はじめての稲川淳二。
眠る前によく落語を聴く。桂米朝や桂枝雀、笑福亭松鶴など、自分のCDから取り込んだ噺を聴きながら眠るのが癖のようになっている。でも、手持ちの噺は一通り聴いたので、というか何度も何度も聴いているので、たまには小説の朗読物なんかを聴くこともある。
で、なんか毛色の変わったものはないのかと、Apple Musicで「怪談」と検索しちゃったのだ。そして、検索結果に出てきたのが『稲川淳二』。うわ、あるのか!と驚きつつもリストを眺める。以前、テレビとかで聴いたことのある題名もあれば、聴いたことのないのもある。
えらいことである。なにしろ、僕は怖がりなのだ。怖がりなのに怖いものを見たり聴いたりしたがるのだ。で、結局見たり聴いたりして、しばらく夜中のトイレを我慢したりするのだ。
稲川淳二の怪談が本物なのか作り話なのかはよくわからない。よくわからないけれど、なんだか普通のおっさんが飲み屋で話し始めるような感じに、引き込まれてしまうのだ。
いかん、このままでは聴いてしまう。聞いて、怖がってしまう。そこで僕は「本数が多すぎて、どこから聞いていいのかわからない」というふりをしようと、Apple Musicの「稲川淳二」の「トップソング」や「アルバム」の項目を眺めてみた。「ほら、項目が多すぎるよね」と独りごちる。すると、アーティストプレイリストというのが飛び込んできて、そこに「はじめての稲川淳二」という文字が。
「はじめてのサザンオールスターズ」とか「はじめてのQUEEN」とかは見たことはあるが「はじめての稲川淳二」って…。
そう思いながら、僕は「はじめての稲川淳二」のいちばん上にあった「公団のはしゃぎ声」というやつをクリックしてしまったのだった。それが2日前。以来、僕は毎晩、稲川淳二の怖い話を聞きながら、怖くて眠れなくて、眠れないなあ、と思いながら知らない間に眠ってしまう、と言う恐ろしい日々を過ごしているのである。
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。現在はコピーライターと大阪ビジュアルアーツ専門学校の講師をしています。東京と大阪を行ったり来たりする生活を楽しんでいます。