離婚するか。三千万円を守るか。「貯蓄」という人生をかけた趣味の功罪。
何週間か前のバラエティ番組のことです。その回は、確か「妻のへそくり」がテーマで、ある評論家が「離婚のために3千万円をへそくりした女性が、離婚したら共有財産として夫と分ける必要があると知り、結局、離婚しなかった」という事例を紹介していました。「えええーーー!」と、その額の大きさと「離婚しなかった」という事実に驚きの声が上がったと思います。わたしも、なんともいえない感覚が残りました。
でも、この人の気持ち、わからないわけでもないんです。きっと最初は、離婚を目的に始めた「貯蓄」だったのでしょう。それが、いつの間にか、人生をかけた「作品」になっていく。時を重ねるにつれ、少しずつ大きくなっていく通帳の数字。もう、一円たりとも、この数字を減らしたくない。そうやって何十年もの間、使われることのなかった貯蓄は、もう究極に「観念的なアート作品」。あらゆる可能性を秘めた(その可能性は、使われないことによってのみ担保可能)、自分だけの倒錯したコンセプチュアルアートです。人生まるごととひきかえに手に入れた「8ケタの数字」からなる作品!
「離婚」のときにさえ実際の用途に用いられなかったのですから、次は、「病気など万が一のために」という名目でまた増えつづけるでしょう。しかし、その機にさえも使われることなく手つかずで残されるかもしれません。3千万円をへそくりできる家庭なんですから、それなりに余裕もあるでしょうしね。
貯蓄は、「お金のかかる趣味」です。
それが数十万であれ、数百万であれ原理は同じこと。
一見、「節約」という、お金を使うこととは真逆の行為によって成り立つため
浪費の自覚症状がありませんが、
「別の何か」を得るためには「使わず」、「貯蓄」に「使う」ことをよしとしている。
本当にそれでいいのか。その問いを忘れないようにしたいと思います。
わたしたちは、住宅ローンだ、教育費だ、老後不安だ・・・とやむにやまれぬ理由があって節約に努めざるを得ないのですが、この「節約」もまた目的を失ったとき「貯蓄」という「お金のかかる趣味」になってしまうリスクをはらんでいます。
人生は短いんですよね。本当に短い。
今回の都知事選に出馬した高齢の男性たちを見て「いつまでも現役を名乗るのは自由だが、やはり名乗ってよい領域と、名乗っちゃいけない領域がある。負っていい責任と負っちゃいけない責任がある」と思いました。その年齢でなければできないこと、その年齢を超えると難しくなることがたくさんある。ああ、そのためにお金を使わなくちゃ。
何にお金をかけるのか。そのお金を、どんな時間にかけるのか。
体力のあるうちに、どんな体験をしたいのか。
節約にお金をつかうことは、目的意識がなくてもできるから安易といえば安易。
それなのに麻薬的で、人をがんじがらめにする。
いつも「節約しないとなあ」と思うだけ思うものの、冒頭の女性のような不屈の精神がないため、
貯金も増えず、欲しいものも買わないという
「慢性節約症候群」(別名:貧乏性)に陥っているわたし。
今回の記事は、自省をこめて書きました。お金の使い方って生き方そのものですよね。
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nao
すごく悩ましいテーマでした。
親戚で、人生の余分なものをすべてそぎ落とし貯蓄したような見事な生き様の方がいて
ここ2,3年ずいぶんと考えさせられました。
お金には変なパワーがあって上手に使うのは難しい。
ていうか上手に使おうとすると難しいので
入った分はとにかく楽しく出してしまうようなことを
習慣にしたほうがよいのかなとすら思います。
青緑
カリーナさま、貯蓄って「莫大なお金のかかるコンセプチュアルアート」制作なんですね。なんて、カッコ良い言い回しなんでしょう。「節約、貯金」はやめます。アート制作に切り替えれば莫大に貯まっていくのですね(笑)「功罪」と言われるほどアート制作に打ち込みたい!アート制作中と思えば「無駄使い」も減るかしら…でも、服、化粧品、ああ~おやつとさよならは辛いな~。「不屈な精神」も難しそうだな~。莫大な貯蓄よりも、日々の小さい楽しみのほうがやっぱり好き(笑)
あ き ら
わーー! ワタシにとって凄くタイムリーなテーマでした、お金。そうか、溜める方向性への欲望の発動というものもあるんだ! 貯蓄という浪費(新鮮)! 倒錯したコンセプチュアルアート(心地よい語感)!
テレビで女子行員の横領事件のドラマを見て、原作も読んだのですが、お金のパワーについて考えさせられている最中だからです。その中に節約に取りつかれている人物も登場していますが自分とは無縁なので意識していませんでした。個人的には消費方向への危険な欲望はいつも自覚していますし、そのうえ教育費が頂点を極める期間に入っています(生活はつつましくとも、同時に自分で選択した人生最大の贅沢期間でもあります)。リアルには通帳にマイナスがついても驚かない日常を、何とかしなくちゃなのです。
使うにしろ溜めるにしろ、お金って欲望の代替え品としてあまりにも便利。囚われないで暮らすにはかなりのセンスや知恵が必要そうです。
ジャスミン
お金って はさみと同じ「道具」なんですよねぇ
便利に使うこともあれば、大怪我することも…
親が莫大な土地を残した知り合いが、色々あって
無収入になり、土地を手放せばいいのに
「ご先祖様に申し訳ない…」と最終的に自死しました
お金は上手に使いたいものです
適度に貯めて、適度に使う♪
ちなみに離婚経験者の私としては
1,500万円貰って離婚して、投資にまわして
不労所得を得るけどなぁ~
そして、もっと素敵な男性を見つけるわぁ