10年 :おからのおやき
明後日で東日本大震災から10年です。
あの日、あなたはどこで何をしていましたか。
私は、北関東の自宅にいました。
自分の部屋で仕事をしている時、ただごとではないと感じる地鳴りを座ったお尻に感じ、「来る!」と揺れ始める前に部屋を飛び出しました。
最初はさほどでもなかった揺れは、少しずつ大きくなっていきます。しかも、全然収まらない。
茶の間に駆け込み、掃き出し窓から庭へ出て、そこからぐるりと玄関へ回り…。何故そんな動きをしたのか自分でもわかりませんが、庭へ飛び出した瞬間、見上げた空にたくさんの鳥が飛んでいたのは今でもはっきりと覚えています。
それから何分間だったのか、玄関前の細い柱にしがみつきながら「ああ、もう全てが終わってしまうんだなあ」と考えていました。
震度6弱でした。
やっと揺れが収まった時、情報を得ようとテレビの電源を入れましたが、既に停電していて付きません。台所では食器棚の扉が外れて床に割れた食器が散乱していました。片付けている最中にも大きな余震がありましたが、不思議なもので、まったく怖いと感じませんでした。感覚が麻痺していたのか、逆に高ぶり過ぎていたのか。
その後、お互いの無事を確認するため、ご近所さんたちが私の家の前にある小さなスペースへ集まって来たのですが、その中の1人が小さなラジオを持っていました。
「東京で建物が壊れて被害者が出ているみたい(九段会館での事故)」
「じゃあ震源地は東京?」
「茨城県沖に大きな津波が来るって」
「まさか。地震で津波注意報が出ても、毎回大したことなく済むじゃない」
情報を限られてしまった私たちは、この時、自分たちがいる場所以外で何が起きていたのか、全くわかっていませんでした。
結局、電気は翌朝まで復旧せず、私たち家族(その時は母も家にいました)は懐中電灯やろうそくで辛うじて灯りを得て、洋服を着たまま茶の間で横になりました。地元のラジオ局は休むことなく県内外の被害状況を流していましたが、その合間になぜか数分だけ流れるクラシック音楽が妙に気持ちを落ち着かせてくれたことを覚えています。情報の整理や原稿の準備のために必要な時間だったのかもしれませんが、どこかの町で火の手が上がっている、ある町の浜辺にたくさんのご遺体がある、暗闇の中でそんなニュースを聞き続けている私たちを「時々休まないと辛すぎるよね」と慮ってくれているようにも思えました。
翌朝、電気が復旧して付けたテレビに映し出された光景に、私は打ちのめされました。
それからはずっと、とても怖かったし、とても不安でした。
毎日続く震度4だの5だのという揺れは余震と呼ぶにはあまりにも恐ろしかったし、一日に何度も鳴り響く緊急地震速報に神経がすり減りました。
でも、あの時の私は「恐がってはいけない。間違っても恐いなんて言ってはいけない」と思っていました。もっと大きな揺れや津波を経験して、大切な人を、自分の生活を失った人の辛さを考えれば、私ごときに恐がる資格はないのだと。
だから頑張ったけれど、少しずつ心が疲弊していきました。私の心は、少し不バランスを失いました。
カイゴデトックスで参加者の皆さんとお話する時に、私は「介護の大変さを比べないで」と言います。「あの人の大変さと比べたら私なんて」と考えて我慢してしまう気持ちが痛いほどわかるからです。そして、その我慢はその人の心を追い詰めてしまうことも。
あれから10年です。
いまだにたくさんの人があの日背負ってしまった重いものを抱えながら生きているのだろうと思います。抱えることは仕方のないことだとしても、その重さや、形や、抱え方を決して誰かと比べずにいてくれたらと思うのです。
さて、今日の一品は、前回の「おからの煮物」をアレンジした「おからのおやき」です。おからの煮物ってどうしても大量に出来上がってしまいます。おからは足が早いけれど、そんなに一気には食べられないんだよねぇ。なんて話をしたら、妹が教えてくれました。
おからのおやき
- 小ぶりのれんこんの3分の2をすりおろし、3分の1を細かく切ります。
- 水分を絞ったすりおろしれんこんと細かく切ったれんこんをおからの煮物に加えます。
- 2に片栗粉を加えて混ぜ合わせます。まとまりやすい生地になるように様子を見ながら量を調整してください。
- フライパンに油を引いて温め、3を小さめの小判型に成形して焼きます。
- 元のおからの味の濃さにもよりますが、中濃ソースとかつお節をかけて食べるとお好み焼きのようで美味しいです。
【おしらせ】
1.月亭つまみとミカスのPodcast番組「That’s Dance!」は、ほぼ毎週土曜日に
配 信されます。
Apple Podcast、Google Podcast、Spotfyでお聞きいただけます。
(Google Podcastは反映されるのが遅くなる時があるようです)
Apple Podcast
Google Podcast
Spotify
2.ミカスが営む小さな英会話スクールでは、リモートレッスン受講生を募集中。
英会話初心者の方、ぜひ無料体験レッスンをお申込みください。
興味はあるけど最初の一歩が踏み出す勇気がないという方、今がチャンスです
詳しくはこちらから。
3.今月の在宅デトックスは満席となりました。4月以降の日程は近日中に
お知らせいたします。
また、カイゴデトックスでは新しい企画を準備中です。次回のミカ料で
詳細をお知らせしますので、お待ちください。
ミカスでした。
Jane
ミカスさん、つまみさん
第四回目聴きました。はらぷさんをゲストにお願いします!実際のお顔も拝見したことがなく(もし、猫に新聞読むのを邪魔されている写真の人がはらぷさんでなければ)私の中でミステリアスなベールに包まれた人なので~。
AdeleのHello、車を運転しながらラジオを聴いていると、一時頻繁に流れてきましたが(ついこの前のような気もするが実はけっこう前)、暗い穴に引きずり込まれるような気がしたものでした。思い出したくないことを思い出すような感じ。
私は冬の間、どんな音楽(クラシックでもヒーリングミュージックでも)を聴いても聞き続けられないほど、心が過敏になってしまった時期がありましたが、小野リサが歌ったユーミンの「あの日にかえりたい」は聴けました。
つまみ
Janeさん、いつもお聴きいただき、ありがとうございます。
ゲストにはらぷ、のリクエスト、ありがとうございます。
ゲスト候補のリストに入れさせていただきます。
たぶん、あの新聞を読んでいる人ははらぷさんではないですが、はらぷさん、アイコンと同じ顔です。
中島慶子画伯、さすがです。
心が過敏になると、聴けない曲があるってわかります。
亡くなった長兄がニール・ヤングが好きで、特に「ライク・ア・ハリケーン」を繰り返し聴いていたせいで、亡くなってしばらくは、この曲を聴くことができませんでした。
Janeさんとは方向性の違う過敏さだとは思いますが、音楽は、時に言葉や文字より、ありありと心象風景を映し出したり雄弁だったりして、無限の「言外」の思いがいっぺんに胸に迫ることがありますよね。
ミカス Post author
Janeさん
今回も聞いていただき、ありがとうございます。
「Hello」は、曲の雰囲気からして地の底から湧くよううな、地の底へ引かれていくような感じがありますよね。
私はあの地を這うようなパワーが好きというか、心にしみました。不本意な形で別れた人の今が気になるけれど、でも、もう触れ合うべきではないだろうと思いながら、その人が穏やかな日々を送っていることを祈る。自分の身に置き換えて、切なくなります。
まぁ,私の経験なんてアデルの歌ほど劇的ではありませんが。
Jane
つまみさん
カリーナさんとはらぷさんには、そのイラストから、私が自分の知人のイメージや声を勝手に重ねていました。カリーナさんにズーム介護デトックスでお会いして全然違っていてびっくりしました。そういうふうに、自分の知っている人と見た目が似ているからと、まだ良く知らない人に先入観を持つことってあるなあと思います。
ミカスさん
私は「穏やかな日々を送っていることを祈る」という心境にまだ到達していないのだと思います。言葉では祈りながらも、100%本心ではないな、とちらりと思っています。
ミカス Post author
Janeさん
私もですよ。
まだ少し気持ちが残っていたり、まだ恨んでいたり。
恐らくこの歌の主人公も、そんな「名残」を引きずっているような気がします。
Jane
ミカスさん
そう!謝るふりして、実は恨んでる。そして、向こうにも、引きずっていてほしい。
ミカス Post author
人の心はスイッチを切り替えるようにはいきませんものね。
こうまさん
ミカスさん、つまみさんの「That’s Dance!」
毎回、週が明けてから聞いています。
わかる話題も、わからない話題も、楽しいです。
だって、ふつうの女性がふつうにいろいろ喋るって番組は
ほかにないですもの。
お二人の話してる部屋の天井あたりでニコニコして聞いている気分ですよ(笑)
番組の枠がこちらのトップページにあると
お便りを送りやすいと思うのですが。
「お便りコーナー」「旬の食材」とか、
「ワンポイント英語レッスン」とか?
(プロにただで教えてもらおうなんてムシのいい・・・)
Podcastは、「いんよう!」という番組が大好きで聞いてます。
その番組でも1度だけ、YouTubeでライブ配信があったのですが、
That’s Dance!でも、ライブ配信があるといいな!
チャットでわいわい言いながら参加してみたいです。
毎週、って大変な時もあるかもしれませんが、
無理のない範囲で
続けてくださると、とっても嬉しいです。
ミカス Post author
こうまさん
聞いていただき、ありがとうございます。
そうなんですよ。普通の女性が普通に喋っているだけなんです。なのに聞いてくださる方がいるというありがたさ。
ライブ配信、いつかやってみたいです。
ゲストも呼んでみたいですね。
呼んでもやるのは雑談なんだけど(笑)
録音の時は、毎回こうまさんが天井あたりでニコニコして聞いてくださってると思いながら喋ることにします。これからも、どうかThat’s Dance!をご贔屓下さいませ。