銀行が苦手なのである。
銀行が苦手だ。
小さな広告制作会社をやっているので、「貸すのか!貸さねえのか!」というようなこともかつてはあり、それで嫌いになったということもある。しかし、なんというか根本的に銀行のあの雰囲気が苦手なのである。
銀行のあの雰囲気、というところで「そうだ!そうだ!」と賛同してくださった方もいることだろうと思う。いや、いると信じたい。こちとら客なんだ。千円しか残高がなくったって、一応建前としては客じゃねえか。それをなんだ。あちこちに監視カメラなんてつけやがって。最初から犯人扱いされると、こっちは緊張するんだよ。と気弱な僕にそう思わせる、あの雰囲気が苦手なのである。
それでも、昔はATMがあまりなく、普通に窓口で小さな金額を下ろすなんてこともあった。その頃、銀行の窓口はだいたい新人の若い女性行員が配されていて、にこやかに対応してくれていたもんだ。
それがなんだ。最近は、強面の警備員しかいないATMなんかがざらにあって、あちらこちらに監視カメラが据えられている。
いや、わかるよ。そうしなきゃいけない理由はわかる。世の中には悪い奴らがいっぱいいて、ぼんやりしてちゃ駄目なんだ。えらいことになる。それはわかるんだが、やっぱり緊張するんだよ。
ATMでお金を引き出す時に、暗証番号を間違える。「おかしいなあ。この番号のはずなのに」ともう一度押す。やっぱり駄目。「そしたら、あっちの番号だったっけか?」と思うのだが、もうすでに動揺が始まっていて、「もしかしたら、警備員は盗んだカードで現金を引き出そうとしている犯人かもしれん、とこちらをマークしているかも」とか思ってしまう。
もう暗証番号を間違えられない。そう思い、「あ、もしかしたら、手帳に暗証番号をメモしたかもしれん」とカバンをあけようとするのだが、いまここでカバンを開けたら、武器を取り出し、隣でお金を引き出している女性客を襲うんじゃないかと思われる!とまた別の妄想が始まる。
ああ、これ以上ここで挙動不審でいると、警備員が来るかもしれない、とお金も引き出せていないのに、店の外に飛び出したことも一度や二度じゃないのである。
ということで僕は銀行が大の苦手なのである。ただ、ありがたいことに、僕はこの大の苦手な銀行に行く機会は極端に少ない。これが人生の救いである。なぜなら、僕はヨメさんにキャッシュカードを取り上げられているからでる。
あれは三十歳になったばかりのころ。うちのヨメさんは三ヵ月ほど海外に語学留学に出かけたのである。その間、僕はキャッシュカードをメルモちゃんの魔法のキャンディのように使い倒し、知らぬ間に大事にためていた定期預金を空っぽにしてしまうほどに無計画に使い倒したのである。
あきれたヨメは僕からキャッシュカードを取り上げて、現在に至るのである。あれから二十五年ほど、いまも僕はキャッシュカードを基本持っていない。ヨメに「お金ちょうだい」と申告してもらっているである。だから余計に、若い頃の「銀行が苦手」という気持ちが克服できないままなのかもしれない。
それでも、僕は小さな広告制作会社の代表なので、いざというときには銀行に出向かなきゃいけないのである。もちろん、一人ではリスクが高すぎるので、そんなときはヨメさんと一緒に行く。そして、はんこを押すとか、自署が必要な時に署名するとか、最低限の責任だけを果たすのである。
なぜ、こんなことを書いているのか?
それは約一年ぶりに銀行へ行かなくてはならないからだ。磁気不良のカードを再発行してもらうためには、名義人である僕が窓口に行くのが早いのだ、とヨメに言われ仕方なく、明日銀行へ行くのだ。果たして、今晩、僕はちゃんと役目を果たせるのだろうか。そして、今晩、ちゃんと眠れるのだろうか。嗚呼。
植松さんとデザイナーのヤブウチさんがラインスタンプを作りました。
ネコのマロンとは?→★
「ネコのマロン」販売サイト
https://store.line.me/stickershop/product/1150262/ja
クリエイターズスタンプのところで、検索した方がはやいかも。
そして、こちらが「ネコのマロン、参院選に立つ。」のサイト
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在、神楽坂にあるオフィス★イサナのクリエイティブディレクター、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。
★これまでの植松さんの記事は、こちらからどうぞ。
ひろっくま
植松さ〜ん。わかりますよ、わかります。
銀行ドキドキします。
①植松さん同様、キョドってるかもしれないとドキドキする。
(店を飛び出したことはありません笑)
②おじいさんやおばあさんに行員さんが
ATMの使い方を教えているのを見て
並んでいる人たちがイライラしたり
ため息ついたりするのを目の前で見てしまう。
③いつもは窓口に絶対出てこない男性行員さんが
「よっ!社長」っていう風格の人を、ペコペコスリスリしながら
奥の応接室ぽいところに案内しているのを見た自分が
「あそこには縁がない」ってじ〜っと見てしまう。
とまあ、色々頭が疲れますな。
私の友人も、自営で大変な時に金を貸してくれなかったと
某銀行の前を通る時には舌打ちしています。
(信用金庫で借りられて事なきを得る)
メルモちゃん、懐かしいー!
♪メルモちゃん、メルモちゃん、メルモちゃんーが持ってる
あーかいキャンディ、あーおいキャンディ、知ってるーかい♪
っていう歌がすぐに浮かんできました!!
植松さんが今日はよく眠れますように・・・。
uematsu Post author
ひろっくまさん
おお!ここにも同士が!
ほんと、銀行ってところは、
妙に人を緊張させますよね。
とりあえず、無事に用事を終えました。
ちょっとドキドたけど(笑)