Posted on by Comet
<いろんな言葉>「でも忠告するよ。姉さんはもっと優しそうな顔をしたほうがいい」
市川崑監督の映画「おとうと」に出てくる台詞です。
三つ違いの姉弟は、揃って継母との折り合いが悪い。
次第に不良化していく弟と、それをかばう美しい姉。
やがて弟は結核で倒れ、帰らぬ人となってしまう。
幸田文の自伝的小説の映画化で
岸恵子が勝ち気な姉を演じています。
終盤、死期が近づいていることを察した弟は
姉に「高島田に結ってほしい」と頼みます。
それまでの地味な絣を脱ぎ
紫色の着物で島田に結った岸恵子は
恥じらいの表情を見せながらも、匂い立つように美しい。
弟は「立派だよ」嬉しそうにと褒め
「でも忠告するよ。姉さんはもっと優しそうな顔をしたほうがいい」
遺された姉は、いつか口角を柔らかくあげながら
傍に弟がいることを感じるのでしょう。
人の一生を支えるのは、こんな言葉ではないかと思うのです。