ぴあフィルムフェスティバル、準グランプリ!
ぴあフィルムフェスティバルという映画祭がある。いわゆる学生映画の祭典で、僕たちが若い頃からある老舗映画祭だ。かつては大島渚が審査員長を努めていて、黒沢清、犬童一心、園子温、塚本晋也などの監督を輩出している。
9月の終わりに今年のぴあフィルムフェスティバルが開かれ、その準グランプリに僕のゼミの学生の作品が輝いた。『グッバイ!』と名付けられた作品は、最初は作者である中塚さんの思いだけでスタートしたのだが、その企画を面白いと思った僕は、おそらく彼女の実力以上の期待をかけ、ほんの少し彼女を追い込み、怒らせたり泣かせたりしながら、どうしてもその作品を作らせようとしたのだった。そして、『グッバイ!』という作品は、作者である中塚の思惑を越えて多くの人に愛される作品となり、準グランプリを獲得したのだった。
10月末日まで、配信(たしか200円)されているのでぜひ視聴してほしいのだけれど、同じ期日まで無料で見ることができる「表彰式」の模様もぜひ見てほしい。ここで、『街の上で』などのヒットを飛ばしている今泉力哉監督が中塚に表彰状を渡し、講評してくれているのだが、一言一言に泣きそうになってしまった。さすがに現役で映画を作っているクリエターは、1人の学生が作ったたった30分の小さな作品をちゃんと見てくれていたのだった。そして、それを受けて中塚が「これからも、いい画が撮れるように精進致します」と答える。この言葉を聞いた途端に、僕は号泣してしまったのだった。
「迷ったら、いい画を撮るためにカメラを持って町に出なさい」と話していた日々を思い出してしまった。彼女の作品は、ちょうど去年の今頃撮影を開始した卒業制作だった。息詰まって、クオリティの低いカットを撮ってきたときには、「撮れないならいいけど、撮るならいまから撮りにいけよ」と追い詰めたこともある。泣きながらカメラをつかんで、出て行った彼女の後ろ姿を見送りながら「帰って来なかったらどうしよう」「このまま撮れなくなったらどうしよう」とこちらも心配しながら時間を過ごす。そして、授業の終わるギリギリの時間に帰ってきた中塚は、いままで撮ったことがないくらいのいい画を見せてくれたのだった。
そんなカットがそこかしこに散りばめられている『グッバイ!』の準グランプリ受賞おめでとう!
作品は、こちらから(10月31日まで)
こちらは表彰式。中塚風花さんの受賞シーンは、58分30秒ぐらいから。
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。現在はコピーライターと大阪ビジュアルアーツ専門学校の講師をしています。東京と大阪を行ったり来たりする生活を楽しんでいます。
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