大阪のおばちゃん2人組 VS 今どきのコミュ障気味なおばちゃん
ここしばらく高齢の母のことを考えて、関西の実家にいる時間が長くなった。まあ、そう言っている自分も五十代も後半に入って、新型コロナに感染したらあっと言う間に重症化する可能性があるわけだから油断はできないのだけれど。
さて、そんなわけで、大阪のおばちゃんたちとの遭遇率も多い。で、大阪のおばちゃんと言うと大阪以外の人たちは、気がよくてアメちゃんくれてお節介でよくしゃべる、そんなイメージを持っているはず。というか、実際にそうなんだけれど、最近は新種もたくさんいる。今どきのコミュ障のおばちゃんだって意外に多い。大阪のおばちゃんみんなが気が良いと思わない方がいい。
新年明けて三日目くらいだっただろうか。阪急京都線に乗車した。こういう時期なので人も少なく車両は空いていた。ガラガラではないのだが、ちょっと探せば一人ずつなら座れるよ。でも、二人一緒の人が途中乗車してきたら、一緒には座れないよ、というくらい。そこで事件は起きたのである。
僕は嫁と二人で長い座席の隅っこに座っていた。僕ははじっこで、嫁の向こうには典型的な大阪のおばちゃんの2人組。この2人はもう最初からよく喋るよく喋る。マスクをしていても、もうちょっと静かに喋った方がいいかもよ、というくらいにぎやか。で、向かい側の座席は2人分の優先座席。そこに割とシュッとしたおばちゃんが座ったのである。しかも、大きな荷物を隣の席にドカッと置いて。まあ、それを見てなんとなく、「隣の席は渡さないわよ」的なちょっとイヤなものは感じたのだが……。
そのまま電車は梅田を出て十三を過ぎた。すると、隣の車両からおじいさんがヒョコヒョコ歩いてきて、いかにもお年寄り風。このおじいさんが僕たちの向かい側に座っているシュッとしたおばちゃんに「ここは空いてますか」と荷物のある席を指さして聞いたのである。すると、このシュッとしたおばちゃんが無視をしたのである。おじいさんは聞こえていないのかと、もう一度「ここは空いてますか」と聞く、するとシュッとしたおばちゃんは再び無視したのである。
おじいさんは怒るでもなく、別の席を求めて歩いていき、無事に空いている席を見つけ座ることができた。まあ、なんとなくイヤな気持ちはするけれど、一件落着ではある。しかし、これを一件落着と思えないのが正義感が先走った大阪のおばちゃん2人組である。2人で一言二言話した後、1人が急に立ち上がりシュッとしたほうのおばちゃんにむかって、「ちょっとあなた。おじいちゃんに席を譲らないとあかんでしょ。何を無視してるの」と苦言を呈した。すると、シュッとした方がこれまた無視するのである。すると、シュッとしてないほうはさらにグイッと詰め寄り「ちょっと、なに無視してるの」と声を荒げる。言われたシュッとしたおばちゃんはおもむろにスマホから顔をあげると、「うるさいなあ!」と悪態をついたのである。これには僕もびっくり。言われたおばちゃんもびっくり。
「うるさいってなんやのん」
「うるさいから、うるさい、いうてんねん」
「あんたここは優先座席やで、おじいちゃんに席ゆずらなあなんやん」
「わたしもしんどいねん!」
「荷物はしんどないやろ」
「わたし、若く見えるかもしれんけど、もう60越えてるねん」
「私らかって70越えてますわ!」
「ほんまうるさいなあ!ほら、そこ空いてるがな。そこ譲ったらええねん」
「どこがあいてるの。ここかいな?ここは私の席やがな」
「そんな元気やったら譲ったらええねん」
「あんたの荷物が先や!」
と言い争いに発展してしまったのである。すると、そこへ見かねた車掌さんがやってきて「お静かに願います」と仲裁にはいる。しかし、激高している二組は収まらず互いに意見を述べ合う。車掌も呆れて、「静かにしなさい」とキレ気味で言い残すと立ち去ったのである。
ここでシュッとしたおばちゃんが最後の手段だと思ったのか、「ほんまに調子悪いねん」と言ったかと思うと、急にマスクをはずし、これみよがしに咳をし始めたのである。ゲホッゲホッと何度も何度もやるので、僕と嫁は「これはいかん」と隣の車両に避難。周りの人たちもこのおばちゃんたちから距離を取り始めたのである。
さすがに、こいつはやばいと思ったのか、2人組の大阪のおばちゃんは自分たちの席に座ると、だまってシュッとしたちょっとやばいおばちゃんを眺め始めた。すると、今度はシュッとしたやばいほうのおばちゃんが、自分が優位に立ったと思ったのか、スマホで2人組の写真を撮り始めたのである。撮られたおばちゃん2人組は、負けじと1人がスマホで撮影で反撃開始、もう一人はバッグからiPadを取り出して、これで撮影開始。僕たちは隣の車両の窓から眺めていたのだが、さながら銃撃戦である。
この新年早々の阪急京都線での銃撃戦は、やがて電車が茨木あたりで停まったときにシュッとしたほうが降車したことで唐突に終了した。
ということで、2021年、新年早々、いろいろ呼び寄せる感じの植松ですが。本年もよろしくお願い致します。
植松さんとデザイナーのヤブウチさんがラインスタンプを作りました。
ネコのマロンとは?→★
「ネコのマロン」販売サイト
https://store.line.me/stickershop/product/1150262/ja
クリエイターズスタンプのところで、検索した方がはやいかも。
植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在は、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師も務める。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。
★これまでの植松さんの記事は、こちらからどうぞ。
Jane
スマホで撮影が今風ですね。私もうちの反抗期の娘に四六時中撮影され、馬鹿にされ、大笑いされています。気に障りますが、自分も演技して発散しちゃったりして。
なんかみんな疲れていて、抑えているものが、自分の思う正義という名のもとに爆発するのでしょうか。ここ1週間のうちに、ものすごい勢いで車のクラクション鳴らされること2回、その上只ならぬ形相で睨みつけられたり、車を横につけられ怒鳴られたり。ちょっと私がどんくさかっただけで、普通こんなにされるようなことじゃないのですが。心に余裕がなくなっているんですね。でまあ、逃げるが勝ちですかね。
友人とのコミュニケ―ションでですら、「この人こんなにこだわる人だっけ?」と常ならぬ反応に驚いたりします。私もそう思われているかもしれません。「まあいいじゃない」と以前なら思えたことが思えなくなり、妙に絡みたい気持ちになっているみたいです。
こういう時は誰かと話したくなるものですが、意外なことが相手の気に障るかもしれないので、当分無難な話しかせず距離をとるほうがいいかな、と最近思っています。
uematsu Post author
Janeさん
ギスギスしたコミュケーションを目の当たりにする機会は確かに多いですね。
で、そう言うのに巻き込まれないように気をつけて生きるのも、なんだかしんどいし。