ファスナーの仕組みさえ知らない。
ついこの間、読んだ本だったか、雑誌だったかに書いてあった。誰も本当のことなど知らないのだと。世の中を知ろうとする探究心も大事だし、時には開き直ることも大事だけれど、だけど、自分は世の中のことを知らないのだという謙虚な気持ちがもっとも大切だと、その文章は説いていた。
そこに例としてあがっていたのは、「ファスナーの仕組みをきちんと説明出来ますか?」というものだった。ファスナーなんて、生まれた時から使っているので、そりゃわかるだろう。僕はそう思いながらファスナーを思い浮かべた。金属製のちょいと角張った細かな金具が交互に噛み合ったり、開いたりする。とここまでは良いのだが、どうやって、金具をとじて、どうやって開くのかがわからない。自分のなかのファスナーのイメージを拡大してみたりするのだが、拡大しようにも細部をちゃんと覚えていない。
そして、不思議なことに思い出そうとすればするほど、ファスナーが広大な宇宙のように感じられて、知らなかった自分が何者にも劣る存在のような、そんな気持ちになってしまったのだ。
本当だ。僕はファスナーの仕組みさえしらない。そして、ファスナーの仕組みがわからない位だから、世の中の大半の物事を知らないなんてことは、自明なのだろう。
では、翻って僕が確実に知っていることはなんだろう。そう考えてみる。これが、確実と言われるとどれもこれも自信がない。この間まで、本気で「ああ、面白い、虫の声」という歌の歌詞を「青も白い、虫の声」と思っていたくらいだ。他にもたくさん間違って覚えていることがあるだろうし、間違っちゃいないと自信をもっていることほど、きっと間違えているかもという気になってくる。
「ファスナーの仕組みをきちんと説明出来ますか?」という問いかけひとつで、ここまで不安になるなんて、言葉ってすごいなあ、と言う気持ちと、俺って弱いなあという気持ちが交錯して、なんとなくぐったりとしてしまうのである。
植松さんとデザイナーのヤブウチさんがラインスタンプを作りました。
ネコのマロンとは?→★
「ネコのマロン」販売サイト
https://store.line.me/stickershop/product/1150262/ja
クリエイターズスタンプのところで、検索した方がはやいかも。
そして、こちらが「ネコのマロン、参院選に立つ。」のサイト
http://www.isana-ad.com/maron/pc/
植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在は、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師も務める。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。サイト:オフィス★イサナ
★これまでの植松さんの記事は、こちらからどうぞ。