『ラブ&ポップ』庵野秀明監督(新人)
1998年に公開された映画『ラブ&ポップ』はとても面白い。エヴァンゲリオンの監督、庵野秀明が初めて手がけた実写映画で、アニメの監督としてはすでに高い評価を得ていたにも関わらずこの映画のクレジットには「監督:庵野秀明(新人)」と記されている。
バブルが終わっていたとは言え、まだまだ持っている奴は持っている、という時代だった。いまの若者たちのように諦めることなく、女子高生たちは貪欲で援助交際はピーク。実際、池袋界隈では女子高生に声かけるために、おっさんたちが集まっていたし、声かけられてついていく女子高生たちをよく見かけた。
この映画、基本は村上龍の原作に忠実なのだけれど、作風はさすがに庵野秀明。カメラがあちこちに取り付けられ、あらゆる角度から意味不明な目線のカメラが縦横無尽に動き回る。それでも、作品として混乱しないのは、「誰かがお前を必要としているんだ」というメッセージが力強く生きているからだと思う。本当にそうなのか?と問われたら、この作品に登場する人物たちは「本当だ」と力強くは答えられないだろう。それでも、彼らはどこかでそう思おうとしている。
援助交際の相手として登場する手塚とおるは、ずっとツバを吐いている。「会社を辞めても、会社の味がするんだ」と彼はいいながらツバを吐き続ける。
ラブホテルに連れて行く浅野忠信は、泣きながら「こんなことしてちゃダメだろう」とスタンガン片手に説教する。
主人公のヒロミだけが悪いのではなくみんなが少しずつ狂っている。でも、狂っていることが正常なのかもしれない。そんな、優しさが心地よく、気持ち悪く作品を覆っている。
庵野秀明監督(新人)は、そこを狂ったようなカット割と構図で押さえていこうとする。ラスト、女子高生に4人がコンクリートで覆われた渋谷川を延々と歩く。たどたどしい歌声で「あの素晴らしい愛をもう一度」を歌いながら。渋谷の町の誰も見ていない川底にその歌はとてもよく似合う。
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在は、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師も務める。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。サイト:オフィス★イサナ
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