35年ぶりに恩師と出会ったら。
間もなく新しい本が出る。数学の本が出る。数学なんて本当に苦手で、いまでも数学と名の付くものなんて素通りしているのに、数学の本を書いた。もう、なにをトチ狂ったのか、というくらいに自分でも驚いている。
もともと、この本の企画を思いついたのは、3年ほど前のこと。中学時代の恩師と35年ぶりに再会したことがきっかけだった。僕が中学2年生に進級すると同時に、数学の教師と赴任してきたのが川勝健二先生だった。
大学を出てすぐの男の先生というだけで、悪ガキたちは「一緒に遊んでくれる先生かどうか」を知るためのテストを繰り出す。つまり、思いつく限りのいたずらをしかけるわけだ。頭ごなしに叱りつけたり、無視したりすれば、「ああ、この先生は僕たちの仲間じゃなくて、あっち側の人なんだ」という判断が下される。
まだ20代だった川勝先生は僕らのいたずらに、きちんと誠心誠意応えてくれたのだった。例えば、クラスの全員が教室の前ではなく、後ろを向いて座る、といういたずらをしたときのこと。つまり、先生が授業をしようと教室に入ってくると、クラス全員が後ろを向いて座っている。僕たちは背後で先生の気配を感じながらドキドキしている。さすがの僕たちも、一応ビビリながら先生の反応を見ているわけだが、このとき、先生は一言も発せずに、入ってきたまましばらく僕たちの背中を眺め、やがて出て行ってしまった。
やり過ぎたか、と思ったその時だった。なんと、先生は後ろの出入り口から入ってきたと思ったら、そのまま教室の後ろにある小さな連絡用の黒板で授業を始めたのだ。これには参った。この先生は、面白いぞ、と僕たちは勝手に先生を仲間だと思ったのだった。
しかし、いくら先生にシンパシーを感じていても、数学が得意になるわけじゃない。僕は先生にハッパをかけられながらも不発で、数学が苦手なまま、ハッキリ言えば、落ちこぼれたまま卒業し、文系街道まっしぐらでコピーライターになったのだった。
そんな先生が、どこをどううまくやったのか、母校で校長先生になっている、という話が漏れ聞こえてきた。ええ~!あの先生が校長先生!と驚いたのと懐かしいのとで、久しぶりに連絡を取ると、あっと言う間に再会することになったのだった。それが3年前。
何度かお会いしてる内に、「あの頃、数学が嫌いでごめんなさい」と僕が謝り、先生は先生で「いやいや、ちゃんと数学が好きにしてあげられなくてごめんなさい」という話になったのだった。そこで、「それなら、いまから数学を教えてください」ということになり、「全部は無理やで」ということで「ほな、数学の面白さがわかるくらいの簡単な問題を出してくださいよ」と、なんだかオッサン二人が、居酒屋の隅っこで、「これわかる?」「わかりませんわ」とやり取りすること数回。そしたら、これを本にしたら、どうなるだろう、ということになったのだった。
題して「いまからでも楽しい数学。先生と数学嫌いの生徒、35年後の補習授業」。おお、これは面白そうだととんとん拍子に話が進んだのだが、実際に制作過程になると、いきなり難問がいくつも。と、この後の話は来週に続く…。
【宣伝】
ここで、宣伝してもよかですか? すみません。宣伝します。させてください。むっちゃ苦労したんです。この本。赤字です。もう微々たる印税じゃ先生に会いに行った交通費にもまったく足りないのです(笑)。でも、いいんです(泣)。作りたかった本を作れた。なんか、足が出まくってくるからこそ、そんな清々しい気持ちです。
で、でも、だ、だけど、1回や2回くらい増刷してほしい。初版も少ないんだから、増刷くらいして欲しい!そして、交通費くらいなんとかしないと、財務省に怒られる!(笑)
『いまからでも楽しい数学。先生と数学嫌いの生徒、35年後の補習授業』は2月下旬から大手書店で販売開始予定だそうです。丸善、ジュンク堂の通販サイトhontoではすでに予約受付中、Amazonでも予約が始まりました。
これもまた自腹で作ったCMです(笑)。
http://youtu.be/BsyYA3CU8jw
hontoサイト
http://honto.jp/netstore/pd-book_26060812.html
植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在、オフィス★イサナのクリエイティブディレクター、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京神楽坂で暮らしてます。
★これまでの植松さんの記事は、こちらからどうぞ。
きゃらめる
高校時代、試験前で部活が休みになると、職員室で片っ端から手の空いてる先生方を捕まえ補習してもらってました。それでも実力試験で0点を取ったり。苦戦してようやくわかった時の喜びは、最高に清々しいのですが。
そんな私でも、娘が中2までは教えてました。散々苦労したおかげか、どこでつまづいてるかがわかる。でもその先がわからないから、娘を待たせて答を見ながら解き、解けたら教える…
得意までいかなくとも、ある程度スムーズに解けると楽しいだろうなあ。
仕事が見つかって、お給料がもらえるようになるまで、絶版にしないでくださぃね!!
青緑
こんにちは。
今春娘が中3になります。数学は親子とも嫌いです~。でも、一緒にテスト勉強やったりしてます。私は答え見ながら解説なんかしたりします。つくづく思います。数学はセンスと基礎が大事なのねと。
youtube拝見しました。購入する気が湧いてきました。来週の続きを楽しみにしています。
uematsu Post author
青緑さん
もう、ぜひぜひお願いします。
Amazonでの予約も始まりました。
uematsu Post author
きゃらめるさん
絶版はしないと想いますが、おそらくここの手の本は増刷もあまりしないことが多いんですよね(泣)。
できれば、お早めに(笑)
青緑
「数学の解き方」か「植松さんと先生の対談」かどちらにウエートが置かれているのでしょうか。後者だとかなり気楽に読めそうですが。「今からでも楽しい落語」だったらねー(笑)
ami
こんにちは
you tube 拝見しました!
文系のわたし、植松さんと同じように10日で出られると思ったのに対し、
理系のダンナ、8日と答えたのでびっくりでした。
uematsu Post author
青緑さん
落語はいつからでも楽しいですからねえ。
uematsu Post author
amiさん
文系の知り合いはほぼ全員10日と答え、理系の友人はしっかり正解。
数学って、そこだけ見ても面白いんだな、と。
uematsu Post author
出版社がPDFで立ち読みができるページを立ち上げてくれていました。
http://www.mikipress.com/books/pdf/621.pdf
青緑
植松さん、い~感じ!本気感かなり伝わります(失礼だな、私)。絵が多いのも良い。明日はバレンタインデー。関係ないけど、明日amazonに予約するからね~~~。も1回、リケジョめざしますから~。
uematsu Post author
リケジョ、目指してください。
遅すぎることなんてありませんから。