歓喜の歌 第三楽章 灯り
気が付くとご近所の桜の木が3分咲きになっていたので、せっかちさんだなあと思っていたら開花宣言が出ていたんですね。今年もあっという間に過ぎていきそう。
楽譜は手に入ったもののどの部分を歌っているかわからなくなった2回目の練習で、眼も頭も気持ちも疲れてしまい、迎えた3回目の練習日は一度身支度をして玄関の外まで出たものの、初冬の冷たい雨に残っていたほんの少しのやる気も流されて、結局練習はサボり猫たちと暖かい部屋でゴロゴロしていました。
そして4回目の練習日は前回とうって変わって小春日和。お日様を浴びたせいか気分も上向いて練習会場に行きました。けれど練習が始まってみれば前回と変わらずすぐに迷子になり、これは続けられないかもと、休憩時間に解りもしない楽譜を眺めながらぼんやりと考えていました。
「よかったらどうぞ」りんごのイラストが描かれたのキャンディが2つ、目の前に差しだされました。顔を上げてみると同年代くらいの明るい笑顔のお隣の席の方でした。ポカポカした今日のお天気みたいな人というのが第一印象。お礼を言ってキャンディを受け取りながら「第九は前から歌っているんですか?」と聞いてみました。
「そうね、何回か歌ってますよ」使っている楽譜も使用感のあるベテラン仕様です。お話を伺ったところによると、第九の合唱を募集していると聞いたらスケージュールが合えば参加しているのだとか。「私は今回初めて参加したんですが、先生の楽譜と違うのでページも違うしどこを歌っているかわからなくなっちゃって」と話しました。
お隣さんはキャンディを口入れようとした手を止めて「それなら私の前の席が空いているから座ってみたら?後ろから私の歌声が聞こえるから合わせて歌えるでしょ」と提案してくれたのです。なんて良い人!私はさっそく彼女の前の空いた席に移りました。
休憩が終わり練習が再開されると確かに彼女が言ってたように、まるで後ろにスピーカーを置いたように歌声が聞こえてきます。これなら迷子にならないかも。
けれどまだ暗記もしていない慣れないドイツ語の読み仮名を読んでいる分、周りよりも遅れてしまうのです。そしてまた迷子になりかけた時、後ろから身を乗り出して「ここよ!」と歌っているところを指差してくれたのです。
メシアが現れた。希望の小さな灯りが見えた気がしました。
これからはこの人の前に絶対座ろう。そう決めた私は次の練習日から練習会場に入ると、まずりんご先輩(りんごのキャンディをくれたから)と心の中で名付けた彼女を探し、必ずりんご先輩の前の席に座るようにしたのです。
Jane
好きだと思って始めたことでも、やっぱり嫌だと思ったら撤退してもいい、というのと、粘って居座ればいいこともあるさ、の両方がここに。
ゆみる Post author
Janeさん
雨の日の練習は休んで本当に良かったと思っています。もしあのまま重たい気持ちで参加していたら、辞めていたかもしれません。休んだり、様子を見るというのも大切だなと実感しました。実際この合唱は初め90人以上のメンバーで始まったのですが、5か月後に残ったのは約70人。勇気ある撤退を決断した方は20人以上いたのです。人生は有限だから損切も大切、でも難しくもありますね。
爽子
ゆみるさん、こんばんは。
心強い助っ人登場ですね。
よかったです〜。
ドキドキ💓しながら、練習に向かう姿を思い浮かべては、ガンバ!と両手を握りしめています。
楽しく、ガンバ❣️
ゆみる Post author
爽子さん、おはようございます!
りんご先輩がいなかったら第九の合唱は続けられなかったと
思います。この後から練習に行くのが精神的にもかなり楽になりました。
応援ありがとうございます^^