ああオッチャン百景、鹿児島はやっぱりアツかった(いろんな意味で)。
突然ですが、鹿児島に行ってまいりました。
ぶらり旅が大好物のわたくしではありますが、今回ばかりは完全無欠のノープラン。というのも、たまたまLCC(格安航空会社)で格安チケットが入手できたからであります。どれだけ安いかというとですね、
東京-鹿児島 片道3,000yen
飲み会なら居酒屋1回分。豪華ランチコースでも1回分。クイックマッサージなら30分。ルクルーゼなら小さいラムカン・ダムール1つ分。ビジネスホテルなら1泊分。激安パソコンなら1台分。エルメスなら買えません。
よく考えたら3,000円でいろいろできるのねと今さら気づきましたが、とにかくLCCってメルマガ会員に登録しておくとセール情報が届くんですよ。時には国内路線で片道990円なんてドエラいのをやっていたりしますが、東京で暮らす身にとって往復6,000円で鹿児島に行けるなんて革命以外の何ものでもありません。
でもこの手のチケットってどうせ予約殺到するんでしょ? 取りづらい便限定なんでしょ? と思いつつダメ元で申し込んだら、あっさり取れちゃいました。週末便。というわけで週末を利用して鹿児島へ出かけることにしたのです。
桐谷美玲がイメージキャラクターに就任した今春は
301円セールなんてのもやってました
鹿児島といえば、ひとつ思い出があります。
まだ若かりし頃、老舗新聞社のお堅い雑誌で鰹節を取り上げることになり、鹿児島は枕崎に取材に行ったことがありました。取材班は女性編集者、男性カメラマン、そしてライターのわたし。天日干しで昔ながらの鰹節を作っている老舗メーカーにうかがい、製造行程の撮影や職人さんのインタビューを行う手はずになっておりました。
駅前に迎えに来てくれた社員さんの驚いた顔を、今も忘れることができません。工房に行っても、社長さんと会っても、私たちを見るなり皆一様に同じ顔をしました。「キョトン、を絵に描いたらこうなるよね」って顔でした。いぶかしく思いながらも工房で取材を続けていると、なぜか現場に地元銀行の方やら商工会議所の方やらが顔を出してきて編集者に挨拶していきます。過去の経験から、地域によってはマスコミというだけでVIP扱いされる場合があることは承知しておりましたが、それにしても随分なセレブ待遇でありました。
取材とは無関係のところでクタクタになったので、夜は3人でゆっくりしようと話していたら、「お食事をご用意しておりますので6時にホテルロビーにおいでください!」と社長。あまりの気迫に断れる雰囲気もなく、おとなしく車に乗ってみると、宴会場には社員や職人はもちろん昼間挨拶した銀行マンやら商工会の方やらのオッチャン連中がズラリ勢揃いしておりました。
卓上には一升瓶の芋焼酎ドーン
ところが宴が始まっても、皆さん何やらモジモジしています。奇妙に思って聞いてみると、
「オナゴに酒はすすめられませんばい!」(と鹿児島弁で言ったと思う)
どうやら彼らは「東京の有名な新聞社様からわざわざ取材が来る! それなら男同士とことん盛り上がるしかないでしょう!」ということで、てっきり男性が来るものだと思いこんでいたのでした。
わたしも西の人間なので、オッチャンの戸惑いがなんとなくわかります。うちの地元では、宴会で飲み食いするのは男。料理をふるまって男の世話をするのは女。女性陣が宴席で酒を飲むなんてありえませんでした。男は酒を酌み交わしてナンボ。枕崎のオッチャンたちも、そういう宴会をイメージしていたのではないかと推測されました。
ところが、ふたを開けてみると取材陣の3人中2人が女子。おまけに現場を仕切っている編集者はクールビューティ系の美女(もちろんわたしではない)だもんだから、どう接したらいいのかオッチャンたち大混乱。
けれど「鹿児島といったら焼酎!楽しみ楽しみー♪♪」と誰よりも喜んでいたのは、美女編集者とわたしの女子陣だったのでした。秘蔵の芋焼酎を目の前に出されて「飲む!じゃんじゃん飲みますよっ!」と2人で酒好き好きアピールをしたのですが、オッチャンたちは「いやいや…」と尻込みするばかり。だったら宴会しなきゃいいのにと思うのですが、接待しないと体裁が悪いというのだからややこしい。
結局はカメラマン氏が「わかりました、僕が3人分引き受けますから骨は拾ってください」と男気を見せて全員の返杯を受けまくり、翌日ゲロたらしながら撮影するという惨劇がくり広げられたのでありました。そして、ここではとてもお話できない乱痴気騒ぎを経て、わたしの中の鹿児島は「酒うまい・醤油甘い・男めんどくさい」(失礼)というイメージになったのでありました。
それ以来の鹿児島、しかも初めての観光です。もともとうっかりチケットとれちゃった旅なので、先入観なしで行ったほうが面白かろうと、行き先も宿も決めずに現地へ向かいました。
あっさり迷子になりました。
鹿児島市内へ着いたものの、右も左もわからない。とりあえず路面電車の停車場に向かい、電車待ちをしていたオッチャンに「この電車は鹿児島中央駅へ行きますか?」と聞いてみました。オッチャンは「行きますよ」と言いました。
安心して電車に乗ると、お見合い座席の向かいに座ったオッチャンが立ち上がって車掌さんに何やら聞いています。戻ってきたかと思ったら「鹿児島中央に行きますよ大丈夫ですよ」とわたしに言いました。どうやら念を押して聞いてくれたようです。その後も時々立ち上がっては車掌さんのところへ行き、戻ってきては「行けますよ大丈夫ですよ」「もうすぐですよ」と声をかけてくれます。おお、なんという親切。
ところが、電車はどんどん住宅街へとつき進んでいきます。もしや郊外なのでは?という気持ちがよぎりましたが、あれだけ確認してくれたんだしと安心していたら、なぜかオッチャンのほうがソワソワし始めました。オッチャンは立ち上がり、また車掌さんのところへ行きました。そしてクルリと振り返り、わたしを見て
「○○で乗り換えて。この電車は鹿児島中央には行かないです」
あら(笑)
どうやらその電車は「鹿児島中央まで行けますよ(途中で乗り換えれば)」という便だったようです。オッチャンはすまなそうに会釈しながら次の駅で降りていきました。さて、どこで乗り換えればいいのやら。車掌さんに聞いてみるかと腰を浮かせると、今度はオッチャンの隣に座っていた別のオッチャンが立ち上がって
「このあとはわたしが引き継ぎますよ大丈夫ですよ!」
え!
まさかの連係プレーでオッチャンは「あと2駅ですよ」「次の駅ですよ」「車掌さんに言えば乗り換え券をくれますよ」「そろそろドアの前に立っているといいですよ」と若干トゥーマッチたいへん丁寧に案内してくれ、わたしはぶじ鹿児島中央駅までたどり着けたのでありました。
翌日は秋とは思えないほどの暑さになったので、涼しいところでも行くかと霧島へ。観光案内所ですすめられた、えびの高原へ行ってみることにしました。現地に着くと散策コースがいろいろあるとのこと。観光パンフを見ながら迷っていると
「不動池いいですよキレイですよ」
知らないオッチャンが通りすがりに教えてくれました。
なるほど不動池ですね、ということで不動池に向かって歩き始めたのですが、不動池へ行くにはいくつかのコースがあることがわかりました。さて、どっちがいいのだろうかと逡巡していると
「こっちのコースはわりと楽ですよ、あっちのコースは1時間くらい歩きますよキレイですよ、車ならすぐですよ」
またもや知らないオッチャンが通りすがりに教えてくれました。
スムーズに高原ウォークを楽しんだ後、その日はそのまま霧島に泊まることにいたしました。バス停から宿までは徒歩しかないということで、とりあえずお迎えに来ていた別の宿のオッチャンに「○○ホテルはどちらの方角でしょうか」と聞いてみました。
「あそこは歩くとありますよ、よかったらどうぞ」
と宿泊客でもないのに送迎バスで送ってくれた!!
霧島は龍馬が日本で初めてハネムーンに行った場所。
いやあ〜〜〜
全国に親切な人たちはたくさんいますが、鹿児島のオッチャンの親切レベルはすごいな。さすが薩摩隼人は違うわい、なんて思っていたら、送迎バスの中に別のオッチャンがひとり。宿泊客らしいその人は鹿児島の他のエリアから来られた方のようで、ドライバーさんと話しながらゲスな笑いを浮かべて
「昨日の夜は天文館ではしゃいじゃいましてねえ〜〜ゲフフフフフ 😉 」
ああ知っている、わたしは鹿児島のオッチャンの「夜のはしゃぎ方」を知っている。
とりあえず急上昇していたオッチャン株を少し下げておきますね、と思ったじじょうくみこでありました…。
By じじょうくみこ
Illustrated by カピバラ舎
*「崖っぷちほどいい天気」は毎週土曜日更新です。
※10月25日(土)は更新をお休みさせていただきます。すみません!
きゃらめる
どんなはしゃぎ方だろう?さぞかしポテンシャルが上がるお楽しみがあるのだろうな(と、げすな勘ぐり♪)
20年ぐらい前のこの季節に鹿児島を訪れたことがあります。
霧島スカイラインのドライブは文字通り霧の中で、レンタカーのハンドルを握る手に嫌な汗をかきっぱでした。
じじょうくみこ Post author
>>きゃらめるさま
おはようございます! いつもコメントありがとうございます(*^_^*)
霧島、ドライブにはよさそうですよねえ。特に今の季節はススキも見えて。
なのに何も見えなかったんですか。。。それは残念(>_<) 富士山を一望できる観光コースを上京した家族のために計画したはずが 芦ノ湖スカイラインで濃霧に富士山どころか1m先も見えず 震え上がったあの日を思い出しました(笑) わたしはバス移動だったので、霧島あまり周遊できませんでした。 交通の便めっちゃ悪いんだもん(^^;) 余談ですが、霧島とか桜島とか、鹿児島はどうして山に島とつけるんでしょうね。
ぽち
わたし、生まれも育ちも鹿児島なのですが、霧島に行くとなったらなんとなく気合が必要です。
無計画なのに車なしで霧島まで行かれたとは、びっくりしました。行動力が素敵。
そうか、何で山に島がついてるんだろう(笑)。でも桜島だけは、100年くらい前は本当に島だったのですけど、爆発した時の溶岩で今はつながっているんです。
鹿児島のおすすめはいろいろありますが、私はどのお風呂屋さんもホテルの大浴場もすべて温泉っていうところが好きです。大人になって泊まった福岡のホテルの大浴場が温泉ではなくて、ものすごくびっくり&がっかりしました。
おっさんや醤油に懲りずに、また鹿児島にいらしてくださいね。ご一緒できないのが残念です(笑)。
じじょうくみこ Post author
>>ぽちさま
わあ〜鹿児島の方だったのですね!好き勝手書いちゃってすいません(^^;)
温かいコメントをありがとうございましたm(_ _)m
そうか、霧島ってそんな所だったのですね。
なんとなく「鹿児島なら霧島行かないと」みたいな気分があったんですよね。
いつも黒霧島飲んでるからかな(笑)
バスの本数がハンパなく少なくて、しかも全てが丸尾起点だったりするので
霧島神社行っては丸尾に戻り、えびの高原行ってはまた丸尾、と
短期間のうちにすっかり丸尾通になりました(爆)
でも全てが温泉!! そこは楽園ですか??
確かに鹿児島の温泉は本当にすばらしかったです。
温泉の蒸気で蒸した卵や野菜もうまかった♪
ちょうど御岳の時期だったのですが、
ニュースで「鹿児島には火山が11ある」と言っていました。
火山と共に生きる覚悟のようなものを感じました。
鹿児島、いいところですね(*^_^*) (醤油は甘いけどw)