島暮らしってサバイバル。だって、ハブとマングースのはざま。
みなさま、こんにちは。あわただしい師走の週末いかがおすごしでしょうか。クリスマス輝く街でウキウキ? 歳末セールにワクワク? それとも、冬の旅への準備でソワソワでございましょうか。
かくいうわたしは終わらない仕事と家族の悩みで、なんだかヨボヨボしております。先月から新しいバイトを始めまして、日々はたいへん充実しているのでありますが、バイトかけもち+フリー仕事で時間のやりくりが一気に難易度アップ。おまけに内地で入院生活を送るザビパパに続いて、じじょくみ母が体調不安に見舞われ急きょ里帰りしてまいりました。なんだかんだいっても、親の健康あっての自分。今すぐどうのということではありませんが、やっぱりしょんぼりしちゃいますねえ(´・_・`)
そんな悲喜こもごもの日々を駆け抜けているじじょうくみこが、今週もお送りいたします。しばしおつきあいくださいませm(_ _)m
そんな日々には大根のあら煮がしみいります
さて。
シマ島をこよなく愛する起業家ヤギさんに「どうしたら島にとけこめますか」と聞きに行ったところ、「焼きそば焼け焼けそばを焼け」と呪文のように言われたお話を前回ご紹介いたしました。まあ結局は田舎でうまくやっていくのに近道はないですよってことなのでしょうが、それにしてもヤギさんに言われて気になっていたことがひとつあったのです。
それは、ヤギさんに「シマ島ではどんなひとと親しいですか」と問われたときのことでした。迷わずわたしは、ふたりの名前を挙げました。ひとりは、ミナミさん。島でオシャレカフェバーを経営している、凄腕の料理人にして現役バリバリのサーファーであります。そしてもうひとりは、リョウコさん。某ファッション雑誌の元モデルで、プロサーファーの妻というなんとも華やかな経歴の持ち主です。
このふたりはどちらもザビ男の同級生の奥さんで、結婚パーティに参列してもらった数少ない島民でありました。ふたりとも結婚を機にシマ島に来た移住者のセンパイということもあり、わたしがシマ島に引っ越した直後から何かと気にかけてくれるありがたい存在。誰が味方で誰が要注意なのか探り探りでひとづきあいをしていた当時のわたしにとって、このふたり以外に知り合いらしい知り合いはいなかったのです。
ただ、このふたり、いいひとです、いいひとではあるんですが…
クセがすごいんじゃあ~
ふたりとも、そろって美人。年齢はわたしの少し上。オッケーバブリーなうまい汁をさんざん吸い尽くした、バブルの申し子みたいな姉様方です。こういうタイプは、とにかくポジティブ、パワフル、アグレッシブ。そしてたいがい自分のことを「アタシ」と呼び、相手を気にかけている風に見せかけて基本はアタシの話しかしません(しかも話がぜんぜん終わらない)。
引っ越し当初は知り合いがいなくて心細かったこともありますし、島内で顔が広いふたりを頼りに島にとけこめないかと目論んだ日もあったのですが、すぐに「こりゃヤバイ」と察知。それとなく距離を置き、あえて心細い道を選ぶことにしたという経緯があったのですが…。
「そうですね、ミナミさんは姉御肌で面倒見がいいのですが、仲のいい人と深くつきあいたいタイプですね。リョウコさんは、華やかな場所が大好きですね。ふたりとも派閥を作ってひとを囲いこみたがるので、くみさんがほしい人脈ではないかもしれませんね」
ヤギさんには何もかもお見通しなのでした。
しかも困ったことにこのふたり、
仲が悪いんじゃあ~
うちの結婚パーティでシマ島からの参列者はわずかだったのですが、「一緒のテーブルは絶対イヤ」というリクエストを受けて、ミナミさんとリョウコさんの席をわざわざ離したという経緯も…。そして後々わかったのですが、わたしがシマ島になかなかなじめなかったのは、わたしがふたりの派閥の一員だと思われていたからだと判明。つまり簡単に言えばわたしはシマ島に来た時点で
ハブとマングースにはさまれてた
というなかなかハードな立場だったわけですね。どうりで知り合いできなくておかしいと思ったんだよう、他の移住者さんたちはすんなり島にとけこめてたんだよう~~!
とはいえ、それがわかったからといって関係が断てるわけではありません。この島で同級生のつながりは、一生つづく絶対無二の関係。こちらがどんなに細心の注意をはらって距離を置こうとしても、イヤでも合間見える機会はむこうからやってくるのでありました。
なんだろう寒い助けて
ミナミさんとリョウコさん、どちらとも仲良くせずに親しくする、という激ムズコミュニケーションのコツがつかめてきたころ、ザビ男の同級生のお母さんがとつぜん亡くなりました。葬儀屋がいないシマ島では、誰かが亡くなると親類縁者と隣組が総出で葬儀を手伝います。しかも仮通夜から通夜、火葬、葬儀、初七日、四十九日まで、儀式がとにかく多くて長い! なかでも用事が多いのが同級生で、寝ずの番やら葬儀のセッティングやら、数日間にわたって働きつづけるのです。
もちろん、同級生のヨメもしかり。ザビ男の同級生はもともと人数が少ないため、ヨメはがっつり借り出されます。結果としてわたしはミナミさんとリョウコさんご両人といっしょに、数日間を過ごすことになったのでありました。
こういうとき、リョウコさんは決まってミナミさんに話しかけません。他のひとには親しげに話すのに、まるでミナミさんはいないかのように無視を決めこみます。そして決まって彼女はわざとらしくわたしに話しかけ、「あのとき食べた料理、おいしかったよね!」と、まるで彼女とわたしが親密な関係のようにアピールを始めるのです。
そんなリョウコさんを見て、ミナミさんが苦々しい表情になるのもいつものことでした。そして通りすがりに「リョウコ、今日も無視なんですけど。なにげに傷つくんですけど。あいつ、くみちゃんをアタシに取られたと思ってるかもなんですけど」と耳元で吐き捨てていくのです。
あーーめんどくせえ!
てめえらの仲とかクッソどうでもいい!
と言えたなら楽なのに、愚痴るどころかその日はそれだけで終わりませんでした。すべての用事をこなした夜11時、気づくとザビ男の姿がなくなっていて、しかたなく歩いて帰ろうとしていると後ろからリョウコさんの車が近づいてきました。
「くみちゃん、歩きなの? 乗っていきなよ!」
「いや、すぐそこなんで大丈夫ですよー」
「いいよいいよ、どうせ通り道なんだし、いいから乗っていきなって」
助手席のドアを開けられ、やむなく車に乗りこみました。
失敗でした。
乗りこんだ途端にリョウコさんの携帯が鳴りました。
「くみちゃん、同級生のみんながミナミちゃんちで飲み直してるんだって。行こうよ♪」
悪寒しかしません。
葬式でさんざん飲んだ後に飲み直すってなんなんだ。バブル世代ってなんであんな元気なんだ。てか、なんでよりによってミナミさんちなんだ!
「今日は朝から仕事してからの葬儀だったので、もうクタクタなんですよ。明日も早いし、本気で疲れてるんで帰らせてください」
「うんわかった、アタシも帰るから挨拶だけしていこうよ!」
懇願するわたしをよそに、リョウコの車は我が家を通り越してミナミ家へ向かいました。しぶしぶ車を降り、ミナミ家に入ると、そこにはミナミさん夫婦とリョウコさんのダンナ、そしてザビ男しかいませんでした。ちょっと、他のひとはどこへ行った!
「遅れてごめーん、ミナミちゃん、呼んでくれてありがとうね~( ^∀^)」
リョウコ! リョウコ! なんでイスに座った! なんで飲み始めた!!
ザビ男に必死のアイコンタクトを試みましたが、わたしの気持ちを知ってか知らずか、目をあわせようとしないザビ男。こうなってしまっては、もう逃げ場はありません。「くみちゃん座って座ってハイどうぞ~」とミナミさんに生ビールを渡され(しかもうまそう)、観念してイスに座りました。
リ「ミナミちゃん、これおいしい! やっぱり料理上手よねえ~♪ お店の料理もどれもおいしいもん」
ミ「ありがとう~♪ 」
リ「このぬかづけもミナミちゃん? めちゃおいしい!」
ミ「ありがとう~♪でもそれはうちのバアちゃんが作ったやつなの~♪」
リ「バアちゃんも料理上手だもんね! このモツ煮もおいしい♪ このモツって何回ゆでこぼしたの?」
ミ「うーん、3回かな?」
リ「あ、モツは4回はゆでこぼしたほうがおいしいよ♪」
ミ「………」
リ「もうすぐ1丁目の祭りだよね。ミナミちゃん今年は参加するの?」
ミ「ちょっと腰の調子が悪いからやめようかなーと思ってる」
リ「そっかー♩」
ミ「そうなのー♩」
リ「そっかー♩」
ミ「リョウちゃんはどうなの? 6丁目の祭りが先だよね♩」
リ「うんアタシは出るつもりー♩」
ミ「そっかー♩ 練習大変だから痩せちゃうねー♩」
リ「そうだといいなー♩」
ミ「がんばってー♩」
リ「ミナミちゃんも出ないと盛り上がらないんじゃないのー?」
ミ「ううん、そうでもないよー。そうそう、あの祭りってもともと1丁目が始まりなんだってね♩」
リ「違うよ、6丁目だよ♪」
ミ「え、でも長老が1丁目だって言っ…」
リ「違うの違うの、ほんとは6丁目なの、リョウコ知ってる♪」
ミ「…………」
い、
い、
生きた心地がしない……
ハブとマングースの壮絶デスマッチによってシャレオツなダイニングが地獄の様相を呈しているというのに、ダンナ衆はといえば楽しそうに飲んだくれてハッピーこの上なく殺意マックス。ついに耐えきれなくなり「朝早いので、わたしはこれで!」とひとり退散いたしました。
こんな夜をいったいあと何回くり返せばいいのか、考えただけで吐きそうです。離島ライフって、まじサバイバル。とりあえずザビ男よ頼むからこんな戦場でわたしをひとりにしてくれるなと、ダンナの長寿を心から願うじじょうくみこでありました…。
それではみなさま、また来週。それまで崖のところでお待ちしています。
ext by じじょうくみこ
illustrated by カピバラ舎
*「崖のところで待ってます。」セカンドシーズンは12月末までの毎週日曜更新です。
バックナンバーはこちら→★
2ndシーズンはこちら↓
2-1 ハーフセンチュリーは嵐の季節。
2-3 恋わずらいみたいになって、あのひとにメールを書いた。
はしーば
リョウコとミナミ、どちらがハブでどちらがマングースか?
大丈夫ですか?クミコさんっΣ(゚д゚lll)
怒涛の展開はそう来たか。
リョウコとミナミのハザマで苦悶するマダムクミコをまざまざと思い浮かべて私の胸もキューっとなりました。
負けないでー!
じじょうくみこ Post author
>>はしーばさま
こんにちは!コメントありがとうございます(^ ^)
どちらもハブでありマングースである。
入口であって出口である。
ああ人生って厳しい(笑)