第2回 「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」
◆今回の映画 (作品名は公式サイトにリンクしています)
「どうする? Over40」読者のみなさま、こんにちは。
イラストレーターの小関祥子です。
先日、第一回目の公開を終えたこちらの連載「最近、映画見た?」、
ありがたいことに思った以上に反応をいただいています。
中には、紹介した3本のうち2本をはしごして見てくださった方も。
(しかも、楽しんでくださったようで、その方の手をとって
「ね! ね! 面白かったでしょ!!」と言いたいくらいうれしい!)
カリーナ編集長の紹介文内では「だいたい月イチくらいの更新」とありましたが、
そういうわけにもいかない映画が公開されてしまいました……。
それは「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」。
来月の更新まで待っていては、連載のタイトル「最近、映画見た?」が泣くよ!
ということで、イレギュラーではありますが、どうぞお付き合いくださいませ。
◆映画のあらすじ
「幼くして地球から誘拐され、今や宇宙をまたにかけるトレジャーハンターとなったピーター・クイル。
とことん運がないくせに、自らを”スター・ロード”と名乗る男。
そんな彼がある日、巨万の富を夢見て、パワーストーン<オーブ>を盗み出す。
だが、銀河を滅亡させるほどの恐ろしい力を持つオーブを狙う悪党たちから追われる羽目に。
それをきっかけに、危機また危機の冒険と、宇宙存亡を懸けた戦いに巻き込まれていくーー」(公式サイトより)
◆◆◆
アメリカのマーヴェルコミックと呼ばれる漫画を原作とした、
いわゆる「アメコミ映画」「マーヴェル映画」と呼ばれるジャンルに属するこの映画。
普段、映画館にあまり行かない方ほど、テレビで流れる予告を見て
「アライグマとか宇宙人が戦う、ちょっとバカっぽい中身がなさそうな映画だろうね~」
と思っているような気がします…。
そして、それを理由に見に行かないのだとしたらほんとうにもったいないよー!
なのです。
この映画を撮った監督は、ジェームズ・ガン。
長く「トロマ作品」と呼ばれるホラー映画のジャンルで活動してきた、
1970年生まれの44歳です。
とはいえ、ホラー映画にまるで疎い私が彼の作品をはじめて見たのは、
前作「スーパー!」(2010年)公開時のことでした。
「スーパー!」は、冴えない中年男が神の啓示を受け、
手弁当でヒーローとして活動を始める、という映画です。
お腹が出て、髪もちょっと薄くなって、おまけに「神が俺を選んだのだ!」と
自分が信じるヒーロー道を盲目的に突き進む主人公の姿は、
不恰好で、無様で、狂気すら感じさせるものでした。
映画の結末も実にビターで「ああ、そうだよな…。こういうことをしていたら、
こうなるしかないよな……」と悲しく切ない気持ちになりながら
映画館を後にしたのをはっきり覚えています。
でも、不思議なことに、決していやな後味ではなかったのですよね~。
すべてを失い、救いがないように見えるラストシーンでしたが、
どこか明るく、未来へ続いているような印象を受けました。
駄目で、間違えてばかりで、格好悪くて、
大事なものを手の中からぽろぽろ落としてしまう主人公に対して、
監督ジェームズ・ガンの目線はあくまで優しく、
あのラストにはそれがにじみ出ているように思えたのです。
弱者や愚者、敗者に対して優しく、そして甘やかさないというスタンスは、
相手を対等に扱い、敬意を払っているからこそできるんじゃないかなあ。
ダメな人の居場所があるのが落語、というのは故立川談志師匠の言葉ですが、
ジェームズ・ガンに落語を教えたら、
自分の作風やスタンスに近いものを感じてくれるのではないかなあ……。
さて、前置きがかなり長くなってしまいましたが、
そんなジェームズ・ガンがマーヴェル映画の新作を撮ると聞いて以来、
ずうっと公開を楽しみに待っていたのが「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」。
どうです、ちょっと見たくなってきたんじゃありませんか?
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」は、
宇宙を舞台にしたアクションヒーロー映画ではあるけれど、
あのジェームズ・ガンが撮るのだから、きっとそれだけでは終わらない
何か特別なものがあるんじゃないか……とかなり期待を込めて
公開初日に足を運びましたが、私にとってはほんとうに特別で大切な映画になりました。
予告でおなじみの主要キャラクターたち……アライグマや木の形をした宇宙人、
緑色の肌の美女、いかにも強そうなマッチョな見た目の宇宙人、
そして主人公のピーター……は、なりゆきで銀河を救うために戦うことになります。
このあたりはこういう映画のお約束的展開ではありますが、
いざ、戦いが始まっても登場人物たちは心をひとつに頑張ったりはできず、
泥酔して喧嘩したり、隙あらば口説こうとしたり、
見事なくらいバラバラのダメダメっぷりを発揮。
見ているこちらに、こういう映画なんだから、
主人公たちがダメなまま終わるわけがないとわかっていても
「ほんとうに大丈夫かなあ…」と思わせるくらい、欠点だらけで至らない彼ら。
ですが、全員が何かを決定的に失った過去を持っており、今もそれに囚われて生きています。
そして戦いの中、それぞれが囚われてきた過去を取り戻そうともう一度向き合うのです。
彼らが過去をどう取り戻すのか、そしてお互いをどう理解し、受け入れていくのか。
このあたりは「スーパー!」でも見られたジェームズ・ガンの
甘やかさないけれど優しい視点があってこその誠実な描きかただなあ……としみじみ思いました。
いわゆるマーヴェル映画に対し、未見のままあまりよい印象をお持ちでない方ほど
実際にごらんになったら「えっ、こんなお話なの!?」 と驚かれると思います。
ぜひぜひ、映画館で見ていただきたいです。
そうそう、ポイントポイントで使われる音楽(この音楽を聴くためのツールも、
非常に意味のある泣かせるアイテムとして登場します!)も、
なぜそこで流れるのかちゃんと必要に応じて選ばれているあたり、
実に無駄がなく、小憎らしいほど。やるなあ、ジェームズ・ガン。
「♪ウガ・チャカ・ウガ・ウガ~♪」と予告でも流れる軽快なブルー・スウェードの「Hooked On A Feeling」は、
映画を見る前と見た後とでは、まったく聞こえかたが変わってきますし、
ある曲がかかるシーンでは、わたし、嗚咽をこらえることができませんでした。
サントラを買っておいて、映画の後は聞きながら帰るのもおすすめですよ。
というか、二回目(!)を見に行くときは、わたし、ぜったいにそうするんだー!!
小関さんの詳細なプロフィールやお仕事はこちら→kittari-hattari
ぽち
あーびっくりしました。
第一回目の記事を昨日読んだばかりで、「きゃー12月に東京へ行くときは小関さんおすすめの映画を見ようかな♪ それまで連載続きますように」と心の中でお願いしていた矢先に、「げっもう新しい記事!」
不定期なんですね。よかったです~タイミングって大事。旬のものはその時に紹介したほうがいいですものね、でも12月まで是非続けてくださいませ。
楽しみにしています。
Comet
うわああ、めっちゃ見たくなったああああ。
でも今、なかなか映画館に足を運べない状況なので、
小関さんの熱い言葉で
「ちょっと見た気になれる」のが嬉しいです(^ ^)
不定期更新、大歓迎♪
月イチじゃなくて、週イチでも♡
小関祥子 Post author
>ぽちさん
びっくりさせてしまってすみません。「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」について書くつもりは最初なかったのですが、実際に見たら「これを書かずに何を書く!?」とスイッチが入ってしまい、不定期更新となりました…。
12月に東京にいらっしゃるのですね、11月ごろから12月にかけては、楽しみにしている映画がたくさん公開されるので、ぜひぜひこちらでもご紹介して参ります。お楽しみになさってください!
小関祥子 Post author
>Cometさん
わあああああ、「めっちゃ見たくなったああああ!」なんて、最高のおほめの言葉です! ありがとうございます。なかなか映画館にいけない状況、ありますよね…。こちらのコラムで「面白そうだな~」のはじっこだけでも味わっていただけたらうれしいです。
そして、週イチ更新も、やろうと思えばできちゃうあたりが(映画ばっかり見てるから…)我ながらいかがなものかと思いますが、見てぐっときたら更新する!というスタンスでいこうと思います~。
パプリカ
2014年内に滑り込みセーフでみてきましたよ!
すっごく面白かったニャン。
ジェームズ・ガン監督のファンになりました。
これをみて、切に願いましたのが、
『もいちど、学生に戻ってボーイフレンドと映画館でみた~い♡』
ピーヒャラ、ピーヒャラ♪
ピーターが宇宙で踊りだすので
私も踊ってました。♪
入りでハートをわしづかみ。
今、年寄りになりまして、これこそが、青春デート映画と思うのに
実際の青春時代はボーイフレンドと
『去年マリエンバードで』なんかをみていて
アホなパプリカ
青春の蹉跌だすだす。
新年の抱負は
『old ガールがold ボーイを映画に誘う!』
小関さま、牛歩の歩みで追っかけます。
映画のご紹介、ありがとうございます。
小関祥子 Post author
>パプリカさん
コメント、ありがとうございます!(遅くなってすみません)
「学生に戻って、ボーイフレンドと映画館で見たい」はまさに至言ですね。よ~くわかります。
そして、あの映画冒頭の主人公ピーターによるダンス! 何度見てもわくわくします。
デートムービーによさそうなものもそうでないものも、どんどんご紹介して参りますので
よい映画イヤーをお過ごしくださいね!