Posted on 2026年2月16日 by カリーナ
人には、切なくて、柔らかい「秘所」がある。みんな、お手柔らかに。
こんにちは、カリーナです。
こちらの記事を書いてから、ハルノ宵子さんの「隆明だもの」を読んでいます。「隆明」とは、ご存知の方も多いかと思いますが、2012年に亡くなった詩人・思想家の吉本隆明氏。ハルノさんが長女、ばななさんが次女ですね。
晩年の隆明氏の様子について書かれたこの本、バツグンに面白いです。
隆明氏は1996年の夏に西伊豆の海でおぼれ、そこから急激に体調を崩すことになります。元々、水泳が大変に得意で毎年夏は海で過ごしていたご様子。ハルノさんは、血糖値が急激に低下して意識を失いおぼれたのではないかと推測しています。糖尿病がかなり進んでいたんですね。
先に海に出た隆明氏に続いて、のんきに海に向かうハルノさんたち家族。救急車とすれ違うも「だれかおぼれたのかねえ」なんて言っていたら、警察官が「これは、こちらのお爺さんのものですか」と上顎の総入れ歯を差し出すのです。
ハルノさんは「お爺さん?うちにそんな人はいない」と思ったあとに、他人から見れば自分の父はまちがいなく「お爺さん」だと思い直します。そして
総入れ歯?と。
初めて見た。こんな立派な総入れ歯を入れていたのか。だとしたら、たいした見栄っ張りだ。家族にすら内緒にしていたなんて。
と続くのです。
本全体から見れば、なんてことない些細な箇所にすぎないのですが、わたしは、胸を打たれました。
うちの亡夫も入れ歯であることを隠していたからです。
夫の場合は部分入れ歯で、なんとなく違和感があったんでしょうね。食事のたびにはずすので「ゲッ」と思っていましたが、そうするのは、わたしの前だけ。
夫が倒れて入院したあと、義母も義理の姉もみんな「え?入れ歯やったん!?」と驚いていました。時々会って食事する程度なら、知らなくても不思議ではありませんが、当時、夫は仕事の兼ね合いもあり、月に一度は実家に戻っていたのです。
それでも、母親に入れ歯を洗う様子を見せず、洗面所に置くこともせず、ましてや食事のあとにとりはずすこともしなかった。
隠していたんだと思います。
隆明さんは、もっと徹底していました。総入れ歯ということもあったのかもしれませんが、総入れ歯であればこそ、治療も大変だったでしょうに、隠し通していた。
本を読めばわかりますが、隆明さんはいわゆる「見栄っ張り」ではありません。うちの夫は見栄っ張りの部分もあったけど、あけっぴろげなところもありました。偉人と並べて語るのは恐縮ですが、二人とも「気取り屋」でなかったのは間違いありません。
でも、隠した。
わたしは、そこに人の繊細さを見てグッとなったのです。老いゆく男性の秘かな、しかし大事な見栄。
わたしたちには、切なくて、柔らかくて、人から見ればどうでもいいような「秘所」があるのです。
それがどこかは外からはわかりません。だから、どこに触れるときも、少しだけ用心深くしていたいと思いました。話題であれ、実際に手で触れるときであれ。
わたしもそう。みなさん、お手柔らかにね。
オバフォーは今週もコツコツと更新します。時間のあるときに遊びに来てください。待ってます。













































































