いま、隣で泣いている。
over40の原稿を書こうと思い、朝からスターバックスに来ているのだが、いま、隣でたぶん僕と同じくらいの年かさの男性が泣いている。真横にいるのですが、マスクの下でグスグスと鼻を鳴らし、涙を流している。
さて、どうしたものか。なぜ泣いているのかはわからない。僕がこの席に着いたときにはすでに座っていたので、おそらく30分以上はここにいる。そして、僕がこの席に着いた瞬間にはおそらく泣いていなかった。泣いていたとしたら、たぶん気づいていたはずだから。もう、かれこれ10分ほど、男性は泣き続けている。グスグスは言っているが、鳴き声はあげない。泣いている事を悟られたくないのか、涙は拭わない。それでも、細く涙が流れ続けている。なんとなくだけれど、いまはもう涙が収まるのを待っている気がする。なんとなく表情が落ち着いてきている気がする。真横だから見にくいのだけれど。
僕は言えば、彼が泣いていることに気づいてから、ずっとなぜ泣いているのかを考え続けている。同じくらいの年齢の男性が泣いているのだ。僕が泣きそうになった。または最近泣いたことを思い出せばいいのではないかと考えた。考えたけれど、そんなことは山ほどあって、しかも、もうすぐに彼のことなど忘れて自分が泣きそうになった、または泣いてしまったここ数年の出来事を思い出しているうちに、僕自身もいま泣きそうになっている。
いかん、いま泣いてしまうと、朝のスターバックスに席を並べて泣いているおっさんが2人いることになる。そうなると、この2人はどんな関係なのかと勘ぐられてしまう。いかん、泣くな俺。泣くんじゃない。隣のおっさん、理由は知らんが、お前もとりあえず泣くな。頑張れ。そのうち、良いことがあるよ。うん。人生すてたもんじゃないよ。たぶん。
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。現在はコピーライターと大阪ビジュアルアーツ専門学校の講師をしています。東京と大阪を行ったり来たりする生活を楽しんでいます。
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Jane
ここで植松さんがおじさんに話しかけたらどうなってただろう、とか想像してしまいました。きっと植松さんも泣いたら、会話のきっかけになったかも。
私は、おばさんになってから、泣きたいときにはどこでも泣いてしまいます。そんなに我慢しなくていいような気がします。まあ隣に座った知らない人の心を波立たせるかもしれないけれど。
uematsu Post author
Janeさん
僕が泣いてたとしたら、話しかけられたくないので、僕も話しかけないですねえ。
結局、おじさんは僕よりも先に、きりりと顔を引き締めて出ていきました。