ヨーダって、怖いことを言う。
『スター・ウォーズ』を見ていたら、ヨーダが出てきてこんなことを言う。「恐れはダーク・サイドに通じる道じゃ。恐れは怒りを呼ぶ。怒りは憎しみを呼ぶ。憎しみは苦しみを呼ぶ。そなたの中には恐れがある」と。若い頃にも映画の中で、この言葉を聞いたはずなんだけれど、今回はものすごくまっすぐに入ってきた。ヨーダって、ほんと怖いことを言うなあ。
僕は怖がりである。夜道を一人で歩くのも怖いし、実は仕事をするのも怖い。初めてのアルバイトで接客業をした日の夜は、明日からもこの仕事が続くのかと泣きそうになった。だって、客が何を言い出すのかわからないと言うだけで、一日中緊張していたから。
もうすぐ50代も終わりに差し掛かっているというのに、僕は怖がりで、怖がり故に、夜道を後ろから走ってくる高校生の自転車に「スピード出しすぎだよ!」と心の中で怒り、通り過ぎていく後ろ姿に「転けてしまえ」と声に出さずに悪態をつき、そんなことを思っている自分に「馬鹿みたい」と苦しむ。ああ、まるで、修行を始めたばかりのルーク・スカイウォーカー並みに成長していない。
きっとヨーダが目の前にいたら、杖をついたまま、いまだかつて聞いたことがないくらいに長いため息をつかれ悲しい目で見られることだろう。隣で開ききった顔で眠っているヨメなどは、僕を「気にしすぎ」と笑い、「そうなってから考えればいいのに」と呆れ顔だ。
しかし、気にしすぎと言われても、気になるものは仕方がない。まあ、大人なので気にしていないふりくらいはできるようになったし、若い学生たちと接する時には「小さなことを気にしていてどうする!」と叱咤激励することもあるのだけれど、自分のこととなると年がら年中、怖がり、怒り、憎しんでは自己嫌悪に陥るのである。
よく考えると、僕の好きな映画や小説は、だいたい肝っ玉が小さな主人公がなんとか自分を大きく見せようとする作品が多い。『スター・ウォーズ』のルークもそうだし、『ゴッド・ファーザー』のマイケルもそうだ。小説『流転の海』の熊吾だって、実はそいういうタイプのようだし。
というわけで、これからも自分の好きな作品を見たり読んだりするたびに「怖れるでない」というヨーダの言葉を思い出すことにしよう。
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在は、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師も務める。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。
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