大阪マラソンを走る不思議の国のアリス
大阪マラソンで出会った不思議なランナーについて、もう少し。
39キロ地点を少し過ぎた辺り。僕はもうすっかり歩くように走っていた。もちろん、歩いているわけではない。いや、周囲から見れば歩いているように見えたかもしれない。けれど、僕は走っていた。走っているつもりだった。だから、しんどい。歩いているなら、もっと楽なはず。いくら足が棒のようになっていても、右足を降ろしきる前に、左足を上げ、左足を降ろしきる前に、右足を上げていたつもりだった。
あと、3キロ。あと、3キロ。そう思いながら走る。皇居を1周回るより短いぞ。皇居1周なんて元気な時なら、あっと言う間だぞ。と自分をだましだまし励ましながら走る。
すると、目の前にかなり可愛いスカート姿の女性が立っていたのだ。一瞬、自分の頭がおかしくなったのかと思った。「え、お迎えが来たの?」と思った。
「これはあれか? 映画『オール・ザット・ジャズ』のジェシカ・ラングが迎えに来た、あの場面か」と思うような画面だった。
アリスの格好をした、と言ってもベーヤンとか、チンペイちゃんとか、キンちゃんがいるアリスではない。不思議の国のほうの、青いスカートをはいたアリスが目の前に立っているのだ。しかも、こっちを向いて、一歩二歩と歩いてくる。
しばし見つめていると、ランニングシューズを履いていることがわかり、ランナーの仮装であることがわかるのだが、それでも、そこそこ美人なアリスだったので、僕はしばし見つめていたのだった。
すると、アリスが僕に向かって言う「ねえ、走って」。
「いや、走ってるよ。僕はこれでも走ってるんだよ、アリス!」そう言おうとした。
と、その時、僕の背後からきったない巻き舌の関西弁で「そやから、走ってるやんけ!」と声がする。
振り返ると、顔をしかめたチシャ猫だった。
チシャ猫とアリスの「不思議の国のアリス」チームだったわけだ。
「ねえ、お願い。あと3キロ、一緒に走ってよ!」とアリス。
「うっさい、そやから、あのペースでちょうどええ言うて、走ってきたんやんけ!」とチシャ猫。
「わかったから。私がしょうもないこと言うて悪かったから」とアリス。
「そうじゃ、お前が悪いんじゃ」とチシャ猫。
「ごめんなさい」とアリス。
「こっちは、ちゃんと考えて走っとったんじゃ!」とチシャ猫。
「謝るから。そやから、歩かんと走って」とアリス。
「うっさい。お前がゴチャゴチャ言うから、走る気せえへんなったんじゃ」とチシャ猫。
「謝るから。そやから、最後の3キロは一緒に走ってよ!」と絶叫するアリス。
しばし、立ちすくむチシャ猫。
じっと見つめるアリス。
やがて、チシャ猫は、すねた顔をして「けっ!」と小さく吐いて走り始める。
その後を追うアリス。
アリスとチシャ猫は、次第に走る速度を合わせて、肩を並べてゴールが用意されているインテックスへ。
おお、なんと感動的なアホアホ関西人カップルの猿芝居!
僕は棒のようになった足を引きずりながら、バカップルの猿芝居にちょっと感動してしまい、小さく「頑張れよ」と背中に叫ぶ。そして、自分も頑張らねばと、ゴールへと歩くように走り続けるのだった。
植松さんとデザイナーのヤブウチさんがラインスタンプを作りました。
ネコのマロンとは?→★
「ネコのマロン」販売サイト
https://store.line.me/stickershop/product/1150262/ja
クリエイターズスタンプのところで、検索した方がはやいかも。
そして、こちらが「ネコのマロン、参院選に立つ。」のサイト
http://www.isana-ad.com/maron/pc/
植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在、神楽坂にあるオフィス★イサナのクリエイティブディレクター、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。
★これまでの植松さんの記事は、こちらからどうぞ。
眼鏡A
39キロ辺りと言えば、応援アプリで、ランナーの顔マークが、スマイルから青ざめたヘロヘロに変わった頃ですね。
その後なかなかマークが前進しなくて、ここにきてuematsuさんリタイヤか?と思ったら、目前でそんな寸劇が繰り広げられていたのですか(笑)
そのカップル見たかった!40キロ地点の動画が無かったのが残念です(笑)
uematsu Post author
眼鏡Aさん
ほんとに見て欲しかった。
面白かった。
というよりも、こっちも疲れているので妙にファンタジックに見えました(笑)