第12回 「海よりもまだ深く」
ちらっ。
ほんとのほんとに、ごぶさたしております。お元気ですか?
前回の更新後、身辺いろいろありまして、
引っ越したり、結婚したりしておりました。
(結婚にいたる顛末はこちらに。
こちらもいろいろありまして、ジェーン・スーさんのラジオに出ました)
映画が好きな人と結婚したので、あいかわらず週末は新作を映画を見に行っており、
生活ペースもあまり変わっていません。
とはいえ、結婚することで「実家チーム」から自分がなんとな~く独立し、
自分と夫が新しい家族の核となり始めたことは、なんとも不思議な感じがします。
さて、そんな新生活の中、是枝裕和監督の新作「海よりもまだ深く」を見てきました。
あらすじはこちら(映画ドットコムより)。
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15年前に文学賞を一度受賞したものの、その後は売れず、作家として成功する夢を追い続けている中年男性・良多(阿部寛)。現在は生活費のため探偵事務所で働いているが、周囲にも自分にも「小説のための取材」だと言い訳していた。別れた妻・響子(真木よう子)への未練を引きずっている良多は、彼女を「張り込み」して新しい恋人(小澤征悦)がいることを知りショックを受ける。ある日、団地で一人暮らしをしている母・淑子(樹木希林)の家に集まった良多と響子と11歳の息子・真悟は、台風で帰れなくなり、ひと晩を共に過ごすことになる。
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阿部寛さん演じる主人公が、実はすごい力を秘めたヒーローだとか、真木よう子さん演じる元妻が、道ならぬ恋に踏み出すとか、そういうことはいっさいなく、ただただある家族のある数日を丹念に写し取っている。そんな映画です。(爆発とかもないです)
で、これがすっごくすっごくよかったです。日常を淡々と描写しているだけのはずなのに、見ていて退屈になることがないのも不思議。自分にも覚えのある弱さ、ずるさ、家族という近すぎる存在に感じる愛情と面倒くささがある元夫婦と家族の一晩の出来事に見る側をどんどんひきこんでいきます。
うまくいっているように見える家でも、大小の違いこそあれ、何かしら絶対にあるじゃないですか。言わないだけでね。そういう、わりと多くの人の心を何かしら波立たせてしまう「家族」という題材をよく撮ってこられた是枝監督ならではのうまさが炸裂していました。誰に共感した、というよりも、私は出てくる人たち全員の中にちょっとずつ自分のかけらを見出したような感じがしました。
樹木希林さん演じる主人公の母が暮らす団地の部屋の描写もよかったです。冷蔵庫の中に、結構前に冷凍したカレーが入っていたりとか、ラップにくるんだご飯が1膳分ずつ入っていたりとかね。あと、映画を見た人にはわかる、あの手作りアイス(とその容器)、「うわ~、なんてこのお母さんっぽい手作りアイスなんだ、誰がこんなこと思いついたんだろう?」とエンドクレジットを見たら料理は飯島奈美さん(かもめ食堂など、昨今の邦画で料理スタイリングの担当をしている方)でした。納得すぎるこの人選。前述の手作りアイスもそうなのですが、それぞれの登場人物の台詞、衣装、持ち物、他者に対する態度などで、履歴書が書けるんじゃないかなと思うくらいの実在感もすごかったです。
(あらすじには出てこないですが、阿部さん演じる主人公をなぜか慕う後輩・池松壮亮さんもすごくよかった。あのふたりのサイドストーリーとかいくらでも思いつける…)
いいシーン、いい台詞はたくさんあったのですが、見ていていちばんすごいなあと思ったのは、真木よう子さん演じる元妻が、今おつきあいしているお相手から元夫のことを言及されているときに見せる表情の複雑さです。今目の前にいる好意を持っている相手におおむね同意ではあるが、でもなんかちょっと失礼じゃない? いや、でも間違ってはいない…けどちょっと傷つくんだけど、そういうこと言われると……いやいや、このことで私が傷つくとかおかしいから!
でもなあ……と、映画を見ていない方からしたら何がなにやらだと思いますが、うまく取り繕っているようで、取り繕えていない、表情筋の下の感情の綻びが、ぽろっと見え隠れしているのですよ。真木よう子さんて、あまり器用な演技をする方だとは思っていなかったのでこの繊細なお芝居にはびっくりしました。これは是枝監督の演出力のなせる業なのかもしれませんが、ほんとにすごかった。これだけでも映画館にいく価値おおありです。
子どもの頃、父が日本文学全集みたいなのを毎月買ってくれていたことがあって、その中には、日々の出来事を淡々と記録しているような小説もあって本を読むといえば、血沸き肉躍る物語に興奮することとイコールだった子どものわたしには、その面白さがよくわからなかったのですが今にして思えば、そういうものを書くことってめちゃくちゃ難しいんですよね…
是枝監督の映画を見ると、いつもそのことを思い出します。
パプリカ
祥子さま
ご結婚おめでとうございます。
なんか嬉しいです。
オバフォー読者ゆえ!
祥子さまのご紹介で
毛皮のヴィーナスを観たので
すっごく宝です。
TVで
海街ダイアリーみて、
最後の4人姉妹の横顔カットが
ウディアレン映画
インテリアのオマージュかなと
思いました。
海よりも深く 、
も観ますね。
祥子さま
ご結婚おめでとうございます。
素敵なお知らせでした
okosama
ご結婚おめでとうございます!
ラジオの書き起こしを拝読しました。
ジェーン・スーさんも、たいそう喜んでいらして(^.^)
趣味が同じパートナーって、いいですね!
アクションを起こすって、大切ですねぇ。
海よりもまだ深く。見てみます。
はしーば
小関さん、お帰りなさい。
そして、ご結婚おめでとうございます🍾
またこちらで、新たな小関さんが紹介して下さる、新たな映画の側面が垣間見られるようで、楽しみ倍増です。
じじょうくみこ
小関さま
ご結婚おめでとうございます!
いやーージェーン・スーさんとの対談、何度も机をバンバン叩きました!
名言多すぎて鼻血出そうでした(笑)
そして復帰、おかえりなさいませ!
小関さん、いつかえってくるのかなーと思っていたので、Wの嬉しいお知らせ♪
わたしの場合は生活が激変してしまったので、
映画も芝居もほとんど見られなくなってしまいましたが
是枝監督の新作、真木よう子に注目とは意外でした。
そうか、そんなに面白いのか・・・・
今度内地へ出た時に上映していたら、見てみます!
小関祥子 Post author
>パプリカさま
お祝いのお言葉ありがとうございます。
毛皮のヴィーナス、お気に召していただけてよかったです!
一緒に見た夫は、非常に座りの悪そうな顔をしていましたが、
私はやっぱりおもしろいなー好きだなーと思う一本です。
ウディ・アレンの「インテリア」は見ていないのですが、
家族の物語なのですね。だとしたら、オマージュなのかもしれませんね。
海よりもまだ深く、ぜひぜひ。
小関祥子 Post author
>okosamaさま
お祝いのお言葉ありがとうございます。
行動を起こす、何もかもそれに尽きるな~と思いました。
趣味が同じだと、とりあえず休みの日に何をしたらいいか
迷わないで済むので楽ですね~。
小関祥子 Post author
>はしーばさま
お祝いのお言葉ありがとうございます。
結婚しても何も変わらないような気がしていましたが、
家族や子供について考えることが変わってきたような気がします。
映画を見ていても、そのあたりが眼についたり…面白いですね。
また、ぼちぼちこちらで映画の話ができたらと思います。
よろしくお願いいたします。
小関祥子 Post author
>じじょくみさま
お祝いのお言葉ありがとうございます。
じじょうさんのご結婚を「うわ~、楽しそう! でも準備めちゃ大変そう~」と思っていたら
自分も同じ道を歩むことになりました。
ジェーン・スーさんとのやり取りは、ほんとうに面白かったです。
自分のもやもやを言語化してもらえるって、ありがたいですね。
内地にいらしたときは、ぜひぜひ映画ご覧になってください~。
(私も、夫が転勤族なので、いつまで東京暮らしかわからなくなりましたが
まあどこへいっても面白く過ごせたらと思います~)