってもらいたいと思うが、仕方がない。

 その「偶然」が、人によって、「必然」だったり、「運命」だったりするのかな。
きっとわたしも、都合よく使い分けている。
そして、偶然を偶然のままに、よく観察し、できることをやり、歩き続けている身近な(と私は心で思っている)人の、しなやかさと強さと弱さについて、考える。

 この世の関わりのなかにおける、「わたし」や「大事なひと」の存在を、どう扱うか。
それが大きければ「すべての事象には意味がある」派になり、小さければ、「偶然」派になるのかと思いがちだが、もし前者が「意味」イコール「価値」と思っているなら、たちまちそれは逆転する。

 そして、もんだいは、「誰がそれを言うか」ということである。
他人がそれを言い出したり、当事者の、それは、家族や友人である場合もあるのだが、必死に向き合って消化した末の言葉を、誰かが教えのように語り出したりすると、それは人を「価値」や「物語」の型に入れようとする、呪縛の言葉になってしまう。

 そのようにして、たくさんの人達が、誰かが作った物語を背負わされて、生きなければならなかったし、それに背中を押されて、死んでいった、そのことを、単に個人の問題として、片付けてしまってはいけないような気がする。

 立ち聞きでずいぶん遠いところまで頭が飛んでいってしまったが、3人のおしゃべりはまだまだ続く。

「マクロビの人ってすごいのよ、なんか、雰囲気なんかスーッとして穏やかになっちゃうの。で、先生がいいって言えば、食用ミミズだってなんだって食べるんだから。すごいわよ。」

これは、褒めているのか。

「でも先生は、こないだ喫茶店でハムサンド食べてらした。ぜんぜん、ふつうよ。」

これも、褒めているのか…?(マクロビは、本来肉NGではないそうです。)
口調はすごく、褒めている。

 そしてしばらくすると、話題はひとつの不思議な物体のことに移った。

「……油に入れとくと、一生油が悪くならないの。一生。ぜんぶの油に必要ないけど、天ぷら油の中にいれとくだけでいいのよ、一生変えずにすむから。ワインなんかもまろやかになるし、でもビールとか炭酸はダメ、ぜんぶ気が抜けちゃうから。すごいわよ、ポテトチップの上なんかにおいとくと、ぜーんぶ油が抜けて、カッサカサになっちゃうんだから」

なんですかそれは!
最初がよく聞き取れなかったのだが、鉱石的なものなのか。そして天ぷら油に関しては、「ありのまま」でなくていいのですか。
ものすごく気になったが、商品名や形態といった具体的な情報は得られなかった(だから話聞き過ぎだろ)

「で、それ、いくらなんだっけ?高いんでしょ?」

「5万○○円。でも、私最初から高いと思わなかった。一生ものだもの。みんなにすすめるわけじゃないけど」

5万かー。絶妙な金額だ。
でも、一生分の天ぷら油って…5万円分も使うだろうか。
天ぷらが大好きな人なのかもしれない。

By はらぷ

※「なんかすごい。」は、毎月第3木曜の更新です。はらぷさんのブログはこちら

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コメント、ありがとー!

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    okosama

    はらぷさん、全然シニカルじゃないと思います。
    ついさっき、電話で叔母から意味と運命を背負わされそうになったところなのです。叔母さんに言われるまでも無く、既に私は担当者なんですけど?私以外に居ないから!とプンスカしながら抵抗しました。今日この記事を読んだのは、もちろん必然です(笑)

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    Jane

    はらぷさんの熟成されたお話と語り口が好きですので、ごゆっくりお書きください。

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    はらぷ Post author

    okosamaさま

    こんばんは!
    おお、なんというタイミング!これはまさに「必然」です(笑)
    意味とか運命とか、自分で「転んでもただでは起きないぜ」とか、「こんな体験でも、何か役に立つときがあるもんだなあ、人生の妙よ」とか思うのはいいのですが、部外者(あえてこの言葉を使っちゃう)からいわれると、たちまち「違うだろ」って思いますよね。「誰か」や「役割」のために、自分の人生あるわけちゃうよ。
    プンスカ抵抗したokosamaさんは、やっぱり素敵です。

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    はらぷ Post author

    Janeさま

    こんばんは!いつも嬉しいコメントをありがとうございます。
    いろいろと、あっちゃこっちゃ散らばって、とりとめのない文章になりました。
    書いていて、「ああいうこともあるな」「こういうことも言えるよな」といろんな路地に入り込むような気持ちになって、回収するのが大変でした(というかできてない(笑))
    人と話したらまた思わぬ方向に転がって、面白そうだなあ。

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    ぐみ

    こんにちは!
    興味深く読みました。
    因果応報があるとは思うけど、この世の不条理というのも確かにありますよね。というか世の中不条理だらけ。交通事故のニュースなんてまさにそう。その中で折り合いをつけて必死に生きていくしかないのですよね。
    変な方向にいくと、アヤシイ宗教やスピリチュアルに向かってしまうので気をつけないといけません。心の隙間に入ってきますから。
    それにしても知らない人同士の会話って面白いですね。

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    AЯKO

    一体5万円の何を油に入れるのか、物凄く気になりますね!そして他人の話は、電車で私もめちゃくちゃ聞いてます(笑)。性格悪くないよ、ご安心を。

    イスラム世界では「すべての事象に意味がある」のところを「神様が決めたことだから」でくくるんだよね。他人に言われたら憤慨するに違いないけど、波乱万丈な当人が語るんだから、もう何も言い返せません(笑)。
    意味=価値とは思ってなくて、ただ淡々と受け入れるので、精神的に楽とも言えます。
    でも大災害や理不尽な死を迎えた時に、私が同じように思えるかは自信ありません。未熟者なので。

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    はらぷ Post author

    ぐみさん

    お返事が一ヶ月後になってしまい、大変申し訳ありません…!!

    世の中ほんとうに、不条理なことのほうが多いくらいですよね。
    それが我が身に起きるまで、ゆめゆめ想像もせずに平気で生きていっているということも、にんげんのたくましさ、生きる知恵かもしれないと思ってしまいます。
    みんな、何かしら理由付けをしたり、何かにすがったり、諦観したりして、折り合いをつけ生きている、それが自然な心のありようかもしれませんよね。

    アヤシイ宗教やスピリチュアルも、自分がそれで楽になる分には好きにすればいいんだけどねえ、人にすすめなければねえ。
    と思うけれど、人にすすめてこその「アヤシイ宗教」であり「スピリチュアル」であるわけだから、ゆうでもダメかあ。

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    はらぷ Post author

    AЯKOさん

    毎度毎度お返事が遅くて、ひらにひらにお許しを…!!

    5万円の何か、気になって気になって、帰ってからいろいろキーワードで検索してみたのですが、全然わかりません。
    揚げ物を食べるたびに思い出してしまいます。

    普段から人の話をきょうみしんしんで聞いている人がこんなにいるということに安心しました(笑)でもそれは自分の会話も聞かれているということでもあるな…。

    「神様が決めたことだから」というのは、まさに人間の智慧であるなあと思います。
    そうやって受け入れないと、抱えきれないことが、きっと今よりもっともっとあったに違いない、いや、今も常にどこかで起こっていますよね。

    受容と、その中でできるかぎりよりよく生きるということは、そこに無意識下の心理的抑圧、従属、という可能性・こわさもひそんでいるのだけれど、やっぱり、人の持つ美しさのひとつだと思います。
    自分もそうでありたいけれど、現実には呪詛を吐きながら死んでいく気がします(笑)

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